児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

中尾佳久 前最高裁判所調査官「ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否」ジュリスト1549号

 ひそかに製造というのは、法文上は撮影者以外の者による単純複製行為も含みうるところ、最決R1.11.12で、盗撮者・撮影者が複製する場合だけが処罰されると判示した点に意味があると考えています。

Ⅱ、審理の経過
1審において, 弁護人は、事実関係を争わず, 被告人は懲役2年, 4年間執行猶予,付保護観察に処せられた。

被告人は控訴し・理由不備訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り,事実誤認,量刑不当と
多岐にわたる主張をしたところ, 原判決は,職権判断として, 1審判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたから破棄を免れないとした上で,①事実について児童ポルノ製造罪は成立しないとの所論に対しては, 「ひそかに同法2条3項3号の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に描写した(温泉施設の盗撮がこれに当たること明らか)者が当該電磁的記録を別の記録媒体に保存させて(被告人方での外付けハードディスクへの保存がこれに当たること明らか)児童ポルノを製造する行為は同法7条5項に当たる」との判断を示し,被告人を懲役2年,4年間執行猶予,付保護観察に処した。
これに対し,被告人は,①事実について児童ポルノ製造罪は成立しないなどと主張して上告した。


Ⅲ5項製造罪の立法趣旨等
5項製造罪は,盗撮により児童ポルノを製造する行為が,通常の生活の中で誰もが被害児童になり得ることや,発覚しにくい方法で行っている点で巧妙であることなど, その行為態様の点において違法性が高く, 当該児童の尊厳を害する行為であるとともに, 児童を性的行為の対象とする風潮が助長され,抽象的一般的児童の人格権を害する行為であり,流通の危険性を創出する点でも非難に値することから,新設されたものである。
5項製造罪においても, 4項製造罪と|司様,複製の問題が生じることが予想されたところ,立法関与者の解説を見ると, 5項製造罪は,手段の限定がされているため, 盗撮により製造された児童ポルノを後に複製する行為は,基本的に同項の処罰対象ではないと考えられるが,少なくとも,撮影者本人による「製造」として予定される一連の行為までもが5項製造罪の対象から除外されるものではないと考えられるとの見解が示され, 平成18年判例が紹介されている(坪井麻友美「児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」曹時66巻11号3045頁)。

Ⅳ本決定について
本決定は, 「ひそかに児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が, 当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為は, 同法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たる」と判示し, 原判決の判断を是認しているが, 平成18年判例と同じような表現を用いていることから, 同判例と同様盗撮をして製造を行った者が, その電磁的記録を別の記録媒体に複写するなどして二次的製造行為に及んだ場合には, 「ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製造した」と法的に評価できるとして, 5項製造罪の成立を認めたものと思われる。
本決定は, その理由を示していないが, 盗撮行為をする者については,撮影後盗撮データを保存管理して自己利用するため. 当該盗撮に係る電磁的記録を他の記録媒体にコピーするなどして管理することが当然想定されることなどを考盧したのではないかと考えられる。
5項製造罪は, 平成18年判例後の法改正で新設されたものであるが, 4項製造罪と同様の論点が残る形の立法がされていた。
このことを踏まえると,本決定は, 5項製造罪に関する法令解釈を示したものとして実務上重要なものと考えられる。