奥村は一切関与していません。
判示第1,5,6は包括一罪にしてもらってほしいところです。判例なので。
【ID番号】 06650200
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,強姦,児童福祉法違反被告事件
【事件番号】 福岡地方裁判所判決平成23年3月17日
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,
1 平成19年4月26日ころ,福岡市ab番地cの被告人方において,同児童をして,衣服の一部を着けないで胸部や陰部を露出させる姿態をとらせた上,これらの姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるビデオテープ1本を製造した
2 同年7月19日ころ,前記被告人方において,同児童をして,他人の性器を口淫及び手淫させる姿態をそれぞれとらせた上,これらの姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるビデオテープ1本を製造した
3 平成20年3月2日ころ,前記被告人方において,同児童をして,被告人の陰茎を口淫させる姿態,他人の性器を手淫させる姿態,衣服の一部を着けないで性器等を露出させる姿態をそれぞれとらせた上,これらの姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの,並びに,児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるビデオテープ1本を製造した
4 同年7月8日ころ,前記被告人方において,同児童をして,他人の性器を手淫させる姿態,他人から性器を手淫される姿態,全裸の姿態,衣服の全部又は一部を着けないで性器等を露出させる姿態をそれぞれとらせた上,これらの姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により,描写した児童ポルノであるビデオテープ1本を製造した
5 同年11月30日ころ,前記被告人方において,同児童をして,被告人の陰茎を口淫させる姿態,他人から性器を手淫される姿態をそれぞれとらせた上,これらの姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるビデオテープ1本を製造した
第2 自己が経営する英会話教室の当時の生徒であったBが13歳未満であることを知りながら,平成16年10月25日ころ,前記被告人方において,同女を姦淫した
第3 自己が経営する英会話教室の当時の生徒であったCが13歳未満であることを知りながら,平成15年6月5日,前記被告人方において,同女を姦淫した
第4 前記Cが満18歳に満たない児童であることを知りながら,平成16年9月21日,前記被告人方において,英会話教室の教師の立場を利用するなどして,同教室の当時の生徒であった同児童に被告人を相手方に性交させ,もって児童に淫行をさせる行為をした
第5 Dが18歳に満たない児童であることを知りながら,
1 平成20年10月20日ころ,前記被告人方において,同児童をして,被告人と性交する姿態,他人から性器を手淫される姿態をそれぞれとらせた上,これらの姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び他人が児童の性器等を触る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により,前記ビデオテープに描写し,当該児童に係る児童ポルノを製造した
2 同年12月1日ころ,前記被告人方において,同児童をして,被告人と性交する姿態,他人から性器を手淫される姿態をそれぞれとらせた上,これらの姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び他人が児童の性器等を触る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により,前記ビデオテープに描写し,当該児童に係る児童ポルノを製造した
3 平成21年1月29日ころ,前記被告人方において,同児童をして,被告人と性交する姿態をとらせた上,その姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって児童を相手方とする性交に係る姿態を視覚により認識することができる方法により,前記ビデオテープに描写し,当該児童に係る児童ポルノを製造した
第6 Eが18歳に満たない児童であることを知りながら,
1 平成20年5月5日ころ,前記被告人方において,同児童をして,被告人と性交する姿態,衣服の一部を着けないで性器等を露出させる姿態をそれぞれとらせた上,これらの姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により,前記ビデオテープに描写し,当該児童に係る児童ポルノを製造した
