児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童相談所職員による淫行事件につき、青少年条例違反で逮捕されて、児童淫行罪で起訴されて青少年条例違反で有罪となった事例(福岡地裁r2.6.22)

 師弟関係の児童淫行罪について実刑率が高いので、慎重に対応しましょう。
 この判決が言及している最高裁判所平成28年6月21日決定は児童淫行罪の成否について要件を挙げていますが、それらの要件は量刑要素でもあるので、削って行けば軽くなって、児童淫行罪が青少年条例違反に落ちる可能性が出てきます。
 なお、同一青少年に対する数回の青少年条例違反については、包括一罪になりますので(金沢支部福岡高裁、高松高裁)、罪数処理を誤っています。

福岡地裁令和 2年 6月22日
児童福祉法違反被告事件
主文
 被告人を懲役2年に処する。
 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
理由
 (罪となるべき事実)―被害者の氏名等は,別紙犯罪事実一覧表,呼称一覧表のとおり
 被告人は,児童相談所において,Aが18歳に満たない青少年であることを知りながら,別紙犯罪事実一覧表のとおり,3回にわたり,専ら自己の性的欲望を満たす目的で,Aに口淫等をさせ,もって,いずれも,青少年に対し,いん行をした。
 (証拠の標目)―括弧内は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠甲乙の番号
 判示事実全部について
 ・ 被告人の公判供述
 ・ 被告人の検察官調書(乙10),警察官調書(乙4(抄本),6ないし8)
 ・ Aの検察官調書抄本(甲1(不同意部分を除く))
 ・ 被害児童の年齢に関する報告書(甲2),一覧表作成報告書(甲8),写真撮影報告書(甲11),犯行場所の名称特定に関する報告書(甲13)
 別紙犯罪事実一覧表番号1,2の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙15)
 別紙犯罪事実一覧表番号1の事実について
 ・ 被告人の警察官調書(乙13)
 ・ 検証調書(甲14),写真撮影報告書(甲19),実況見分調書(甲20),資料入手報告書(甲21,22)
 別紙犯罪事実一覧表番号2の事実について
 ・ 被告人の警察官調書(乙14)
 ・ 写真撮影報告書(甲24),実況見分調書(甲25)
 別紙犯罪事実一覧表番号3の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙11),警察官調書(乙9)
 ・ 写真撮影報告書(甲16),実況見分調書(甲18)
 (法令の適用)
 罰条 別紙犯罪事実一覧表の番号ごとに福岡県青少年健全育成条例38条1項1号,31条1項
 刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い番号3の罪の刑に法定の加重)
 宣告刑 懲役2年
 刑執行猶予 刑法25条1項(4年間猶予)
 (争点に対する判断)
第1 本件公訴事実と争点
 本件公訴事実の要旨は,「被告人は,児童相談所児童福祉司として勤務し,当時,同相談所で一時保護中の児童であったAの社会診断,援助方針の策定等を担当していたものであるが,Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記担当者としての自己の立場を利用し,同相談所内において,別紙犯罪事実一覧表のとおり,3回にわたり,Aに自己を相手に口淫等の性交類似行為をさせ,もって,児童に淫行をさせる行為をした」というものである。
 被告人が,別紙犯罪事実一覧表記載の各日時頃,児童相談所内で,Aに口淫等をさせた事実については当事者間に争いがなく,証拠上も認めることができる。また,それが児童福祉法上の「淫行」又は福岡県青少年健全育成条例上の「いん行」に該当することについても当事者間に争いがなく,当裁判所としてもそのように評価できると考える。しかし,検察官は,被告人が「淫行を『させる』行為」(児童福祉法34条1項6号)をしたと主張するのに対し,弁護人は,そのように評価することはできないから,児童福祉法違反の罪(以下「児童淫行罪」ともいう)は成立せず,福岡県青少年健全育成条例違反(いん行)の罪(以下「条例違反のいん行罪」ともいう)が成立するにとどまると主張している。
 すなわち,本件の争点は,被告人が,児童福祉法上の「淫行を『させる』行為」をしたと評価できるか否かであるが,当裁判所は,そのように評価することはできないと判断した。以下,説明する。
第2 事実関係等
 関係証拠によると,本件各犯行に至るまでの経緯,被告人とAとの関係等については,以下のような事実関係等が認められる。
 1 Aは,平成30年11月29日,警察からの通告により,児童相談所の一時保護所に入所し●●●,当初は●●●の児童福祉司がAらを担当していたが,その後,●●●被告人が,Aらを担当することになった●●●。
