児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

風呂場盗撮・脱衣場盗撮・教室着替え盗撮と「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているもの」

 撮影対象が16歳以上の場合に適用される法2条1項イには「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの」という除外要件がある。
 撮影を許諾していなくても、「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているもの」であれば、性的姿態撮影罪は不成立となる。
 「人が通常衣服を着けている場所」というのは場所の属性であって、状態ではない。
 風呂場・脱衣場は、脱ぐ場所だから、「人が通常衣服を着けている場所」に当たらないから、性的姿態撮影罪が適用される。
 教室とか会議室とか食堂で臨時に更衣する場合は、場所の属性としては、「人が通常衣服を着けている場所」に当たるから、性的姿態撮影罪が適用されない可能性がある。そういう更衣につかう実態があるとか言って、「人が通常衣服を着けている場所」に当たらないというしかないが、それだと「通常」という字句が無意味になる。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
(性的姿態等撮影)
第二条次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

浅沼雄介ほか「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律について(1)」法曹時報76巻2号(2024年2月号)52頁
【イ 露出等による撮影対象からの除外
(ア) 撮影行為の対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら性的な姿態を露出するなどした場合については、保護法益を放棄したと評価できると考えられる。
そこで、本項第 1号から第 3号までにおいては、「性的姿態等」から「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているもの」を除いた「対象性的姿態等」が処罰対象となる撮影行為の客体とされている】

法務省逐条説明
他方、性的姿態等のうち、撮影対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れる状況にあることを認識しながら自ら露出し又はとっているものについては、
○衣服を着けるなどしていれば見られないにもかかわらず、あえて自ら露出し又はとったものである以上、当該撮影対象者が、保護法益を放棄している場合があると考えられること
○性的姿態等が不特定又は多数の者の目に触れる状況であることを認識しながら自ら露出し又はとっている者が、撮影行為までも許容する意思なのか、その場で見られることだけしか許容しない意思なのかは、外形的・客観的に区別が困難であり、撮影対象者の内心で区別するほかないが、そのような内心のみで犯罪の成否が分かれることとすると、処罰の外延が不明確になると考えられること
から、一律に撮影対象から除外することとしている(注1 。
注1)本条第1項第4号に掲げる撮影行為については、性的な姿態の撮影行為に応じるかどうかについて有効に自由な意思決定をする能力が備わっていないと考えられる若年者を対象とするものであり、撮影対象者による保護法益の放棄を観念することができず、こうした者を対象とする撮影行為は、その者の自由な意思決定に基づくものとはいえず、保護法益を侵害すると考えられることから、撮影対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れる状況にあることを認識しながら自ら露出し又はとっているものも撮影対象から除外しないこととしている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fae43191ff35a42d253ee4b55fa94fe200d07af3?page=1
児童買春・児童ポルノ法違反や性的姿態等撮影などの罪に問われたのは、事件当時・大学助教の男(41)です。
判決によりますと、男は23年、当時理事を務めていた団体の研修中に訪れた、広島県江田島市の宿泊施設で、女性浴場に侵入し、脱衣所のロッカーに設置した携帯電話で撮影、さらに広島市内の宿泊施設でも女性浴場にカメラを設置し女性の体を撮影するなどしました。