児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態」を「児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態」とした事例(大阪地裁R2.12.16)

「同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態」を「児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態」とした事例(大阪地裁R2.12.16)
 刑法改正で混乱するんじゃないかと思ってました。
 児童ポルノ・児童買春法の関係では、口淫は性交類似行為であって、「性交=膣性交」ですから、「同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態」というのは、「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態」にはなりませんね。罪となるべき事実に「性交」に該当する具体的事実が記載されていないので、理由不備です。
 全ての刑罰法規で性交=口腔性交・肛門性交含むとされてしまうと、有償の性交類似行為が売春になってしまいます。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)2条
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態

大阪地裁令和 2年12月16日 事件名 強制性交等、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ処罰法」という。)違反被告事件
主文
 被告人を懲役年に処する。
 未決勾留日数中340日をその刑に算入する。
 大阪地方検察庁で保管中のデスクトップ型パーソナルコンピューター(G-GEARと記載)1台(同庁令和元年領第10850号符号5)を没収する。
 
 
理由

 (関係者及び関係場所等の呼称は別紙記載のとおり)
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1 帰宅途中の女児と口腔性交等をしようと考え,令和元年7月20日午後9時10分頃から同日午後9時45分頃までの間,住所〈省略〉所在のaマンション7階エレベーター付近において,A(当時11歳)に対し,その後方からいきなり左手で口を塞ぎ,右手で持った果物ナイフを同人に示して「騒ぐな。」と言うなどの暴行,脅迫を加えてその反抗を著しく困難にし,同マンション7階から8階に至る階段踊り場において,同人に衣服を脱がせてその乳房を手でもみ,その陰部を手指で弄ぶなどし,さらに,同人の口腔内に自己の陰茎を入れ,口腔性交をし,
 第2 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記日時頃,前記階段踊り場において,同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせ,それらの姿態を被告人のスマートフォンで動画及び静止画撮影し,その画像及び映像データ合計11点を同スマートフォンに挿入したマイクロSDカードに保存し,もって児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し,
 第3 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,自己の性的好奇心を満たす目的で,同年9月17日,大阪市〈以下省略〉所在の被告人方において,同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせた画像及び映像データ9点を記録した電磁的記録媒体を内蔵するパーソナルコンピュータ1台(大阪地方検察庁令和元年領第10850号符号5)を所持し,もって児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを所持した。
 (証拠の標目)
 (事実認定の補足説明)
 弁護人は,判示第2及び第3の各事実に関して,被告人は,被害者の画像等を意図的にスマートフォンのマイクロSDカードに保存しておらず,被害者の画像等を「自己の性的好奇心を満たす目的で」記憶媒体に保存して判示パーソナルコンピュータ(以下「本件PC」という。)を所持していないから,被告人にはそれぞれ児童ポルノ処罰法7条4項所定の児童ポルノ製造罪及び同条1項前段所定の児童ポルノ所持罪は成立しない旨主張し,被告人も,判示第3の事実に関して,本件PCのハードディスク内に,判示第2の犯行に際して撮影した画像及び映像データを保存した覚えはない旨供述する。
 しかし,当裁判所は,判示第2及び第3の各事実がいずれも認められると判断したので,以下,その理由を補足して説明する。
 1 判示第2の事実について
