児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

わいせつ目的誘拐+逮捕監禁罪と強制わいせつ罪(176条後段)・強制性交未遂は科刑上一罪だが、その際の児童ポルノ製造は併合罪(名古屋地裁R6.9.27)

 わいせつ目的には売春させるとかも含み、わいせつ誘拐と児童ポルノ製造は牽連犯になるという裁判例(山口地裁h210204)があるから、結局、判示第2は科刑上一罪になるという主張ができる。

【文献番号】25621142
強制性交等(変更後の訴因 強制性交等致傷)、強制わいせつ、わいせつ誘拐、逮捕監禁、強制性交等未遂、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、準強制わいせつ被告事件
名古屋地方裁判所令和6年9月27日刑事第3部判決
(罪となるべき事実)
第2 被告人は、別紙2記載の被害者C(当時11歳)及び被害者D(当時9歳)が13歳未満の者であることを知りながら、
1 C及びDと性交又はわいせつな行為をしようと考え、令和3年7月10日午後3時42分頃から同日午後3時44分頃までの間、別紙2記載の名古屋市β区内の公園個室トイレ内において、同個室トイレ出入口付近にいたC及びDに対し、「俺、病気でお腹ちょっと悪くて、おしっこがちょっと出にくいんだよね。」「膿みたいなのを出さないといけなくて、それちょっと5分位手伝ってもらってもいいかな。」等と嘘を言って、C及びDを同個室トイレ内に誘い込み、同個室トイレの出入口ドアを内側から施錠してC及びDを自己の支配下に置き、もってわいせつの目的でC及びDを誘拐した上、その頃から同日午後3時59分頃までの間、同所において、C及びDを同所から脱出することを困難にさせて不法に監禁し、Cについては同人の手首をビニールテープ様のもので縛るなどして不法に逮捕し、その間、同所において、Cに対し、自己の陰茎を手淫させ、Cのズボンとパンツを脱がせ、その陰部に自己の陰茎を押し当ててCと性交しようとしたが、Cの膣内に自己の陰茎を挿入することができなかったため、その目的を遂げず、さらに、その頃、同所において、Dに対し、Cに自己の陰茎を手淫させたりCと性交しようとしたりする姿を見せつけて、13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし、
2 その頃、同所において、ひそかに、Cが被告人の陰茎を手淫する姿態、被告人がCの陰部を触る姿態及び被告人が自己の陰茎をCの陰部に押し当て性交しようとする姿態を、同所に設置した動画撮影機能付き携帯電話機で動画撮影し、その動画データ1点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録して保存し、もってひそかに児童を相手方とする性交に係る児童の姿態並びに他人が児童の性器等を触る行為及び児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
(法令の適用)
1 罰条
判示第1の所為 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
判示第2の1の所為のうち
各わいせつ誘拐の点 被害者ごとに刑法225条
Cに対する逮捕監禁の点 刑法220条
Dに対する監禁の点 刑法220条
強制性交等未遂の点 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法180条、177条後段
強制わいせつの点 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
判示第2の2の所為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2項、2条3項1号、2号
判示第3の各所為 被害者ごとに令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法178条1項、176条前段
判示第4の所為 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法181条2項(177条前段)
2 科刑上一罪の処理
判示第2の1 刑法54条1項前段、後段、10条(Cに対するわいせつ誘拐と逮捕監禁、Dに対するわいせつ誘拐と監禁、Cに対する強制性交等未遂とDに対する強制わいせつは、それぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり、Cに対するわいせつ誘拐と強制性交等未遂、Dに対するわいせつ誘拐と強制わいせつとの間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、結局以上を1罪として最も重い強制性交等未遂罪の刑で処断)
判示第3 刑法54条1項前段、10条(各被害者に対する準強制わいせつは、1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるが、被害者ごとに犯情が異ならないから、いずれかを特定することなく、1罪として準強制わいせつ罪の刑で処断)
3 刑種の選択 判示第2の2の罪について懲役刑を選択
判示第4の罪について有期懲役刑を選択
4 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
5 未決勾留日数の算入 刑法21条
6 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
令和6年9月27日
名古屋地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官 吉田智宏 裁判官 須田健嗣 裁判官 河合美月