児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「単に自己の性欲を満たす目的で同女の耳や陰部を舐め,同女の陰部を手で触り,同女に自己の陰茎を口淫させた上,同女と性交し,もって青少年に対して,わいせつな行為及びみだらな性行為をした」という罪となるべき事実(岐阜地裁r2.1.24)


 「同女の耳や陰部を舐め,同女の陰部を手で触り,同女に自己の陰茎を口淫させた上,同女と性交し」というのは「みだらな性行為」にも「わいせつな行為」にも該当するように見えます。

 岐阜県条例は、性交・性交類似行為・わいせつ行為という区分ではなく、
①「みだらな性行為」=健全な常識ある一般社会人からみて、結婚を前提としない欲望を満たすためのみ行う不純とされる性行為」
②「わいせつな行為」=いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し、性的にしゅう恥嫌悪の情をおこさせる行為
という区別のようです。この解説はS55の条例解説から不変で、最大判S60.10.23福岡県青少年条例違反事件大法廷判決を受けても変更がありません。性行為についても、わいせつな行為については、再定義求める必要があります。

岐阜県青少年健全育成条例の解説h22
(みだらな性行為等の禁止)
第23
1 条何人も、青少年に対して、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対して、前項の行為を教え、文は見せてはならない。
【解説】
1 本条は、何人も、青少年に対してみだらな性行為若しくはわいせつな行為をし、又はそれらの行為を教えたり、見せたりするなど、青少年の福祉を限害する背徳行為を禁じようとするものである。
( 1) 「みだらな性行為」とは、健全な常識ある一般社会人からみて、結婚を前提としない欲望を満たすためのみ行う不純とされる性行為をいう。
(2) 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し、性的にしゅう恥嫌悪の情をおこさせる行為をいうものである。
2 本条は、何人も、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならないので、あって、相手となる青少年が承諾したかどうかは問わないc
3 「何人」とは、県民はもとより、旅行者、滞在者も含み、現に本県内にいるすべての人をさし、成人であると未成年者であると問わない。

岐阜地方裁判所
令和2年1月24日刑事部判決
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成30年3月29日午後1時22分頃から同日午後3時頃までの間に,岐阜県大垣市α××××番地×b公園駐車場に駐車中の自動車内において,別紙記載のA(当時15歳)が18歳未満の青少年であることを知りながら,単に自己の性欲を満たす目的で同女の耳や陰部を舐め,同女の陰部を手で触り,同女に自己の陰茎を口淫させた上,同女と性交し,もって青少年に対して,わいせつな行為及びみだらな性行為をした。
(証拠の標目)《略》
(争点に対する判断)
1 争点
 本件の争点は,被告人が,Aに対し,その耳や陰部を舐め,陰部を手で触り,自己の陰茎を口淫させ,性交するという行為をしたか否かであり,その判断に当たっては,A供述の信用性が問題になる。
 当裁判所は,A供述のうち判示事実に関係する部分は信用でき,被告人が判示行為を行ったものと認定したので,以下その理由を説明する。
・・・・
(法令の適用)
 被告人の判示所為は,岐阜県青少年健全育成条例48条,23条1項に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとし,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
(量刑の理由)
 被告人は,中学校教諭の立場にありながら,元生徒の被害者に対し判示行為に及んだもので,本件は,青少年の健全育成を期する条例の趣旨に著しく反する悪質な犯行である。これに加えて,被告人には前科はないことなども考慮し,主文の刑が相当と判断した。
(求刑 懲役1年)
令和2年1月30日
岐阜地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 菅原暁 裁判官 小川結加 裁判官 馬場梨代