16歳未満の者に対する不同意性交罪(177条3項)と児童買春罪は観念的競合か
対償供与約束実行行為説によれば、不同意性交罪(3項)の実行行為との重なり合いをみると「性交等」しか重ならない。
| - | 不同意性交罪(3項) | 児童買春罪 |
| 対償供与約束 | 児童買春罪の実行行為 | |
| 基く性交等 | 不同意性交罪の実行行為 | 児童買春罪の実行行為 |
対償供与約束というのは、児童買春罪の本質的要素である
実質的に見ても、児童との性交等だけでは国法上は処罰されない(せいぜい軽い青少年条例違反に留まる)ところ、児童買春罪として重く処罰されるゆえんは、対償を伴う点すなわち「児童と性交する対価」が供与・約束される点に求めざるを得ない。東京高裁H15.5.19でも指摘されている。
東京高裁H15.5.19
ところで,児童買春周旋罪が成立するためには,周旋行為がなされた時点で,被周旋者において被害児童が18歳未満の者であることを認識している必要があると解するのが相当である。すなわち,児童買春周旋罪は,児童買春をしようとする者とその相手方となる児童の双方からの依頼又は承諾に基づき,両者の間に立って児童買春が行われるように仲介する行為をすることによって成立するものであり,このような行為は児童買春を助長し,拡大するものであることに照らし,懲役刑と罰金刑を併科して厳しく処罰することとしたものである。このような児童買春の周旋の意義や児童買春周旋罪の趣旨に照らすと,同罪は,被周旋者において児童買春をするとの認識を有していること,すなわち,当該児童が18歳未満の者であるとの認識をも有していることを前提にしていると解されるのである。実質的に考えても,被周旋者に児童買春をするとの認識がある場合と,被周旋者が前記のような児童の年齢についての認識を欠く結果,児童買春をするとの認識を有していない場合とでは,児童買春の規制という観点からは悪質性に差異があると考えられる。もっとも,このように解することについては,客観的には児童の権利が著しく侵害されているのに,周旋者が児童の年齢を18歳以上であると偽ることにより児童買春周旋罪の適用を免れることになって妥当ではないとの批判も考えられるが,このような場合でも周旋者を児童淫行罪や売春周旋罪により処罰をすることが可能であるし(なお,児童の年齢や外見によっては,そもそも18歳以上であると偽ることが困難な場合も考えられる。),前記のような児童買春の周旋の意義や児童買春の規制という観点からすると,被周旋者において,前記のような児童の年齢についての認識を有しているか否かは,やはり無視することができない事情である。
研修(令7,第919号)判例紹介
判例紹介
被告人が、対償を得ることで性交等をさせることを明確かつ積極的に同意している16歳未満の被害児童と性交した場合であっても、刑法177条3項、1項規定の不同意性交等の罪及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条、2条2項1号規定の児童買春罪が成立する旨判示した事例(福岡高判令和6年5月17日)第1 事案の概要及び争点等
本件は、同種前科により刑の執行猶予中の被告人本件は、同種前科により刑の執行猶予中の被告人(当時49歳)が、令和5年8月11日、ラブホテルにおいて、インターネット上で知り合った被害児童(当時13歳)が16歳未満であり、かつ、その生まれた日よりも5年以上前に自身が生まれたことを知りながら、現金1万円の対償の供与を約束して、被害児童と性交し、もって児童買春するとともに16歳未満の者に対し性交等をしたという事案である。
本件において、被害児童は、小遣い欲しさにソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上で知り合った男性と性交して対価として現金の供与を受けるといういわゆる「パパ活」を行っていた。
第一審において、被告人及び弁護人Aは、公訴事実を争わなかったところ、第一審判決では、公訴事実を関係証拠により認定し(なお、不同意性交等罪と児童買春罪の双方が成立し、両者の罪数関係は、観念的競合であると認定していた。)、年齢が大きく隔たっている被害児童の判断能力の未熟さに付け込んで性的侵害に及んだこと、暴行を伴わず、被害児童が小遣い欲しさから接触を求めてくるのに応じた類型ではあるが犯情が芳しくないこと、同種前科の執行猶予中の犯行であること、被害児童の親に慰謝料を支払い示談が成立したことなどを考慮して、懲役4年の実刑判決を宣告した(福岡地判令和6年2月15日)