 関係各証拠によれば,被告人は,判示第1の強制性交等の犯行に際して,判示第2のAの姿態を被告人のスマートフォン(以下「本件スマホ」という。)で動画及び静止画撮影したことが認められるから,意図的にAの画像データ等を保存したと認められる。なお,Aの画像データ等は,本件スマホに内蔵された電磁的記録媒体ではなく,これに装着されたマイクロSDカード(以下「本件SD」という。)内に保存されているが,被告人は,本件スマホの購入時に本件SDを装着し,そのままの状態にしていたと認められるから,本件SD内にAの画像データ等が保存されることについても当然に認識していたものと認められる。
 そして,関係各証拠によれば,被告人は,Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,Aに判示第2のとおりの姿態をとらせ,これを本件スマホで動画及び静止画撮影したことが認められるから,被告人に判示第2の児童ポルノ製造罪が成立することは明らかである(なお,児童ポルノ製造罪の成立に,「自己の性的好奇心を満たす目的」は不要である。)。
 2 判示第3の事実について
  (1) 関係各証拠によれば,次の各事実が認められる(以下,月日のみの記載はいずれも令和元年である。)。
   ア 本件SDには,本件SDが差し押さえられた9月17日の時点でAの画像データ等は保存されていなかったが,復元作業の結果,判示第2の犯行において撮影されたと思料される画像データが14点,動画データが5点復元された(判示第2の事実に係る児童ポルノのデータは,この一部に相当する。)。
   イ 判示第1及び第2の犯行があった日の夜である7月21日午前0時36分ないし37分頃,前記アの画像データ等の一部と対応する画像データ等9点(判示第3の事実に係る児童ポルノのデータ。以下「本件画像等」という。)が,本件PCのデスクトップ上に存在する「新しいフォルダー」に保存された。
 上記「新しいフォルダー」には,本件PCが差し押さえられた9月17日の時点で,本件画像等を含む画像データのファイル27個及び動画データのファイル2個が保存されていた。また,本件画像等が7月21日に保存された後,同月26日には本件画像等のうちの1点が「Windows Photo Editor」を用いて編集されており,同日及び同月27日には本件画像等とは別の画像データのファイルが同フォルダーに保存されていた(なお,捜査報告書(甲15)の添付資料は,本件画像等のうち画像データ7点が「新しいフォルダー」に2個ずつ重複して保存されているとの内容であるが,実際に保存されている画像の個数は,本件PCの解析結果(甲19)のとおり,それぞれ1個ずつであると認められる。)。
 本件PCが差し押さえられた9月17日の時点で,7月21日に「新しいフォルダー」に保存されたとして記録されているのは,本件画像等のみであった。
   ウ 前記アの本件SDから復元された画像データ等のうち,前記イの「新しいフォルダー」に保存されていないファイルには,階段等が撮影されておりAの姿態等が写っていないもの等が含まれていた。
  (2) 以上の事実を踏まえて,被告人が,本件画像等を児童ポルノ処罰法7条1項前段にいう「自己の意思に基づいて所持するに至った」かどうかを検討する。
 この点に関し,まず,本件スマホと本件PCとの自動同期機能等により,被告人の操作によらずに本件PCに本件画像等が保存された可能性について検討すると,前記(1)イのとおり,本件PCが差し押さえられた時点において,「新しいフォルダー」に保存されていたファイルは,僅かに画像データのファイル27個及び動画データのファイル2個のみであり,自動同期機能等により本件スマホのデータが保存されていたとするには,余りに数が少なく不自然である。本件画像等は,本件スマホと本件PCとの自動同期機能等により保存されたものではなく,被告人の操作によって,本件PCに保存されたものと認められる(なお,仮に自動同期機能等により,被告人の操作によらずに本件画像等が本件PCに保存されたとしても,本件画像等は,デスクトップ上の「新しいフォルダー」という目立つ部分に保存されていたのであるから,被告人が自動同期機能等の存在及び本件画像等の存在に気付かないことはおよそあり得ず,それでも本件画像等の保存を継続した被告人は,「自己の意思に基づいて所持するに至った」ものと認められる。)。
 そこで,上記被告人の操作について検討すると,前記(1)イのとおり,本件PCが差し押さえられた時点において,7月21日午前0時36分ないし37分頃に「新しいフォルダー」に保存されたデータとして残っていたのは,本件SDから復元された画像データ等の一部にしか対応しない本件画像等のみであったことからすれば,被告人は,①判示第2の犯行において撮影し,本件SDに保存されていた画像データ等のうち,Aの姿態等が写っていないものを除外するなど何らかの選別を本件スマホ上であらかじめ行って削除しておき,その上で本件画像等を本件PCに保存した,②本件PCにデータを保存する際に,本件SDに保存されていた画像データ等の中から,Aの姿態等が写っていないものを除外するなどして本件画像等を選び出し,これを本件PCに保存した,③本件画像等を含めて,他のデータとともに,何のデータか把握せずに本件PCに保存し,その後に本件画像等以外のデータを削除した,という3つの場合が考えられる。