青少年淫行罪・青少年わいせつ罪合計3件で。懲役1年6月執行猶予4年(盛岡地裁R03.2.17)
この程度では実刑事案はありません。
性的意図がない単なる「接吻」が青少年条例違反とされていますが、強制わいせつ罪の性的意図不要説の大法廷h29.11.29の影響で青少年条例の「わいせつ」の定義も流動的ですし、淫行についての最大判S60.10.23を考慮すると、青少年条例の関係では性的意図が必要という結論になるでしょう。
岩手県青少年のための環境浄化に関する条例 解説H19
(1 ) 「みだらな性行為」とは、健全な常識ある一般社会人からみて、結婚を前提としない、欲望を満たすためにのみ行う性行為をいう
(2) 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮させたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的にしゅう恥・嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
青森県青少年健全育成条例違反、青少年のための環境浄化に関する条例違反被告事件盛岡地方裁判所令和03年02月17日
主文
1 被告人を懲役1年6か月に処する。
2 この裁判確定の日から4年間その刑の全部の執行を猶予する。理由
(罪となるべき事実)
被告人は、単に自己の性的欲望を満足させるため、
第1 令和2年3月23日午前10時13分頃から同日午前11時41分頃までの間に、青森県(以下略)E(省略)号室において、別紙記載の被害者Aが18歳未満の者であることを知りながら、被害者Aの乳房等を手指等でもてあそび、被害者Aに手淫や口淫をさせ、被害者Aと性交し、もって、青少年に淫行をした。
第2 同年6月27日午後零時30分頃から同日午後1時頃までの間に、岩手県事務所において、別紙記載の被害者Cが18歳未満の者であることを知りながら、被害者Cの着衣の上から被害者Cの股間や乳房を手指でもてあそび、被害者Cの着衣をまくり上げて被害者Cの乳房等を手指や舌等でもてあそぶなどし、もって、青少年にわいせつな行為をした。
第3 同年7月22日午後7時頃、同県D郡(以下略)G株式会社H駅駐車場に駐車中の自動車内において、別紙記載の被害者Bが18歳未満の者であることを知りながら、被害者Bの唇に接吻して被害者Bの口腔内に舌を差し入れるなどし、もって、青少年にわいせつな行為をした。
なお、被告人は、被害者Cの股間を触っていない旨弁解するが、判示のとおり被害状況を述べる被害者Cの供述は具体的であり、信用できない理由はない。
被告人の前記弁解を踏まえて検討しても、その結論は動かない。
(法令の適用)
1 罰条
(1) 判示第1の所為について
青森県青少年健全育成条例30条1項、22条1項
(2) 判示第2及び第3の各所為について
いずれも青少年のための環境浄化に関する条例29条1項、18条1項
2 刑種の選択
いずれも懲役刑
3 併合罪の処理
刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
4 刑の全部の執行猶予
刑法25条1項
(量刑の理由)
被告人は、15~16歳の被害者3名に対し、性交して淫行し、又はわいせつな行為をしたのであって、かかる行為は、被害者3名の健全な育成・成長を阻害するおそれが高い。また、被告人は、本件各犯行当時、市議会議員を務めて文教福祉に携わっており、法令を遵守し、青少年の健全な成長を率先して図るべきことを強く期待されながら、本件各犯行に及んだのであって、被告人の責任非難の程度は大きい。
被告人の行為責任は、この種事案の中で重く、求刑どおりの主刑が相当であるが、さりとて、被害者の性的自己決定権等を侵した事案として訴追されたわけではないことからすると、一般情状如何によっては実刑以外の量刑も許されないではない。
被告人に古い罰金前科しかなく、被告人が本件各犯行を概ね認め、被害者3名に対する謝罪文を認 したため、I弁護士連合会に対する贖 しょく罪寄附をし、公職も辞したことなどの一般情状も考慮し、その刑の全部の執行は猶予するが、被告人に対しては、長期間にわたる自重自戒を求める必要があると判断し、その執行猶予期間を定めた。
(検察官小原一利及び私選弁護人小西弘晃各出席)
刑事部
(裁判官 片岡理知)