恐喝の手口として、女を盗撮するように持ちかけられて、盗撮した場合の性的姿態撮影罪の成否

恐喝の手口として、女を盗撮するように持ちかけられて、盗撮した場合の性的姿態撮影罪の成否
 この事件の撮影者は記載されないと思いますが、法文上は、「ひそかに」というのが、児童ポルノ製造(7条5項)と同様に、、「撮影対象者に対象性的姿態等を撮影することを知られないような態様で、」という意味だとすると、隠しカメラを設置して作動させると、女性の承諾があっても、「ひそかに」ということになります。
 ちなみに。軽犯罪法上の「ひそかに」は,「見られないことの利益を有する者に知られることなく」という意味であり,見られる者の認識(承諾)を問題とする文言と解されている(注釈特別刑法第7巻,風俗・軽犯罪編111頁)。



「正当な理由がない」ことを要することとしているのは、医療準則にのっとって行われた撮影行為や、親が子の成長の記録として行う撮影行為を、構成要件の段階で処罰対象から除外するためであるとすると、恐喝の手口に乗った被害者だから盗撮行為につき「正当な理由」があるというのも無理があります。
 結局、性的姿態撮影罪の成立はやむを得ないと思います。情状を酌んで立件しないとか、起訴猶予という結論になるでしょう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2eb17864ae4d9bdd402842d23db1cadd3611b4ac
 警察によりますと男性は、出会い系サイトで知り合った女から「性行為3人でしよう」などと誘われたということです。
 当日現場に現れた男(26)が男性に女を盗撮するよう持ちかけ、スマートフォンを脱衣場に置くなどして盗撮行為を実行させました。
 その後、女が脱衣所に置かれたスマートフォンを持ち出し、「警察に言うよ」と、盗撮行為を理由に男性を脅迫。男性は示談金名目で、現金100万円を手渡しました。

法務省逐条説明
2) 「ひそかに」撮影する行為(第1号)
「ひそかに」とは、撮影対象者に対象性的姿態等を撮影することを知られないような態様で、という意味である。
本号において「正当な理由がない」ことを要することとしているのは、医療準則にのっとって行われた撮影行為や、親が子の成長の記録として行う撮影行為を、構成要件の段階で処罰対象から除外するためである。

坪井麻友美検事「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」(法曹時報66巻11号29頁)
「ひそかに」
「ひそかに」とは,「描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」という意味であり,児童が利用する脱衣所に隠しカメラを設置して盗撮するような場合が典型例である。
この要件は,児童を描写する行為の客観的態様についての要件であって,児童の承諾の有無を問題とする要件ではなく,また,当該児童が当該描写を認識しているか否かも間わない。
本項の児童ポルノの製造罪の趣旨は,前記のとおり,かかる行為が児童の尊厳を害し,児童を性的行為の対象とする風潮が助長され,抽象的一般的な児童の人格権を害する等の点にあり,その保護法益が児童のプライパシー権そのものではない上,本項が児童ポルノを製造する行為のうち,盗撮によるものを特に処罰することとした理由が,前記のとおり盗撮が行為態様の点において違法性が高いと考えられたことによるものであるから,本項の罪は児童の承諾の有無にかかわらず成立する。
注18) 「描写の対象となる児童に知られることのないような態様」に当たるかどうかは,一般人を基準に判断することとなる。客観的にこのような態様に当たる場合,通常,被写体となる児童は描写されていることを認識・承諾していない場合が多いと考えられるが,たまたま児童が隠しカメラの存在に気付き,盗撮されることを内心認容していた場合や,撮られる間際にカメラの存在に気付いた場合なども盗撮製造罪は成立し得る。
(注19) 「ひそかに」の他法令での用例としては,軽犯罪法の窃視の罪(同法第1条第23号「正当な理由がなくて人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」)があるところ,同法上の「ひそかに」は,「見られないことの利益を有する者に知られることなく」という意味であり,見られる者の認識(承諾)を問題とする文言と解されている(注釈特別刑法第7巻,風俗・軽犯罪編111頁)。軽犯罪法の窃視の罪の保護法益はプライパシー権であって被害者の承諾があれば法益侵害がないと考えられるのに対し,児童ポルノの盗撮製造罪の保護法益及び処罰の趣旨は上記のとおりであるから,両法における「ひそかに」の文言の意義は異なるものと解される。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2 前項の罪の未遂は、罰する。