 他方,被告人は,社会福祉士の資格を有し,いくつかの福祉関係の職●●●を経て,平成27年4月から,児童相談所児童福祉司として勤務し,子どもに関する家庭その他からの相談に応じていた。本件当時,妻と●●●子ども●●●がいて,本件以前には,家庭生活や社会生活に問題は見当たらない。
 2 Aは,愛着の形成に関する問題を抱えており,他人と適切な距離を保つことが困難であった(人は,幼児期に,情緒的な関わり(必要に応じて,安心させる,見守る,褒めるなど,愛情深く世話をすること)をしてくれる特定の養育者がいれば,愛着を形成でき,安心感や自己肯定感等を獲得できる。それにより,その養育者と物理的に距離をとっても,安心感や自己肯定感を持続でき,その養育者のもとを離れて一人で行動できるようになる。他方,このような愛着の形成が上手くいかないと,その養育者との関係のみならず,その後の対人関係の築き方,発達,行動等に支障をきたすことがある。Aの場合,●●●幼児期において,●●●安定した愛着が形成できなかったことがうかがえ,●●●信頼できると思った人物とは,近い距離にいなければ(あるいは身体接触を伴わなければ)安心できず,物理的,心理的な距離感を直ぐに縮めたり,身体接触を過剰に求めたりする行動がしばしばみられる)。そのため,Aは,一時保護所においても,職員に対し,男女構わず抱きつく,膝の上に乗るなどして甘える行動や,抱き締めてほしい,頭を撫でてほしいなどと身体接触を求める行動が頻繁に観察された。Aは,このような行動を職員から再三にわたり注意されていたが一向に改まらなかった。このAの問題行動は,定期的に行われる会議により,一時保護所を含む児童相談所職員の間で共有されていた。
 3 Aは,担当児童福祉司である被告人を頼りに感じており,心情が不安定なときに抱え上げてくれたことなどから,比較的早い段階から好意を持つようになった。Aは,被告人に対し,甘える態度を示し,短期間のうちにその傾向を強め,面接後にハグを求めるなどするようになった。被告人は,当初はそれを断っていたが,重ねて求められて遂にハグをしてしまった。その後,被告人は,Aの誘いに応じる形で,キスをしたり,着衣の上から胸を触ったりするなど,Aに対する身体接触エスカレートさせ,遂には被告人の陰茎を,Aに咥えさせたり,Aの陰部に押し当てたりするようになって,本件各犯行に及んだ(関係証拠を総合すると,被告人とAとが性的な接触を始めた時期は,Aが一時保護所に入所してから1か月も経過しない頃のことと認められ,平成30年12月下旬頃であった旨をいう被告人の供述は,疑問もある。しかし,その余については,他の証拠との矛盾など,信用性を疑わせる証拠は見当たらないから,被告人とAとが性的な接触を繰り返していた経緯等に関する被告人の供述は排斥できない)。
 4 Aは,被告人との間の性的行為につき,Aと同じく一時保護されている児童や,一時保護所の職員に話したが,被告人の妻が可哀想だし,大事にしたくないという気持ちもあって,他の大人には話さなかった。なお,Aは,平成31年3月4日,担当児童福祉司を被告人以外の者に替えてほしい旨を申し出た後も,被告人との間の淫行について,面会に来た母親にも話していない。
第3 当裁判所の判断
 児童福祉法34条1項6号の「淫行を『させる』行為」とは,直接たると間接たるとを問わず,児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をすることを助長し促進する行為をいうと解される(最高裁判所平成28年6月21日決定)。そのような行為に当たるか否かは,行為者と被害児童の関係,助長・促進行為の内容及び被害児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,被害児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断すべきであるが,児童淫行罪と保護法益を同じくしながら,法定刑が大きく異なる児童買春の罪や条例違反のいん行罪との峻別という観点からの検討も必要である。
 1 被告人とAとの関係について
 検察官は,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があった旨を主張する。
 確かに,被告人は,Aの担当児童福祉司であり,担当児童福祉司による原案どおりに援助指針(援助方針)が決まることも少なくないから,Aの援助指針(援助方針)の策定についても重要な役割を担っている上,一時保護中のAが外部の者と接触するには,窓口である被告人を介する必要があった。
