児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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師弟関係の準強制わいせつ否認事件(浜松支部H22.5.24)

静岡地方裁判所浜松支部判決平成22年5月24日
 主   文
 被告人は無罪。
       理   由
1 本件の概要
 (1) 本件公訴事実
   本件公訴事実は,「被告人は,平成19年12月中旬ころの午後7時ころ,浜松市西区(以下略)浜松市立○○中学校北校舎3階相談室東において,A(以下「A」という。当時14年)に対し,「俺は乳がんかどうか分かるから,しこりがあるかどうかせっかくだから診てやる。服の上からだと分からないから脱げ。」と申し向けて,同人が乳がん検査と誤信し,抗拒不能にあることに乗じて,同人の両乳房を右手のひらで弄び,もってわいせつな行為をしたものである。」というものである。

5 結論
  本件においては,Aが当時14歳でその判断能力が未熟であったことや被告人が医師の資格を有していないことにも照らすと,Aから依頼を受けたとの被告人の言い分を前提としても,被告人の判断は,軽率というほかなく,被告人においては,今一度,自己の行為が,教育者として誤りがなかったのかを省みる必要がある。そして,上記のとおり,被告人供述にも信用できない部分が認められ,当裁判所も,Aが虚偽の被害申告をしたとまで認めるものではない。
  しかしながら,本件の証拠構造上,決め手となる物証がなく,A証言の信用性判断に当たっては特に慎重でなければならない中で,Aが被害を誇張していたり,記憶が減退している可能性が否めないという事情を指摘できる一方,被告人供述を排斥するには合理的疑いが残る部分もあって,「疑わしきは被告人の利益に」の原則に従って検討を進めた結果,準強制わいせつ罪の成立を認めることにはなお合理的疑いを容れる余地があるとの判断に至ったものである。
  以上の次第で,本件公訴事実について犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により,被告人に対し無罪の言渡しをする。
(求刑−懲役2年)
  平成22年6月15日
    静岡地方裁判所浜松支部刑事部
        裁判官 長谷川秀治