2 平成21年1月22日ころ,前記被告人方において,前記児童をして,被告人と性交する姿態をとらせた上,その姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をビデオテープに記録させ,もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により,前記ビデオテープに描写し,当該児童に係る児童ポルノを製造した
第7 別表記載のとおり,Fほか9名がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,平成19年7月1日ころから平成21年4月9日ころまでの間,いずれも前記被告人方において,前記Fほか9名の児童らをして,被告人と性交する姿態,他人から性器を手淫される姿態及び他人の性器を口淫させる姿態をそれぞれとらせた上,それらの姿態をビデオカメラで撮影し,その動画画像をそれぞれビデオテープに記録させ,もって児童を相手方とする性交に係る姿態及び他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により,それぞれビデオテープに描写し,当該児童に係る児童ポルノをそれぞれ製造した
ものである。
(補足説明)
(2) 本件各強姦(判示第2,3の事実)に係る違法性阻却の主張について
弁護人は,各児童は,性交の意味を十分に理解して真の性的自己決定の下,被告人との性交に及んだのであるし,被告人は,児童らの人格形成のための指導の一環として,性交に及んだものであるから,本件各強姦は,違法性が阻却される旨主張する。
しかしながら,法は,13歳未満の女子については,たとえその合意があったとしても強姦の成立を認めている。これは,13歳未満の女子は人格的にも性的にも未成熟であるから,性に関する自己決定をその自由な意思に委ねることが不適切であり,成熟した成人がそのような女子を自らの性的欲望の対象と扱うことは性的搾取行為であるとされていることによる。したがって,本件各強姦について,各被害者が真の性的自己決定をしたとの弁護人の主張が違法性阻却を根拠づけるとは考えられない上,各被害者は,当時12歳と11歳であり,人格的にも性的にも未成熟であり,実際にも真の性的自己決定が可能であったとは到底認められない。また,被告人は自ら性行為に及んでいて自らにも性的満足を得る目的があったと認められる。
そうすると,弁護人の主張は明らかに失当であり,被告人の行為につき違法性が阻却されないことは明白である。
(3) 本件児童福祉法違反(判示第4の事実)について
弁護人は,本件児童福祉法違反について,被告人が被害児童と性交したことは,被害児童の真の自己決定に基づくから,「児童に淫行をさせる行為」には当たらないか,被告人の行為は違法性が阻却される旨主張する。
しかしながら,被害児童の検察官調書(甲14)によれば,被害児童は,被害児童の母親が被告人には特別な力があると信じて被告人の英会話教室に通わせるようになり,10歳ころから被告人の自宅で催される勉強会に参加するようになり,被告人の指示の下,写真撮影やビデオ撮影され,小学校4年生のころから被告人に性交や性交類似行為を繰り返しされていたことが認められ(なお,被害児童は,判示3の強姦の被害にも遭っている),以上によれば,被害児童に対し上位者である被告人が事実上の影響力を及ぼして淫行するよう働きかけ,本件児童福祉法違反に及んだことは明らかである。また,上記の経緯に加え,被害児童が当時13歳であったことにかんがみれば,被害児童が真に性的自己決定が可能であったとはおよそ認められない。弁護人の主張は失当であり,被告人の行為につき違法性が阻却されないことは明白である。
2 本件児童ポルノ製造行為(判示第1の1ないし5,第5の1ないし3,第6の1及び2,第7の別表1ないし18の事実)について
(1) 公訴権濫用の主張について
弁護人は,性被害があったとして告訴をしなかった児童らに係る児童ポルノ製造行為を検察官が起訴したことは,児童のプライバシー権,性的自己決定権等を侵害する上,13歳未満の児童らについては強姦罪や強制わいせつ罪が親告罪とされている法の趣旨を潜脱するものであるから,訴追裁量権を逸脱,濫用した違法な起訴であり,公訴棄却されるべきであると主張する。
しかしながら,児童ポルノ製造行為は親告罪とされてはいないから,弁護人の主張は明らかに失当である。
そもそも当該行為が犯罪とされ非親告罪とされているのは,当該行為が当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず,かつ,流通の危険性を創り出す点で当罰性がある上,これを親告罪とすると,示談等による告訴の取り下げをはかることにより,当該児童の保護,児童を性欲の対象とする風潮を抑制し,児童一般の性的搾取行為からの保護を十分に図ることができなくなるおそれがあるためと考えられ,その合理性は,当該児童のプライバシー権,性的自己決定権等を考慮しても,否定されない。また,児童ポルノ製造行為と強姦罪や強制わいせつ罪とは,構成要件,法定刑を明らかに異にしているから,13歳未満の告訴のない児童に係る児童ポルノ製造行為を起訴することが,強姦罪や強制わいせつ罪が親告罪とされていることの潜脱にならないことも明らかである。弁護人の主張は失当である。