 しかし,一般に,児童相談所(呼称一覧表記載の特定機関に限らない。以下「児相」ともいう)は,児童福祉司による社会診断,児童心理司による心理診断,医師による医学診断,一時保護部門の児童指導員による行動診断などにより,子どもとその環境を総合的に理解した上,それらを基にして担当者による協議(会議)を重ね,判定(総合診断)し,できるだけ迅速に,子どもの最善の利益を追求するための援助指針(援助方針)を策定する機関である(子どもや保護者に対する援助は,この指針に基づいて行われ,援助は定期的に検証され,必要に応じて見直される)。関係機関との連絡調整役を担い,社会診断(問題の所在とその背景等についての調査を進め,相談者による主訴とその背後にある基本的な問題並びに問題と社会的環境との関連等を解明することにより,社会学社会福祉学的視点から援助のあり方を明確にすることをいう)を行うことから,援助指針(援助方針)の原案を作成する児童福祉司の果たす役割は小さくないとはいえ,児童福祉司は,援助指針(援助方針)を策定する児相の専門家チームの一員である。また,本件でAが一時保護されていた一時保護所は,児童相談所と同じ建物内にあるが,一時保護されている子どもの安全等を確保するため,子どもは自由に出入りできず,児童相談所の職員でさえカードキーで解錠しない限り出入りできない仕組みになっていたように,一時保護の期間中,児童指導員等の一時保護部門の職員は,夜間を含めて一時保護されている子どもと生活をともにし,全ての生活場面について子どもの行動を観察し,行動診断を行うのであるが,一時保護されている子どもと担当児童福祉司が会う機会は,面接時に限られている。加えて,一時保護されている子どもの援助指針(援助方針)は,できるだけ迅速に策定しなければならず,一時保護の期間は原則として2か月以内とされているから,一時保護されている子どもと担当児童福祉司の関係も,原則として2か月以内の期間にとどまる。
 このような担当児童福祉司をはじめとする児童相談所や一時保護所の職員の役割等について,Aが正しく理解していたとは認められないが,Aとしては,被告人は,援助指針(援助方針)を策定する立場にある者と認識していたのであるから,一時保護されている期間中の被告人からの働き掛けについては,Aの将来を左右し得る立場の者からの働き掛けであると考えて,Aの自律的な意思決定が歪められる危険性があることは否定できないから,そのような意味において,Aに対して相当の事実上の影響力を有していたとはいえようが,上記のとおり,一時保護中の子どもとその担当児童福祉司との関係は,子どもとその親など保護者との関係や,学校における児童・生徒と教師との関係とは異なる部分が多い上,援助指針(援助方針)の策定に際しては,児童相談所の方針を子どもや保護者らに伝え,その意向を聴取し,できる限り子どもや保護者らとの協議が行われることなども踏まえると,検察官が主張するように,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があったとみるのは適切ではないと考える。
 2 助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度について
 検察官は,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があったことを前提に,Aに対し,そのような被告人からの事実上の影響力が強く及んでいたのであるから,被告人が,担当児童福祉司としてAと面接する機会に,その立場を利用して,児童相談所の相談室等において,Aと二人きりの状況を作出するとともに,相談室内の灯りを消し,自らのズボンとパンツを脱いで陰茎を露出させ,Aの着衣をまくりあげるなどの行為は,被告人からの事実上の影響力の強さを考慮すると,「助長・促進行為」に当たり得る旨を主張している。
 この点,被告人とAとの間に「保護責任者的地位のような関係性」があったとみるのは適切ではないのは,既に説明したとおりであるが,担当児童福祉司である被告人からの働き掛けがあったとすれば,それはAに対して相当の事実上の影響力があったと認められる。
 しかし,被告人がAと性的接触を繰り返すようになったのは,面談の機会に,被告人に対して好意を持っていたAから繰り返し身体接触を求められ,当初はそれを断っていた被告人が,これに応じてしまったことが契機であると認められるのであって,被告人が,Aに対して,性的な身体接触等を求めて何らかの働き掛けを行い,その働き掛けが持つ事実上の影響力により,Aとしては,それに応じるか否かの意思決定を自律的に行うことができず,被告人からの働き掛けに応じることを余儀なくされてしまった,というような経緯ではない(このことは,Aが被告人との間の性的行為を身近に感じていた者たちだけに打ち明けた後も,できれば大事にしたくないという気持ちから,しばらくの間,母親を含めて他の者には隠していたことなどからも,うかがうことができる)。被告人とAとの関係や影響力の強さを踏まえても,検察官が指摘するような行為まで本罪に当たり得るとすると,児童淫行罪と条例違反のいん行罪とを峻別することができなくなってしまうおそれがあり,妥当ではない。
 そうすると,被告人がAの愛着の形成に問題があることを認識していたことや,被告人のAに対する事実上の影響力の強さ等を踏まえて検討しても,弁護人が主張するとおり,本件においては「淫行を『させる』行為」と評価し得る「助長・促進行為」が存在したとは認められない。
