児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

 被害者は,一連の被害状況を具体的に供述している上,その内容に不自然,不合理な点はない・・・捜査段階から一貫した供述をしていることからすると,被害者の証言が記憶違いによるものとは考え難い。また,嘘をつくような事情も認められない。よって,被害者の供述は信用できる。 これに対して,被告人は,・・との発言はしていないなど不自然さが否めないものである。また,自身の記憶について,・・犯行状況に関する供述にはあいまいな点が多い上に,被告人が上記状況について供述をしたのは,少なくとも本件から3か月以上経過した後であるこ

 事実認定を争うと、こういう感じで否定されます。






裁判年月日 平成30年10月 1日 裁判所名 甲府地裁 裁判区分 判決
事件番号 平30(わ)100号 ・ 平30(わ)141号 ・ 平30(わ)196号 ・ 平30(わ)253号
事件名 強制わいせつ致傷、強制わいせつ、強制わいせつ未遂被告事件
文献番号 2018WLJPCA10016002
 上記の者に対する強制わいせつ致傷,強制わいせつ,強制わいせつ未遂被告事件について,当裁判所は,検察官小串依里及び同宮上泰明並びに国選弁護人板山俊一(主任)及び同大西達也各出席の上審理し,次のとおり判決する。
理由

 (犯罪事実)
 被告人は,
 第1 自転車で通行中のA(当時45歳)に強制わいせつ行為をしようと考え,平成29年5月7日午後9時42分頃,a市●●●上において,同人に対し,いきなりその背後から同人の身体をつかんで引っ張るなどした上,抵抗する同人の首を絞めるなどし,「黙らないと殺すぞ」などと言うなどの暴行脅迫を加え,その着衣の上から同人の両胸を揉み,陰部を触るなどし,もって強いてわいせつな行為をした。
 第2 徒歩で通行中のB(当時17歳)に強制わいせつ行為をしようと考え,同年12月2日午後8時40分頃,山梨県b市●●●において,同人に対し,いきなり背後からその口を手で塞ぎ,仰向けに寝転んだ状態の同人の脇にしゃがみ込んで手に持っていたカッターナイフを示し,「抵抗するな」などと言うなどの暴行脅迫を加え,強いてわいせつな行為をしようとしたが,同人が抵抗したため,その目的を遂げなかった。
 第3 C(当時19歳)に強制わいせつ行為をしようと考え,同月4日午後11時30分頃,同市●●●において,同人に対し,いきなり背後から抱き付き,その口を手で塞ぐなどし,同人を路上に倒した上,「殺すぞ」などと言い,その顔面を拳で数回殴り,同人の頭部等に膝を乗せて路上に押し付けるなどの暴行脅迫を加えて,着衣の上から同人の胸を揉み,陰部を触るなどし,もって強いてわいせつな行為をし,その際,前記一連の暴行により,同人に全治約10日間を要する顔面部打撲傷の傷害を負わせた。
 第4 ランニング中のD(当時28歳)に強制わいせつ行為をしようと考え,平成30年2月28日午後10時45分頃,同市●●●上において,同人に対し,その背後から同人の身体に腕を回して押さえ付け,その首を腕で締め付けるなどした上,同人を路上に投げ倒してその身体を路面に打ち付けさせ,うつ伏せになっている同人の服をつかんで強く揺さぶりながら拳をその背中付近に当てるなどの暴行を加えたが,同人が大声を上げるなどしたため,その目的を遂げず,その際,前記一連の暴行により,同人に加療約10日間を要する左側胸部挫傷等の傷害を負わせた。
 (証拠)
 (争点に対する判断)
 1 本件の争点
 本件の争点は,①第2について,被告人が被害者に対してカッターナイフを示した具体的な態様と,②第4について,被告人が被害者の胸部付近を拳で殴ったか否かである。
 2 争点①(第2でカッターナイフを示した具体的な態様)について
 被害者は,仰向けに寝転んだ状態で被告人を蹴るなどして抵抗していたところ,被告人が自分の右腰辺りに回り込んでしゃがみ込み,カッターナイフを出して「カッターを持ってるんだぞ,抵抗するな」などと脅してきた旨供述する。
 被害者は,一連の被害状況を具体的に供述している上,その内容に不自然,不合理な点はない。カッターナイフを示された状況について,刃物が怖かったのでその場面の記憶に間違いはないと述べており,捜査段階から一貫した供述をしていることからすると,被害者の証言が記憶違いによるものとは考え難い。また,嘘をつくような事情も認められない。
