「同条の文言上,弁護人が主張するような限定はない。そして,わいせつの目的で成人を誘拐した場合に犯罪が成立し,未成年者の場合は刑罰が加重される趣旨は,被拐取者の性的自由に対する侵害の危険から被拐取者を保護する点にあるところ、このことは,被拐取者の承諾を得てわいせつ行為をする意図であったかどうかで差異はない。 「わいせつの目的」は,被拐取者をわいせつ行為の主体又は客体とする目的を広く含むものと解すべきである。 」ということだと、青少年条例違反(淫行)目的とか、児童ポルノ製造目的でも牽連犯になりますですよね。
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(罪となるべき事実)
被告人は,令和3年5月9日当時,■(■以下「被害児童」という。)が通学する■学校の教諭であったが,わいせつな行為をする目的で,被害児童を誘拐しようと考え,同日午後2時57分頃から同日午後3時6分頃までの間,■(省略)■において,被害児童に対し,勉強を教える旨申し向けて同行するよう誘惑し,被害児童をしてその旨決意させ,同日午後3時10分頃,■(省略)■において,自己が運転する自動車に被害児童を乗車させ,同車を発進させて,その支配下に置き,もってわいせつ目的で被害児童を誘拐した上,同日午後3時30分頃から同日午後5時20分頃までの間に,■(省略)■において,被害児童に対し,その腕をつかんで仰向けに引き倒すなどした上,その着衣内に手を入れて直接胸をもみ,さらに,その膣内に指を入れるなどし,もって,強いてわいせつな行為をした。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
・罰条
わいせつ誘拐の点 刑法225条
強制わいせつの点 刑法176条前段
・科刑上一罪 刑法54条1項後段,10条(重いわいせつ誘拐の罪の刑で処断)
・執行猶予 刑法25条1項
・訴訟費用不負担 刑訴法181条1項ただし書
(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は,刑法225条の「わいせつの目的」は,強制わいせつ又はこれに準ずるような被拐取者の意思に反してわいせつの行為を行う目的に限定すべきであるとして,被告人は,着手時に,被害児童の承諾を得てわいせつ行為をする意図であったから,わいせつ誘拐罪は成立しないと主張する。
しかし,同条の文言上,弁護人が主張するような限定はない。そして,わいせつの目的で成人を誘拐した場合に犯罪が成立し,未成年者の場合は刑罰が加重される趣旨は,被拐取者の性的自由に対する侵害の危険から被拐取者を保護する点にあるところ、このことは,被拐取者の承諾を得てわいせつ行為をする意図であったかどうかで差異はない。
「わいせつの目的」は,被拐取者をわいせつ行為の主体又は客体とする目的を広く含むものと解すべきである。
本件では,被告人が,誘拐に着手する時点で,被害児童の体を触るなどのわいせつな行為をする目的を有していた事実は,上記各証拠により優にこれを認めることができ,被告人及び弁護人も自認している。
したがって,被告人にはわいせつ誘拐罪が成立する。
(量刑の理由)
(検察官小嶋陽介,国選弁護人成合陶平 各出席)
(求刑 懲役4年6月)
令和4年2月2日
宮崎地方裁判所延岡支部
裁判長裁判官 大淵茂樹 裁判官 中出暁子 裁判官 高木航