 なお,被告人は,同じ時期に担当していた他の被保護児童と比べて,Aとの面接回数が相当多いことは認められる。しかし,Aとそのきょうだいの一時保護されていた期間,一時保護後の措置の内容等に照らすと,Aやその家族の抱える問題点を把握して援助指針(援助方針)の原案を作ること,Aらに対して,その原案を説明し,その意向を聴取し,協議した上,成案を得ることは容易ではなかったことがうかがえる。Aと他の被保護児童との面接回数の差は,その処遇選択の困難さの違いを反映している可能性は十分に考えられる。更に,一時保護されているAは,他の被保護児童とは違って,比較的軽い感じで,児童相談所にいる被告人を呼び出すことがあったようである。
 したがって,被告人が担当していた児童らが一時保護された経緯や,一時保護期間中やその後の状況,面接の必要性等が証拠により明らかにされていない以上,被告人とAとの面接回数が多いからといって,被告人が,必要性もないのに,担当児童福祉司という立場を利用して,Aとの面接を多数回重ねていたとか,事実上の影響力を行使していたとみることも難しい。
 3 そうすると,淫行の内容,淫行に至る動機・経緯,被害児童の年齢,その他被害児童の置かれていた状況等を検討するまでもなく,児童福祉法上の「淫行を『させる』行為」があったとは認められないから,児童淫行罪は成立せず,条例違反のいん行罪が成立するにとどまると判断した。
 (量刑に当たり特に考慮した事情)
 児童相談所児童福祉司である被告人は,妻子もあるのに,事もあろうに,担当していた一時保護中の被害児童に対して,児童相談所内でいん行を繰り返した。被害児童の口に自己の陰茎を咥えさせるなどの態様もかなり悪く,被害児童の心身に及ぼす害悪の程度は相当高く,被害児童の心身の健全な発達に対する悪影響が懸念される。被害児童は,愛着の形成に問題を抱えており,児童福祉司であり,児童相談所の職員であった被告人は,それを十分に理解していたのであるから,他の誰よりも適切に対応すべきであったといえ,被告人が,被害児童に対する性的接触エスカレートさせていった期間の長さを踏まえても,本件各犯行は,同種の事案の中で,相当重い部類といえる。
 他方,被告人が本件に至った経緯からすると,殊更に犯情を重く捉えるべきではないとの弁護人の主張には理由があり,被告人に相手を選ばずこの種の行為を繰り返す傾向があるとも認められないから,被告人に対する非難は,一定程度減じられるべきである。また,被告人は,被害児童に対する慰謝の措置を講じる努力をし,被害弁償金の一部(50万円)を被害児童側に受け取ってもらっている。母親の監督も期待できる。被告人自身も反省を深めており,専門家の力も借りて再犯を防止しようとしている。
 そうすると,被告人の刑事責任を軽視することはできないが,前科・前歴もない被告人に対しては,今回に限り,社会内で自力更生を目指す機会を与えることも許されると考える。
 よって,主文のとおり判決する。
 (求刑・懲役4年)
 福岡地方裁判所第2刑事部
 (裁判官 溝國禎久)

平成28年 6月21日
最高裁第一小法廷
児童福祉法違反被告事件
 弁護人竹永光太郎の上告趣意のうち,憲法31条違反をいう点は,児童福祉法34条1項6号の構成要件が所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論に鑑み,職権で判断する。
 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,同法の趣旨(同法1条1項)に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,同号にいう「淫行」に含まれる。
 そして,同号にいう「させる行為」とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが(最高裁昭和39年(あ)第2816号同40年4月30日第二小法廷決定・裁判集刑事155号595頁参照),そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。
 これを本件についてみると,原判決が是認する第1審判決が認定した事実によれば,同判示第1及び第2の各性交は,被害児童(当時16歳)を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり,同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んでいることが認められる。このような事実関係の下では,被告人は,単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず,同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められる。したがって,被告人の行為は,同号にいう「児童に淫行をさせる行為」に当たり,同号違反の罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 小池裕 裁判官 櫻井龍子 裁判官 山浦善樹 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人)