 よって,被害者の供述は信用できる。
 これに対して,被告人は,寝転んだ被害者に蹴られて後ろに下がった際,被害者も立ち上がり,2メートルくらい離れて向き合った状態になったときにカッターナイフを出して示した旨供述する。
 しかし,被告人の供述は,信用できる被害者の供述に反する上,被害者が抵抗している最中ではなく距離を置いて向かい合った状態になって初めてカッターナイフを出したとか,犯行現場が暗く見えにくいにもかかわらずカッターナイフを持っているとの発言はしていないなど不自然さが否めないものである。また,自身の記憶について,カッターナイフを示したのは本件だけなので印象に残っていると述べるものの,犯行状況に関する供述にはあいまいな点が多い上に,被告人が上記状況について供述をしたのは,少なくとも本件から3か月以上経過した後(上記第4の事件で初めて逮捕された平成30年3月5日以降)であることからすれば,その記憶の正確性には疑問がある。
 よって,被告人の供述は信用性を欠くといわざるを得ない。
 信用できる被害者の供述によれば,被告人は,仰向けに寝転んでいる被害者の右腰辺りにしゃがみ込んでカッターナイフを同人に示したことが認められる。
 3 争点②(第4で被害者の胸部付近を拳で殴ったか否か)について
 被害者は,うつ伏せの状態で大声で助けを呼んでいたところ,被告人に膝でお尻を押さえ付けられ,背中や体の側面部を全体的にぽこぽこぽこと十数回くらい連続して殴られたり,服を引っ張られてぐちゃぐちゃにされたりした,殴られたというのは,拳を見たわけではないが,背中に当たった硬いものの感覚から拳であると感じた旨供述する。
 被害者は,一連の被害状況を具体的に供述している上,その内容に不自然,不合理な点はない。被害直後から一貫した供述をしており,記憶違いによるものとは考え難く,嘘をつくような事情も認められない。
 よって,被害者の供述は信用できる。
 もっとも,被害者は,被告人が拳で殴っているのを直接見たわけではなく,背中に当たった硬いものの感覚から拳で殴られたと感じたと述べており,その程度等についても,ぼこんぼこん,ではなくて,ぽこぽこぽこぽこぽこ,という感じであった,殴りつつ服を引っつかみつつという感じであったと述べるものである。さらに,被害者の左側胸部の怪我は投げ倒されて左側面を打ち付けた際に負ったことが否定できないものであり,背中及び右側胸部には怪我が認められないことも併せ考えれば,被告人が被害者の尻を膝で押さえ付け,そのダウンジャケットをつかんで強く揺さぶりながら,その背中に拳を当てたにとどまる可能性も否定できない。
 よって,被告人が被害者の胸部付近を拳で殴ったとまでは認定できず,うつ伏せになっている被害者の服をつかんで強く揺さぶりながら拳をその背中付近に当てたとの認定にとどめることとする。
 なお,被告人は,被害者に自分の拳が当たった記憶はないと供述する一方で,被害者のダウンジャケットを引っ張ったり揺さぶったりした際に拳が当たったため被害者が殴られたと感じたのかもしれないとも述べており,必ずしも被害者の供述と矛盾する供述をしているわけではないから,被告人の供述が上記認定を妨げるものとはならない。
 (法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は平成29年法律第72号による改正前の刑法176条前段に,判示第2の所為は刑法180条,176条前段に,判示第3及び第4の各所為はいずれも同法181条1項(176条前段)にそれぞれ該当するところ,判示第3及び第4の各罪について所定刑中いずれも有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役5年に処することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 (量刑の理由)
 甲府地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 丸山哲巳 裁判官 望月千広 裁判官 種村仁志)