児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童に対する性交類似行為を奈良県青少年条例で起訴する場合の法令適用

 成人男性が、女子児童と肛門性交した場合でこういう起訴があり、その通りの事実認定となった

公訴事実=罪となるべき事実
 被告人は、平成22年12月16日、奈良市マンション203号室の被告人方においてA子(当時16年)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、同児に対し、自己の性欲を満たすため、その肛門に陰茎を挿入するなどし、もって、青少年に対し、わいせつな行為をしたものである。

 賢明なる裁判所は地元だし絶対間違えない、浅薄なる弁護人が法令適用に口を挟むことは慎むべきだと思い、弁護人は黙っていました。
 この訴因は罪にならない。
 というのは、肛門性交というのは、判例上性交類似行為であって、条例上の「みだらな性行為」に該当する。
 条例の「みだらな性行為又はわいせつな行為」というのは、強姦罪と強制わいせつ罪の関係と類似の関係であって、本来はわいせつ行為である性交・性交類似行為について、別個に取り出して、「みだらな」という限定を付して、処罰しようとするものであるから、「みだらな性行為」に該当する行為は「わいせつ行為」に当たらないという関係である。
 とすると、肛門性交を「わいせつ行為」として起訴したことは失当であるし、そう認定したことも失当である。
 刑法犯でいえば「姦淫行為」を「強制わいせつ罪」で起訴するのと同じです。「強制わいせつ罪」には当たらないのです。

奈良県青少年の健全育成に関する条例の解説h15
みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第34条
1何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2何人も、青少年に対し前項の行為を教え、又は見せてはならない。
【要旨】
本条は、心身ともに発達途上にある青少年に対し、みだらな性行為及びわいせつな行為をし、又はこれらの行為を教えたり見せたりすることを禁止し、青少年の健全な育成を図ろうとするものである。
【解説】
1「みだらな性行為」とは、昭和60年10月23日最高裁判決にいう「淫行」すなわち「(広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、)青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」と同様である。
2「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的に羞恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
3「してはならない」とは、何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならないのであって、相手となる青少年が承諾したかどうかは問わない。
4「教え、又は見せ」とは、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をするのではないが、当該行為の方法等を教示することであり、単なる猥談等の漠然としたものではなく、具体的に教示することをいう。
5本条の規定は、自らが青少年に対してする行為を禁止したものである。
なお、児童福祉法第34条第1項第6号に規定する「児童に淫行をさせる行為」の禁止規定との関係については、「行為者が第三者を児童の相手方として児童に淫行をさせる場合」が同法違反となることは明らかであるが、「行為者自らが児童の相手方となって児童に淫行をさせる場合」についても、限定的ではあるが、同法違反が成立するとされている。(平成10年11月2日最高裁決定)
613歳以上の男女に対する暴行又は脅迫を用いてのわいせつな行為(強制わいせつ)及び13歳以上の女子に対する暴行又は脅迫を用いての姦淫(強姦)については、本規定と刑法第176条及び第177条の条項とが競合することになる。ここで、第176条違反が「6月以上7年以下の懲役」、第177条違反が「2年以上の懲役」というようにそれぞれ懲役刑が科される一方、本条違反が「30万円以下の罰金」というように罰金刑であることから、より重い刑である懲役刑を科している刑法の規定が適用されることになる。ただし、13歳以上の男女に対する暴行又は脅迫を伴わないわいせつな行為及び13歳以上の女子に対する暴行又は脅迫を伴わない姦淫については、刑法では規定していないため、本条の規定が適用される。
また、13歳未満の男女にわいせつな行為をすること及び13歳未満の女子を姦淫すること(どちらも暴行、脅迫を用いてか否かは問わない)についても、本規定と刑法の規定とが競合することになるが、これについても上記と同様の理由から刑法が適用されることになる。

【関係判例
1福岡県青少年保護育成条例違反被告事件(昭和60年10月23日最高裁判決)
(判決要旨)
福岡県青少年保護育成条例の、青少年に対するいん行又はわいせつな行為を禁止する規定の趣旨は、一般に青少年が、その心身の未成熟や発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していないため、性行為等によって精神的な痛手を受け易く、また、その痛手からの回復が困難となりがちである等の事情にかんがみ、青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することとしたものであることが明らかであって、上記規定の趣旨及びその文理等に徴すると、本条例にいう「いん行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。
けだし、右の「いん行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「いん行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなって、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「いん行」を目して単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであって、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。
このような解釈は通常の判断能力を有する一般人の理解にも適うものであり、「いん行」の意義を右のように解釈するときは、同規定につき処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるともいえないから、本件規定は憲法31条の規定に違反するものとはいえず、また、憲法11条、13条、19条、21条にも違反しない。

和歌山県青少年健全育成条例の解説
(いん行又はわいせつ行為の禁止)
第26条
1何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつ行為をしてはならない。
2何人も、青少年に対し、前項の行為を見せ、又はその方法を教えてはならない。
【要旨】
本条は、青少年に対するいん行又はわいせつ行為を禁止し、不健全性的行為など青少年の福祉を害する行為の防止を図るため設けた規定である。
【解説】
1「いん行」とは、各県の条例によって「みだらな性行為」、「いん行」など表現の相違はあるが、この2つの言葉は同意語である。つまり、健全な常識のある一般社会人から見て、結婚を前提とせず専ら欲望を満たすためにのみ行う不純とされる性交又は性交に類する行為をいう。
2「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめたり、その露骨な表現によって性的差恥嫌悪の情を起こさせる行為をいう。
3「してはならなしリとは、青少年を相手として、いん行又はわいせつ行為を行うことを一切禁止するもので、相手方となる青少年の同意、承諾の有無及び対償の授受の有無を問わない。」