児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被告人は,女子高校生一般に対して日頃から怒りや恨み等の感情を抱いていたため,仕返しをする目的だったという弁解~法務総合研修所教官森田秀人「強制わいせつの主観的要素を立証するに当たり,本件の数日後に被告人が別の被害者に同種のわいせつ行為に及んだ事実を用いることができるとされた事例(東京高裁令元. 5. 15判決・上告中)」研修856号

 被告人は,女子高校生一般に対して日頃から怒りや恨み等の感情を抱いていたため,仕返しをする目的だったという弁解~法務総合研修所教官森田秀人「強制わいせつの主観的要素を立証するに当たり,本件の数日後に被告人が別の被害者に同種のわいせつ行為に及んだ事実を用いることができるとされた事例(東京高裁令元. 5. 15判決・上告中)」研修(第856号)判例紹介

1 事案の概要
本件は,被告人が自転車で通行中の女子高校生に強いてわいせつな行為をしようと考え‘①某日午後6時35分頃路上を自転車で通行中のAに対し, 道を尋ねる振りをして呼び止めた上,右手に持った包丁をその腹部に突き付けながら,左手でその右肘付近をつかんで引っ張るなどし, 自転車から降ろしたAを付近の駐車場に連れ込み, 同様に包丁をその腹部に突き付けながら, 「騒いだら殺すぞo」などと言い,抵抗するAの顔面を1回殴るなどの暴行, 脅迫を加え,強いてわいせつな行為をしようとしたが, Aに逃走されたため, その目的を遂げず(強制わいせつ未遂。以下「第1事件」ともいう。),②その5日後の午後7時46分頃路上を自転車で通行中のBに対し, その顔面を1回殴打し, 自転車もろともBを路上に転倒させ,逃げるBを付近の空き地まで追いかけ, Bを押し倒し, その頭部等を多数回殴るなどの暴行を加えた上,スカートをまくり上げ, シヨートパンツの上からその臂部を触り, その際, Bに全治約2週間の傷害を負わせた(強制わいせつ致傷。以下「第2事件」ともいう。) という事案である。
本件では,被告人がA, Bに公訴事実記載の暴行,脅迫をしたことに争いはなく,主たる争点は,被告人が暴行,脅迫の際わいせつな行為をする目的を有していたか否かである(なお, 第2事件では,被告人が意図してわいせつな行為をしたか否かも争点となった。)。
この点について,被告人は,女子高校生一般に対して日頃から怒りや恨み等の感情を抱いていたため,仕返しをする目的だった旨主張した。