「流行のシャギーカット,ほっぺたがポッチャリしており,足は中くらいの太さであるが棒状であること,ませた顔でニキビがないこと,小陰唇が発達し,外陰部の色素沈着が認められること,胸はAカップかBカップくらいである程度あるが平坦であり,乳首は小さめであることなどから,15歳から17歳程度と認められる。」というのですが、 見かけ15~17と18歳とは区別できないでしょう。そんなAV嬢もいるでしょう。
自己の性的好奇心を満たす目的については、警察文献では否定される例も出てたと思いますが、エッチなビデオであれば肯定されてしまうようです。
静岡地方裁判所浜松支部令和2年2月21日刑事部判決
判 決
上記の者に対する強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官大作顕子,同永井絢子,弁護人伊豆田悦義(私選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
理 由【罪となるべき事実】
第2 被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年7月18日,浜松市α区β×××番地の×所在の被告人方において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データを記録した児童ポルノであるDVD14枚を所持した。
【証拠の標目】《略》
3〔2〕判示第2の事実における〔ア〕DVD1枚の児童ポルノ該当性について
弁護人は,判示第2の事実における各DVD(以下,単に「各DVD」という。)のうち,「○○○○○○○○○○」と印字されたラベルが貼られたケースに入っているもの(以下「本件DVD」という。)については,写っている女性(以下「本件女性」という。)が18歳未満ではない疑いがあるとして,児童ポルノ該当性を争うため,以下検討する。
(1)本件DVDを含む複数のDVDに写っている女性の年齢判断をした,当時国立大学法人a大学の法医学講座の助教授であったP2医師(以下「本件医師」という。)の供述の概要は,次のとおりである。
私は,約13年間の法医実務経験を有しており,その間,法医解剖数約605件,行政解剖数約53件,検案数約281件を経験し,幼児から第二次性徴期である8歳くらいから18歳くらいまでの少女の解剖,検案も多数担当している。これらの経験や医学文献に基づき,女子の陰毛,乳房及び外陰の発育度並びに骨盤の増大度等を総合考慮し,約27年間の法医実務経験を有する同講座の教授と共に判断する。18歳未満の可能性が高いが,18歳未満とは完全に言い切れない者を除外し,ほぼ18歳未満として間違いない者について,18歳未満と判断する。
本件DVDの映像は,モザイク等がなく性器が鮮明に写されたものである。本件女性は,流行のシャギーカット,ほっぺたがポッチャリしており,足は中くらいの太さであるが棒状であること,ませた顔でニキビがないこと,小陰唇が発達し,外陰部の色素沈着が認められること,胸はAカップかBカップくらいである程度あるが平坦であり,乳首は小さめであることなどから,15歳から17歳程度と認められる。
(2)以上の本件医師の供述は,豊富な実務経験を有する専門的な立場からの合理的なものとして信用できる。
この点,弁護人は,本件医師の前記供述の信用性に関し,本件医師は,子供の成長には個人差が大きく,外見を観ての年齢判断は困難であり,まして,映像を観ての判断で正確性は劣らざるを得ないとの留保を付しており,年齢判断の正確性には限界があるほか,本件医師が本件女性の年齢判断の根拠とする事情は,いずれも,女性の成長度合いや体型に関する個人差として常識的に考えられる幅を考慮すれば,成人女性についても該当する可能性のあるものであると主張する。
しかし,本件医師は,弁護人が指摘する留保を付しつつも,自身の経験等に基づいて判断するとしているのであって,この留保をもって,直ちに本件医師の年齢判断の正確性が否定されることにはならない。本件医師は,本件DVDの映像は性器が鮮明に写されたものであるとした上で,具体的な事情を根拠にあげて,本件女性の年齢判断をしているものである。確かに,本件医師が本件女性の年齢判断の根拠とする事情は,個別にみれば,いずれも成人女性についても該当する可能性のあるものではあるが,本件医師は,これらを総合考慮の上,自身の豊富な経験や文献に基づき,同じく豊富な経験を有する教授と共に,本件女性の年齢を15歳から17歳程度と判断しているのであって,その正確性については十分信用できる。
したがって,弁護人の前記各主張は,本件医師の前記供述の信用性を揺るがすものとはいえない。
(3)以上のとおり,信用できる本件医師の前記供述によれば,本件女性の年齢は,15歳から17歳程度と認められるとされている。この点について,弁護人は,15歳から17歳程度との表現からすれば,本件女性が18歳に達している可能性を排斥していない旨主張するが,本件医師は,18歳未満の可能性が高いが,18歳未満とは完全に言い切れない者を除外し,ほぼ18歳未満として間違いない者について,18歳未満と判断するとしているのであって,15歳から17歳程度との供述は,18歳に達している可能性を排斥しているものと考えるべきである。
(4)したがって,本件女性の年齢は18歳未満であると認められ,他の証拠もあわせ鑑みれば,本件DVDは,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)2条3項にいう「児童ポルノ」に当たるといえる。
4〔2〕判示第2の事実における〔イ〕自己の性的好奇心を満たす目的の有無について
弁護人は,判示第2の行為日である平成30年7月18日時点において,被告人は,各DVDへの興味・関心を失っていたとして,各DVDの所持につき,児童ポルノ法7条1項にいう「自己の性的好奇心を満たす目的」を争うため,以下検討する。
(1)関係証拠によれば,各DVDは,本件DVDを含め,児童ポルノ法2条3項にいう「児童ポルノ」に当たるといえ,また,被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,各DVDを入手したことが認められる。このように,自己の性的好奇心を満たす目的でポルノの所持を開始した場合,特段の事情がない限り,その後の所持についても,自己の性的好奇心を満たす目的であると推認するのが合理的である。
(2)本件において,被告人が,平成30年7月18日を基準として,10年以上,各DVDを視聴していなかった可能性は否定されない。もっとも,各DVDは,被告人方の書斎の本棚に保管されていたのであり,被告人が視聴しようと思えばいつでも視聴できたものである。同書斎には,明らかに不要なものも保管されており,廃棄されていないからといって,直ちに被告人が各DVDへの興味・関心を有していたことにはならないものの,少なくとも,各DVDは,一見してポルノと分かる外観ではなく,廃棄することが困難であったといった事情は見当たらない。各DVDは,同日時点で存在する他のポルノに比べれば,画質等が劣るものであるが,性的好奇心が向けられるには十分なものである。そして,前記2で説示したとおり,被告人は,同日頃において,女子児童に性的興味を有していたと認められるところである。
以上のとおり,被告人は,各DVDを視聴しようと思えば容易に視聴でき,かつ,それによって,自己の性的好奇心を満たすことができたものといえるのであって,前記特段の事情は認められない。結局,同日時点において被告人は各DVDへの興味・関心を失っていたとの弁護人の前記主張は,単に被告人が各DVDへの具体的な興味を失っていたとの主張に過ぎず,児童ポルノ法7条1項にいう「自己の性的好奇心を満たす目的」を否定するものではない。
(3)したがって,被告人は,判示第2の行為日である平成30年7月18日時点において,自己の性的好奇心を満たす目的で,各DVDを所持していたと認められる。
【法令の適用】
罰条
判示第2の行為 包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段,2条3項1号,2号,3号
刑種の選択
判示第2の罪 懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情が最も重い判示第1の1の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
刑の執行猶予 刑法25条1項
【量刑の理由】
令和2年2月21日
静岡地方裁判所浜松支部刑事部
裁判長裁判官 山田直之 裁判官 横江麻里子 裁判官 宮田裕平