実刑事案なので法令適用も総点検してもらいました。
結局科刑上一罪になるというのですが、それでも不利益主張だと言われました。
原判決 ４項提供罪（不特定多数）の犯罪事実
第３
かねてから，インターネット上に，児童ポルノ等のＤＶＤを販売する旨掲載したホームページを開設していたものであるが，
１ 平成年１月５日，前記ホームページを閲覧してその購入を申し込んできたＡに対し，児童を相手方とする又は児童による性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した画像を記録した児童ポルノであり，かつ，男女の性器等を露骨に撮影した画像を記録したわいせつ図画であるＤＶＤ１枚，及び女性の性器等を露骨に撮影した画像を記録したわいせつ図画であるＤＶＤ１枚を，所在の郵便事業株式会社支店に代金引換郵便により発送し，同月６日，同支店において，情を知らない郵便係員をして，これを前記Ａに配達させるとともに，同係員を介して，代金１万円を受領し，もって不特定の者に児童ポルノを提供するとともに，わいせつ図画を販売し
２ 平成年１月１９日，前記Ａに対し，児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した画像を記録した児童ポルノであり，かつ，男女の性交場面等を露骨に撮影した画像を記録したわいせつ図画であるＤＶＤ１枚，及び男女の性交場面等を露骨に撮影した画像を記録したわいせつ図画であるＤＶＤ１１枚を，前記郵便局から前記支店に代金引換郵便により発送し，同月２０曰ころ，同支店において，情を知らない郵便係員をして，これを前記Ｎに配達させるとともに，同係員を介して，代金１万９８００円を受領し，もって不特定の者に児童ポルノを提供するとともに，わいせつ図画を販売し
（法令の適用）
罰条
第３のうち児童ポルノ提供の点
包括して児童買春，児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律７条４項前段，２条３項
第３のうちわいせつ図画販売の点
包括して刑法１７５条前段
科刑上一罪の処理
第３
刑法５４条１項（観念的競合)，１０条（重い児童ポルノ提供の罪の刑で処断）
名古屋高裁h22.10.26
２原判示第３の１及び２の事実のうち児童ポルノ提供罪の関係について
論旨は，原判示第３の１及び２の事実のうち各児童ポルノ提供罪は併合罪であるから，これを包括一罪とした原判決には法令適用の誤りがある，というのである。
しかしながら，論旨は被告人に不利益な主張といわざるを得ず，このことは刑訴法４０２条により控訴審において被告人に原判決より重い刑を言い渡すことができないことを考慮しても同様というべきである。
したがって，上記の各罪が併合罪であることを主張する論旨は，控訴の利益を欠き不適法であるから採用するに由ないものである。
なお，関係各証拠によれば，原判示第３の１及び２の犯行の経緯について，以下の事実が認められる。
すなわち，被告人は，平成年１月５日から同月２０日ころまでの間に，インターネット上で児童ポルノ等のdvdを販売する旨を掲載した被告人のホームページを閲覧して連絡してきたＡに対し,14枚組のＤＶＤ１セットを２万9800円で販売すると返事をしたところ，ｎから，詐欺の被害に遭っているので全部はいきなり購入できない，最初の取引では１万円分だけを購入したいと言ってきたため，上記セットのうち児童ポルノであるＤＶＤ１枚を１万円で売る旨を連絡し，Ａからこれに応じる旨の返事があったことから，結局，上記セットのうち２枚のＤＶＤを送付して原判示第３の１の犯行に及び,その後，Ａから，上記セットの残り１２枚を１万9800円で販売してほしいとの注文を受け，原判示第３の２の犯行に及んだ，というのである。
このような経緯に照らせば，原判示第３の１及び２の児童ポルノ提供行為は，被告人において，不特定の者に児童ポルノの販売を申し入れ，これに応じた同一の相手方に，当初から，最終的に原判示第３の１及び２に係るＤＶＤ１４枚をすべて売却することを期待し，その期待どおり，順次，５売却，提供がされたものであるから，包括して児童買春法７条４項前段，２条３項に当たる，とした原判決の法令適用に誤りはないというべきである。
論旨は理由がない。