まず,上記①,②の場合については,被告人が意図して本件PC内に本件画像等を保存し,「自己の意思に基づいて所持するに至った」ものと優に認められる。また,上記③の場合についても,前記(1)イのとおり,7月21日に「新しいフォルダー」に保存されたデータは本件画像等しか残っておらず,その余のデータは被告人の操作によって削除されていたとしか考えられないほか,本件画像等の1つは保存後に編集されているのであるから,遅くともこれらの時点以降は,被告人は,本件画像等が同フォルダーに保存されていることを認識した上で本件画像等の保存を継続したということができ,本件画像等を「自己の意思に基づいて所持するに至った」ものと認められる。
 そして,本件画像等の内容に照らせば,被告人が本件画像等を保存した目的が性的好奇心を満たすことにあったことは優に認められるし,被告人はAが13歳未満の児童であることを知りながらAの姿態等を撮影して児童ポルノを製造したのであるから,本件画像等が児童ポルノに当たることについての故意も当然に認められ,被告人には判示第3の児童ポルノ所持罪が成立する。
  (3)ア これに対して,被告人は,要旨次のとおり供述する。すなわち,前記「新しいフォルダー」は,本件PC内のデータを削除する前に,一時的に保管しておくためのものである。判示第1及び第2の犯行の日の晩に,本件スマホの空き容量を増やすため,本件スマホを本件PCに接続し,本件スマホ内の画像等のデータを小さくサムネイル表示した状態で確認し,人が写っている画像等があれば,それ以外の画像等が多少含まれることになっても複数枚同時に選択して「新しいフォルダー」に移動し,それ以外の画像等は本件スマホから削除するという作業をした。この整理作業の結果,本件画像等が本件スマホから「新しいフォルダー」に移動されたものと思われるが,上記整理作業に際しては画像の内容を細かく見ておらず,本件画像等を意図的に保存したということはない。また,本件画像等が「新しいフォルダー」に保存されていることは,本件PCが差し押さえられるまで知らなかった。
   イ しかし,前記認定のとおり,本件画像等が「新しいフォルダー」に保存されたのは,被告人が判示第1及び第2の犯行に及び,Aを撮影するなどした約3時間後のことであるから,被告人が前記整理作業に際して,本件SDにAの画像データ等が保存されていることを忘れていたとは考え難い(被告人自身,整理作業の時点でAの画像データ等があることは覚えていた旨述べている。)。そして,被告人の述べる前記整理作業は,画像データ等を小さくサムネイル表示して行ったとはいうものの,当該画像等が人の写っているものか否か,その内容を視認した上で行ったとのことであるから,被告人は,自らが整理している画像等の中に本件画像等が含まれていることを当然認識していたはずであり,被告人の供述を前提にしても,本件画像等9点のいずれについても全く気が付かなかったという事態はおよそ想定し難い。
 また,前記のとおり,本件画像等の1つについては,「新しいフォルダー」に保存された後,編集されていたことが認められるのであり,本件画像等が同フォルダーに保存されていることを知らなかったとの被告人の供述は客観的証拠に反する。
 以上によれば,前記被告人供述は不合理であって信用することができない。
   ウ なお,弁護人は,本件画像等のほとんどは「新しいフォルダー」に保存された後アクセスされた形跡がないことを指摘し,上記保存は自己の性的好奇心を満たす目的によるものではない旨主張するが,弁護人指摘の事情は上記目的の認定を妨げるものではない。
 3 以上によれば,判示第2及び第3の各事実はいずれも認められる。
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1の所為 刑法177条前段,後段
 判示第2の所為 児童ポルノ処罰法7条4項,2項,2条3項1号,3号
 判示第3の所為 児童ポルノ処罰法7条1項前段,2条3項1号,3号
 刑種の選択
 判示第2及び第3の各罪 懲役刑
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 没収 刑法19条1項1号,2項本文(主文掲記のデスクトップ型パーソナルコンピューター(G-GEARと記載)1台は,判示第3の児童ポルノ所持の罪の犯罪行為を組成した物で,被告人以外の者に属しない)
 なお,弁護人は,本件画像等を完全に消去すれば足り,上記パーソナルコンピューター全体の没収は許されない旨主張するが,弁護人の主張するような没収方法は現行法上予定されておらず,本件における没収の必要性等に照らせば上記パーソナルコンピューターの没収が罪刑の均衡を欠き許されないといった特段の事情も認められない。
 (量刑の理由)
 
 (求刑 懲役10年,主文掲記のデスクトップ型パーソナルコンピューター(G-GEARと記載)1台の没収)
 令和2年12月17日
 大阪地方裁判所第12刑事部
 (裁判長裁判官 増田啓祐 裁判官 中山知 裁判官 尾嶋翔一)
 <<