児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪・映像送信要求罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

13歳未満の児童に裸画像を要求して、撮影送信させ保存した場合の、不同意わいせつ罪(176条3項)    児童ポルノ製造罪(7条4項)    面会要求罪(182条3項2号)    性的姿態撮影罪(2条1項4号)の重なり合い。

13歳未満の児童に裸画像を要求して、撮影送信させ保存した場合の、不同意わいせつ罪(176条3項)    児童ポルノ製造罪(7条4項)    面会要求罪(182条3項2号)    性的姿態撮影罪(2条1項4号)の重なり合い。

 要求罪と、他罪は牽連犯になるかな。

 不同意わいせつ罪(176条3項)    児童ポルノ製造罪(7条4項)   性的姿態撮影罪(2条1項4号)は観念的競合になるかな

 

  不同意わいせつ罪(176条3項) 児童ポルノ製造罪(7条4項) 面会要求罪(182条3項2号) 性的姿態撮影罪(2条1項4号
別紙記載の被害者(当時●歲)13歳未満の者であることを知りながら、 年齢と年齢知情

対象年齢は他罪と必ずしも重ならない
年齢と年齢知情

対象年齢は他罪と必ずしも重ならない
年齢と年齢知情

対象年齢は他罪と必ずしも重ならない
年齢と年齢知情

対象年齢は他罪と必ずしも重ならない
正当な理由がないのに       正当な理由がないのに
日付、市内の被告人方において、被告人が使用するスマー卜フォンのアプリケーションソフト「××」の通話機能を利用して、前記被害者に対し、 犯行日時場所 犯行日時場所 犯行日時場所 犯行日時場所
前記被害者に対し、「おっぱい見せて マンコ見せて」などと申し向け、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信するよう要求し   児童ポルノ法2条3項3号所定の)姿態をとらせて(実行行為) 児童ポルノ法に比べると、下着で足りる・姿態をとらせなくていい・「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の要件は不要の点で、対象は広い
一性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
 
その頃、大阪府内の同人方において、同人に乳房又は陰部が露出した姿態   要求行為で既遂になるから、これ以降は関係ない 「性欲を興奮させ又は刺激するもの」などの要件がなく、児童ポルノ製造より広い。かならずしも

イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)
上記の姿態をとらせ わいせつ行為(実行の着手) 製造罪の実行行為    
、これをそれぞれ同人のスマートフォンの写真撮影機能を利用して撮影させた上、 わいせつ行為 法文は「製造した」となっている。「撮影させた」場合も含むのか 間接正犯の主張・立証が必要   撮影した時点で着手があり、既遂となる

法文は「撮影した」となっている。「撮影させた」場合も含むのか 間接正犯の主張・立証が必要
その画像データ52点を、同スマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに前記「××」を利用して送信させ、 わいせつ行為ではない 姿態をとらせて製造罪に関係があるのか。
撮影により提供目的製造をさせ、送信により提供させているから、社会見解上2個になっている
  性的姿態撮影罪は撮影で既遂になっているから、この部分は関係ない

(日時)被告人方において、受信した前記画像データ52点を被告人が使用する別のスマートフォンに送信して

わいせつ行為ではない 記録は製造罪の実行行為    
スマートフォンの内蔵記録装置に記録させて保存し、 わいせつ行為ではない 記録は製造罪の実行行為    

 

 

※最決h21.10.21の罪数判断の手法(児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪とは併合罪)は、別の罪名の場合にも及ぶ
   最決h21.10.21は、児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪の関係とを併合罪とした判例である。
      最決h21.10.21
      所論は,上記両罪は併合罪の関係にあるから,児童ポルノ法違反の事実については,平成20年法律第71号による改正前の少年法37条によれば,上記家庭裁判所支部は管轄を有しない旨主張する。
      そこで,検討するに,児童福祉法34条1項6号違反の罪は,児童に淫行をさせる行為をしたことを構成要件とするものであり,他方,児童ポルノ法7条3項の罪は,児童に同法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造したことを構成要件とするものである。本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,
      一部重なる点はあるものの,
      両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,
      両行為の性質等にかんがみると,
      それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえる
から(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照),両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。

      判例タイムズ1326号134頁 最高裁判所第1小法廷 平成19年(あ)第619号 児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件 平成21年10月21日
      匿名解説
             4 刑法54条1項前段の観念的競合の要件である「一個の行為」に関しては,最大判昭49.5.29刑集28巻4号114頁,判タ309号234頁が,「一個の行為とは,法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価をうける場合をいう」としているが,具体的な当てはめについては,必ずしも容易でなかった面もあったように思われる。数個の罪名に触れる行為が完全に重なっていれば,これを「一個の行為」と解すベきことについては異論はないであろうし,行為の重なり合いが「一個の行為」性の判断において重要な要素であることも間違いないと思われる。しかし,上記大法廷判決に関しても,行為の重なり合いは「一個の行為」であるための必須の要件とは解されていなかったと指摘されていたのであり(本吉邦夫・昭49最判解説(刑)113頁,金築誠志・昭58最判解説(刑)322頁等参照),同判例における酒酔い運転と業務上過失致死のように,継続犯とその一時点で成立する他の罪については,行為に重なり合いがあるともいえるものの,「一個の行為」ではないとされるのが通常である。また,最一小判昭58.9.29刑集37巻7号1110頁,判タ509号88頁においては,覚せい剤取締法上の輸入罪と関税法上の無許可輸入罪について,それぞれの実行行為は重ならないと考えられるのに,「一個の行為」であることを認めている(同様の関係は,戸別訪問の罪とその機会に行われた各種違法選挙運動の罪が観念的競合とされていることについても存在するとの指摘もある。)。
        本件で問題となった3項製造罪については,「姿態をとらせ」の要件の意義をどう理解するかによって,同罪と児童淫行罪等との行為の重なり合いの判断も異なってくる可能性もあるが,本決定は,「被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの」としており,行為の重なり合いがあること自体は認めている(本決定が「姿態をとらせ」を構成要件として規定された行為ととらえていることは明らかである。)。その上で,
      「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
      「両行為の性質等」
      を挙げて,結論として両罪は併合罪であるとの判断をしており,「一個の行為」であるかの判断における考慮要素として,興味深い判示であるように思われる。実際に生じ得る事例を考えてみても,前記最三小決平成18年によれば複製行為についても3項製造罪を構成し得ることになるから,児童淫行罪等と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠けることがあり,一事不再理効の及ぶ範囲等を考えても,併合罪説の方が妥当な結論を導くことができるように思われる。

 

最高裁判例解説刑事篇平成21年度496頁 平成19年(あ)第619号

 

菅原暁 最新・判例解説(第3回)児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせる罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例[最高裁判所第一小法廷平成21.10.21決定] 捜査研究720号78頁


  これは観念的競合の判例最判s49)の解釈であるから、その判旨は、類推なんかではなく、当然に他の罪名の場合にも及ぶ。
   後述するように
     行為の重なり合いの程度
     「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
     「両行為の性質等」
     一事不再理効の及ぶ範囲
  の各点は、強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪とを併合罪とする高裁判決の理由付けに頻出しており、実際にも最決h21.10.21が観念的競合か併合罪かの重要な要素となっている。