児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪につき「弁護側は合意の上だったとし「淫行行為には該当しない」と無罪を主張した」事例(宇都宮地裁)

 有罪だと実刑なので、争う必要があります。
 合意・承諾があっただけでなく、「児童福祉法34条1項6号は、児童に淫行を「させる行為」を禁止しているのであるから、自己を相手に淫行をさせる場合、同号に該当するといえるためには単に児童と淫行をするだけでは足らず、少なくとも児童に対し淫行を助長し促進する行為をすること」を否定しないと無罪になりません。
 相手方が中学生だと立場が対等ではないので、被害児童に「口(メール)には出しませんでしたが、先生に求められて断れませんでした。」と供述されると難しいです。
 あと、児童淫行罪は起訴されていない余罪で量刑されてしまうのをなんとか争って欲しいものです。

http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20130821/1116498
被告氏名伏せ初公判 教え子に淫行 弁護側は無罪主張
(8月22日)
 教え子の女子生徒にみだらな行為をしたとして児童福祉法違反の罪に問われた真岡市、宇都宮市立中学校の元男性教諭(32)=懲戒免職=の初公判が21日、宇都宮地裁(水上周裁判官)で開かれた。元教諭は事実関係を認めたが、弁護側は合意の上だったとし「淫行行為には該当しない」と無罪を主張した。裁判は、地裁の決定に基づき、被害生徒の特定を避けるため元教諭の氏名などを伏せた異例の審理となった。
 検察側は冒頭陳述で、元教諭が当時担任だった中学2年女子生徒=当時(14)=から悩み事の相談を受けるうちに好意を抱いたと指摘。交際に発展した際には「口外しないよう口止めした」とし、今年6月に関係が発覚するまで「複数回にわたり性交に及んだ」と主張した。
 弁護側の被告人質問で元教諭は「自分を頼ってくれる彼女を支えてあげたいと考えた。はっきりと恋愛感情があった」と説明。「自分への憧れや好意を利用した。彼女の人生を狂わせ、申し訳ない」などと述べた。

 県警などによると、元教諭は1月19日、女子生徒が18歳未満であることを知りながら、宇都宮市内のホテルでみだらな行為をしたとされる。元教諭は生徒が所属する部活動の顧問も務めていた。

 公判では、宇都宮地検の要望を受けた宇都宮地裁刑事訴訟法に基づき、事前に元教諭の氏名を含め、被害生徒の特定につながる事項を法廷で明らかにしないことを決定し、弁護側も了承していた。

 このため、証言台に立った元教諭に対し水上裁判官が「被害者の特定につながることは口にしないように」と注意を求めた。人定質問はなく、元教諭の氏名や生年月日、住所などの情報は、事前に出廷カードに記入した内容を元に「間違いないですね」と確認した

東京高裁平成24年10月17日
第2原判示第1の1、2及び第2の1、2の各事実(以下「原判示第1の1等の事実」ということがある。)についての理由不備の主張について
 論旨は、児童福祉法34条1項6号の児童に淫行をさせる罪(以下「児童淫行罪」ということがある。)の罪となるべき事実(原判示第1の1等の事実)については、単に雇用関係や身分関係という被告人と被害児童との関係だけでなく、実際に事実上の影響力を与えた事実を記載する必要があるところ、原判決は、被告人は、当時原判示中学校(以下「本件中学校」ということがある。)に教諭として勤務し、同校の顧問を兼ねていたものであること並びにA及び当時17歳の被害児童(以下「B」ということがある。
)がいずれも本件中学校の元生徒でありの部員であったことを摘示するのみで「実際に事実上の影響力を与えた事実」を全く記載しておらず、児童淫行罪の構成要件に該当すべき具体的事実を摘示しているとはいえなし、から、原判決にはこの点において理由不備の違法があるというのである。
そこで検討すると、児童福祉法34条1項6号は、児童に淫行を「させる行為」を禁止しているのであるから、自己を相手に淫行をさせる場合、同号に該当するといえるためには単に児童と淫行をするだけでは足らず、少なくとも児童に対し淫行を助長し促進する行為をすることが必要であり(最高裁昭和40年4月30日決定裁判集155巻595頁参照)、したがって、罪となるべき事実にはその旨を摘示する必要があるというべきである。
しかるに、原判決は、上記のとおり被告人が本件中学校の教諭で同校の顧問であり、被害児童2名(A及びBをいう。以下同じ。)が本件中学校の元生徒での部員であった旨を判示するにとどまり、このことが被告人を相手とする性交類似行為又は性交とどのような関連があるかの判示はなく、他に被告人が被害児童2名に対し淫行を助長し促進したことを示す事実の摘示もない(各起訴状記載の公訴事実も同様である。)。
そうすると、原判決は、児童福祉法34条1項6号の罪の構成要件を満たす事実を漏れなく記載していないというべきであるから、原判決には、原判示第1の1等の事実に関し、理由不備の違法があるといわざるをない。
検察官は、答弁書において、原判示の罪となるべき事実は、本件が、中学校教師の生徒又は元生徒に対する事実上の影響力、剣道指導者のその教え子に対する事実上の影響力を及ぼしてA及びBに淫行をさせた趣旨であることを容易に理解できるから、児童に淫行をさせる罪の構成要件の摘示に欠けるところはないと主張するが、単なる両者の関係の記載をもって、直ちに同関係に伴う影響力を及ぼした趣旨であると解することは困難である上、原判決は、被告人が児童に淫行をさせるいかなる行為をしたのかについては全く記載していないのであるから、検察官の上記所論は採用できない。
なお、原判決は、(量刑の理由)の項において、「被害児童2名が、中学時円も卒業後も、恩師として被告人を尊敬し頼りにしており、それ故に中学校卒業後も被告人に自らの悩みを相談していたのであり、同児童らと被告人との中学時代の関係等からすれば、被告人は恩師として同児童らに依然として相当な影響力を持っていたと考えられる。」旨判示して、被告人がかかる影響力を利用して被害児童2名に淫行をさせたと解し得る説示をしているものの、この点を罪となるべき事実として摘示していない以上、理由不備の違法が解消されるものではない。
以上によれば、論旨は理由がある。
第3破棄自判

