児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強姦既遂を強姦未遂に落とした事例(広島高裁H22.3.18)

一審判決はこれですね。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100301153944.pdf
 原判決の事実関係はいい加減ですね。
 何十件もあって、処断刑期の上限に決まっているから、全部既遂にしたような感じです。

第1 本件控訴の趣意及び答弁
   本件控訴の趣意は,弁護人新川登茂宣作成の控訴趣意書及び控訴趣意の補充書(ただし,控訴趣意の補充書第2の1及び2(2)を除く。)に,これに対する答弁は,検察官村瀬正明作成の答弁書(ただし,第2の2を除く。)にそれぞれ記載されているとおりであるから,これらを引用する。
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2) 論旨?について
    捜査状況報告書(原審検甲116)によれば,検察官において,被告人撮影に係るビデオテープをテレビ画面に映し出し,被告人が原判示第7の2別表7−2番号16の開始時間午後6時31分ころから終了時間午後6時42分ころの間に当該被害女児を姦淫したことを確認し,特定したとされている。しかし,DVD−R(当庁平成22年押第1号符号6)によっても,上記の犯行が行われたとされる時間に,自動車内で,被告人において,当該被害女児に自己の陰茎を口淫させるなどしている状況が撮影されていることが認められるのみであり,被告人において,自動車内で当該被害女児を座席に仰向けに寝かせてその上に覆い被さるなどし,姦淫したことを確認することはできず,なお,画像を確認する内容の捜査状況報告書(同検甲112)によっても,姦淫行為は確認されておらず,被告人においても,上記時間帯に当該被害女児を姦淫したことを認める供述はしていない(警察官調書(同検乙26))のであり,上記の時間に被告人が当該被害女児を姦淫したと認めるに足りる証拠はなく,被告人が原判示第7の2別表7−2番号16の開始時間午後6時31分ころから終了時間午後6時42分ころの間に当該被害女児を姦淫したとの事実を認定した原判決には事実の誤認があるといわざるを得ない。
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しかし,原判示第1別表1番号5の犯行については,被告人は,上記のとおり,原審公判廷において,既遂に達したか否かよく分からない旨供述しているところ,DVD−R(当庁平成22年押第1号符号8)によれば,被告人において,「今日は入りにくいわ」「硬い」などと言いつつ,陰茎を手でしごくなどし,陰茎を当該被害女児の陰部に擦りつけるなどして挿入を試みている状況は確認できるものの,陰茎を当該被害女児の性器に一部なりとも没入して姦淫にまで至ったことはこれを十分に確認することができない。この点,上記画像を確認する内容の捜査状況報告書抄本(原審検甲167)によれば,「被告人が自己の陰茎をしごき,さらに自分の唾を亀頭に塗り付ける状況が認められる。その後,さらに左手中指を被害女児の性器に挿入しながら,陰茎をしごく。被告人が自己の陰茎を右手で持ち,午後4時14分25秒から午後4時14分30秒の間に,被告人が陰茎を被害女児の性器に挿入しようとし,被告人の亀頭部分が被害女児の性器に没入する。直ぐに被告人の亀頭が被害女児の性器外へ出る」ことを確認したと記載されているものの,その確認結果によっても,挿入を試みるに当たり陰茎を勃起させる行為をしなければならない状況にあり,没入したとされる陰茎の亀頭部分が直ぐに被害女児の性器外へ出たとされており,また,被告人も,警察官調書抄本(同検乙43)において,「午後4時12分20秒の場面で,私の陰茎の一部,陰茎の先端部分が被害女児の陰部に入っている状況が撮影されている映像の確認をした」と供述しているにとどまり,上記のとおり,犯行を録画したDVD−Rによって陰茎の没入が確認できない以上,姦淫の事実を認めることはできないといわざるを得ず,被告人の犯行は強姦未遂の限度で認定できるにとどまるというべきであり,原判決には事実の誤認があるといわざるを得ない。