児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「営利目的の児童ポルノ罪を重く処罰する法律がない」という弁護士のコメントについて

「営利目的の児童ポルノ罪を重く処罰する法律がない」「対価を没収していない」という弁護士のコメントについて

クローズアップ現代+「追跡・SNS性犯罪▽ネットで子どもを狙う卑劣な手口とは」
11/4(木) 午後10:00-午後10:30
配信期限 :11/11(木) 午後10:30 まで
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2021110426546?playlist_id=c62990e7-250f-4817-b8ed-8c3366df4c87

で、7条6項の提供罪について、弁護士の「営利目的であることに着目して特に重く処罰する法律が必要だと思っています。」というコメントが流れました。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 という法文も、刑法に比べると重いですよね。

参考
刑法第一七五条(わいせつ物頒布等)
 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

 立法者・法務省はわいせつ図画罪(刑法175条)と同様に包括一罪と考えていたと思いますが、判例で修正されていて、提供罪+提供目的所持罪の場合も、数回の提供罪の場合も併合罪加重されます。

判例番号】 L06410056
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,わいせつ図画販売目的所持,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 最高裁判所第2小法廷決定/平成20年(あ)第1703号
【判決日付】 平成21年7月7日
【判決要旨】 1 児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項の児童ポルノ提供罪と同条5項の同提供目的所持罪とは併合罪の関係にある。
       2 児童ポルノであり,かつ,刑法175条のわいせつ物である物を,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した場合,わいせつ物販売と同販売目的所持が包括して一罪を構成すると認められるときには,全体が一罪となる。
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集63巻6号507頁
       裁判所時報1487号194頁
       判例タイムズ1311号87頁
       判例時報2062号160頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 論究ジュリスト3号225頁
       ジュリスト1404号122頁
       判例時報2130号165頁
       法曹時報64巻7号1928頁
       刑事法ジャーナル22号107頁

判例番号】 L07220307
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成28年(う)第872号
【判決日付】 平成29年1月24日
【判決要旨】 1 児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,写真の被写体である児童を描写したといえる程度に,被写体と同一であると認められるときは,全く同一の姿態,ポーズがとられなくても,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当する。
       2 児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において,18歳以上になっていたとしても,児童ポルノ製造罪は成立する。
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集74巻1号234頁
       高等裁判所刑事判例集70巻1号1頁
       高等裁判所刑事裁判速報集平成29年73頁
       東京高等裁判所判決時報刑事68巻1~12号28頁
       判例タイムズ1446号185頁
       判例時報2363号110頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 ジュリスト1518号169頁
       小樽商科大学商学討究70巻1号143頁
       法学新報125巻1~2号173頁
       立命館法学372号545頁
       刑事法ジャーナル56号149頁
  (3) 本件3画像の提供罪を一罪とした点
   (ア) 所論は,①被告人が「E」をアップロードした時期と,「E2」をアップロードした時期とでは,1年2か月が経過しており,含まれる画像も素材画像の写真の被写体も全く異なっている上,②3名の購入者のダウンロードの時期も1年ほど離れているのであるから,児童ポルノ提供罪については,「E」及び「E2」の各CG集ごと,及び,各購入者ごとに,それぞれ児童ポルノ提供罪が成立し,それらは全て併合罪の関係になるはずである,しかるに,原判決はこれを一罪と評価した上,①原判決が全てのCGについて児童ポルノに該当すると認めなかった「E」の提供については,無罪を言い渡すべきであるのに,これを言い渡さなかった点で,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,②購入者を追加する内容の訴因変更は,併合罪の関係にある以上,許可すべきでないのに,これを許可した原審の訴訟手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるという。
   (イ) まず,1名に対する児童ポルノの提供を3名に対する提供へと変更する訴因変更を許可した点について検討すると,そもそも,本件における児童ポルノ提供罪は,その構成要件上,不特定又は多数の者に提供することが予定されているから,購入者の追加は,公訴事実の同一性の範囲内であることが明らかであって,この点について訴因変更を許可した原審の訴訟手続に何ら法令違反はない。
   (ウ) 次に,提供罪の罪数について検討すると,記録によれば,被告人は,平成20年8月頃,CG集である「E」を完成させたこと,被告人は,Dに,同CG集の販売を委託し,そのデータを同社に送信して,同月28日以降,同CG集がインターネット上で販売されたこと,被告人は,「E」をアップロードした後,これを見たインターネットサイトの利用者から,他のモデルの画像のリクエストが多数寄せられたことなどから,その要望に応じて,平成21年11月頃,「E」と同様のCG集である「E2」を完成させたこと,被告人は,同CG集についても,「E」と同様に,Dに販売を委託したこと,同月27日以降,「E2」がインターネット上で販売されたことが認められる。
     これによれば,被告人は,「E」をアップロードした後,新たに犯意を生じて,上記アップロードの約1年3か月後に,「E2」をアップロードしたといえるから,前者の提供行為と後者の提供行為とは,別個の犯意に基づく,社会通念上別個の行為とみるべきであって,併合罪の関係に立つとみるのが相当である。そうすると,両者の関係が一罪に当たるとの前提に立ち,前者の提供行為について,児童ポルノに該当するものがなく,その提供に当たらないとしながら,主文で無罪を言い渡さなかった原判決には,法令の適用に誤りがあり,これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
     論旨は理由がある。
     よって,量刑不当の論旨について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。

 その結果、数回の提供行為は併合罪なので、
   懲役刑の上限は、懲役7年6月
   併科罰金刑の上限は、500万円×提供回数
となります。
 例えば、10回提供すると、
   懲役刑の上限は、懲役7年6月
   併科罰金刑の上限は、5000万円
 例えば、20回提供すると、
   懲役刑の上限は、懲役7年6月
   併科罰金刑の上限は、1億円
になります。
 わいせつ図画罪なら、10回頒布しても20回頒布しても科刑上一罪なので
   懲役刑の上限は、懲役2年
   併科罰金刑の上限は、250万円
になります。


対価没収については、刑法19条1項で没収可能ですが、

刑法第一九条(没収)
 次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物

 ダウンロード販売は、何百・何千回売っているので、売上も多額になりますが
 児童ポルノ提供罪は併合罪なので、1件有罪にして、1本の対価(1000円くらいか)没収、ということで、2件起訴しても2000円しか没収されません。