強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪については観念的競合説と併合罪説が拮抗していますが、わいせつ目的誘拐罪のわいせつというのは強姦や売春を含む広い概念ですので、児童ポルノ製造も含むと思われます。
結局この場合の罪数処理は
わいせつ目的誘拐と強制わいせつ罪(176条後段)が牽連犯
わいせつ目的誘拐と児童ポルノ製造罪が牽連犯
となって、かすがい現象で科刑上一罪になると思われます。
裁判例をみかけます。
山口地裁H21.2.4
(法令の適用)
罰条
判示第1
児童ポルノ製造の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条 3項,1項 (2条3項3号)
強制わいせつの点 刑法176条後段
判示第2
わいせつ目的誘拐の点 刑法225条
児童ポルノ製造の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及ひや児童の保護等に関する法律7条 3項, 1項 (2条3項3号)
強制わいせつの点 刑法 176条後段
科刑上一罪の処理
判示第1 刑法54条1項前段, 1 0条(重い強制わいせつ罪の刑で処断)
判示第2 刑法54条1項前段,後段,1 0条(児童ポルノ製造と強制わいせつは, 1個の行為が 2個の罪名に触れる場合であり,わいせつ目的誘拐と児童ポルノ製造及びわいせつ目的誘拐と強制わいせつとの間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を1罪として最も重いわいせつ目的誘拐罪の刑で処断)
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文, 10条(重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
平成21年2月4日
第二二五条(営利目的等略取及び誘拐)
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
条解刑法
わいせつ目的
被拐取者に対して自らわいせつ行為をし,又は第三者をしてわいせつ行為をさせる目的,あるいは被拐取者にわいせつ行為をさせる目的をいう。
わいせつ行為の意義については, 174条注3. 176条注4参照。ただし, 176条と異なり,わいせつ行為には姦淫も含まれる(名古屋高金沢支判昭32・3・12高集102-157)。
したがって,被拐取者に売春をさせる目的もわいせつ目的に当たる。
わいせつ誘拐など 容疑で28歳 再逮捕=石川
2016.08.05 読売新聞
県警は4日、住所不定、被告(28)=わいせつ誘拐罪などで起訴=を、わいせつ誘拐、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)などの容疑で再逮捕した。発表によると、被告は2月15日午後3時頃、県内の路上で、通りかかった小学生女児をアパートの空き室に連れ込んで誘拐し、粘着テープで後ろ手に縛ってわいせつな行為をし、スマートフォンで撮影した疑い。女児にけがはなかった。被告は「事実に間違いない。女の子に興味があった」と話しているという。