児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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「条例の各規定に該当する場合においても刑法その他法律に正条があるときは,これらの法律による。」の法的性格について、「刑法の罰条と条例の罰条が補充関係にあることを明らかにするものであって,訴因外の刑法の罰条の構成要件該当事実が条例違反罪の訴因との関係で処罰阻却事由となるものではない」高松地裁R2.9.29


 刑法優先という規定は、香川県条例と北海道条例にあります。
 青少年条例のわいせつ行為には「性的意図」が必要とされています。

香川県青少年保護育成条例の解説
(淫行又は隈せつ行為等の禁止)
第16条
1何人も、青少年に対し、淫行又は狼せつの行為をしてはならない。
【要旨】
本条は、青少年に淫行(みだらな行為)やわいせつの行為を行ったり、教えたり、見せたりする行為を禁止する規定である。
【解説】
(4) 「隈せつの行為」とは、いたずらに性欲を刺激したり、露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に性的差恥心や嫌悪の情を起こさせたりする行為をいう。

第29条
第22条から前条までの規定に該当する場合においても、刑法(明治40年法律第45号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)その他法律に正条があるときは、これらの法律による。
【解説】
本条は、第22条から第28条の規定を適用するに当たって、刑法、児菫福祉法条があるときは、これら法律が優先して適用されることを規定したものである

北海道青少年健全育成条例の解説2020
(淫行等の禁止)
第38条
1何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつな行為をしてはならない。
(3) 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、興奮させたり、その露骨な表現によって、健全な常識ある一般社会人に対し、性的な羞恥、嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
(4) 「してはならない」とは、青少年を相手方として、淫行又はわいせつな行為を行うことを禁止しているのであり、相手方の同意、承諾の有無及び対価の授受の有無を問わない。
・・・
第67条
第57条から前条までの規定に該当する場合においても、刑法(明治40年法律第45号)又は児童福祉法その他の法令に正条があるときは、これらの法律による。
【趣旨】
本条は、本条例の違反事項について他の法令に正条があるときは、これらの法律によることを定めた規定である。
【解説】
本条例の違反事項について他の法令に正条があるときは、例えば、次のような場合をいう。
(1) 第15条第1項の規定による有害興行の上映、上演等、第16条第2項の規定による有害図書類販売等又は第22条第1項の規定による有害広告物の表示等が刑法第175条(わいせつ物頒布等)に該当するときは、同法による。
(2) 第35条第3項による深夜同伴が刑法第224条(未成年者略取及び誘拐)に該当するときは、同法による。
(3) 第38条の規定による淫行、わいせつな行為が刑法第176条(強制わいせつ)、第177条(強制性交等)、第178条(準強制わいせつ及び準強制性交等)、第179条(監護者わいせつ及び監護者性交等)に該当するときは、同法による。
(4) 第40条の規定による場所の提供が売春防止法第11条(場所の提供)、児童福祉法第34条第1項(禁止行為)の該当するときは、同法による。
(5) 第53条の規定による立入調査について刑法第95条(公務執行妨害及び職務強要)に該当する場合は、同法による。

高松地裁R2.9.29
(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は,判示の事実関係については争わない旨陳述しつつ,
①県青少年保護育成条例(以下,単に「条例」という。)29条には「第22条から前条までの規定に該当する場合においても刑法その他法律に正条があるときは,これらの法律による。」と定められているから,刑法の準強制わいせつ罪の構成要件の充足が条例違反罪の訴因との関係で処罰阻却事由となるところ,本件は被害者の心神喪失等に乗じて行われた可能性があり,被告人の行為は,行為の客観面において準強制わいせつ罪の構成要件を満たすから,同条により条例違反罪は適用されない,
②条例16条1項の「狼せつ」は定義ができないから,刑罰法規としての明確性を欠き無効である,
~~~などと主張する。
しかしながら,①については,条例29条は,刑法の罰条と条例の罰条が補充関係にあることを明らかにするものであって,訴因外の刑法の罰条の構成要件該当事実が条例違反罪の訴因との関係で処罰阻却事由となるものではなく,弁護人の主張は独自の見解として採用の限りではない。
また,②については,行為そのものが持つ性的性質から条例16条1項の「猥せつ」の該当性を判断することができ,判示行為がこれに当たることも明らかであって,弁護人の主張は採用できない(なお,判示事実のうち「単に自己の性的欲望を満たす目的で」との部分は,判示行為が青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなものとして,条例16条の「猥せつの行為」に該当することを示すものである。)。