追記
 無罪主張だけど検察官請求証拠には全部同意したので、2回目でほぼ終結するようです。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20130823/CK2013082302000148.html
起訴状などによると、元男性教諭は一月十九日、中学二年で十四歳だった女子生徒が十八歳未満と知りながら、宇都宮市内のホテルでみだらな行為をしたとしている。
 弁護側は事実関係を認めた上で、二人は交際していたなどとして「淫行には当たらない」と無罪を主張した。

冒頭陳述によると、被告は2011年4月から女子生徒の担任と部活動の顧問を務めた。生徒から悩み事の相談を受けるうちに好意を持ち、交際を申し入れたという。捜査段階で「部活動の顧問でなければつきあうことはなかった」と供述したといい、検察側は教諭の立場を利用した犯行だったと強調した。
 被告は罪状認否で「事実行為などに間違いはありません」と述べたが、被告人質問では、女子生徒が人間関係などで悩みを抱え、学校から疎遠になっている状況を心配したと説明。「自分のことを頼ってくれる彼女を支えてあげたいと思うようになった」などと話した。弁護側は、被告が支配的な立場ではなかったとして、「(同法の構成要件にあたる)淫行させる行為には該当しない」として無罪を主張した。次回は9月12日午前10時から、弁護側の証人尋問と検察の論告が予定されている。
朝日新聞


 どの程度のことで「教諭としての事実上の影響力を及ぼして被害者と性交を行った」ことになるかというのは、次の判例を参考にして下さい。

某高裁
第3事実誤認ないしは法令適用の誤りの主張について
論旨は,要するに,被告人は,中学校の担任教諭としての事実上の影響力を及ぼして被害者と原判示の各性交を行ったものではなく,無罪であるから,被告人を有罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認ないしは法令適用の誤りがある,というのである。

そこで検討すると,原判決が認定する諸事実,すなわち,被告人は県内の公立中学校に勤務する男性教諭,他方,被害者は被告人が担任を受け持つクラスに所属する中学3年生で、
あったこと,被害者は,平成年月ころから精神的に不安定な状態となり(科において診断を受けた。),他の生徒とともに教室で授業を受けるのが困難になったことから,被告人や他の教員が別室で個別に勉強を教えていたこと,同年月日ころ,被害者は中学校内でを図り,一時学校を休んだこと,被告人は,被害者の中学卒業後の進路相談等を行い,被告人の尽力の結果,同年,被害者の県立高校への推薦入学が内定したこと,同日,被害者の母親が被告人に内定についての謝礼の電話をかけた際,代わって電話に出た被害者と被告人との間で2人でに遊びにいく約束がなされ,同月日には被告人は自動車で被害者とに出かけ,同車内で被害者とキスをしたこと,平成年月日ころ,被告人と被害者は2人でホテルに入り,被害者が服を脱ぎ,被告人が裸の写真を撮るなどしたこと,被告人と被害者は,同月日ころ,ホテルで初めて性交し,その後も,本件中学校の校舎内や被告人の自動車内,被告人の自宅等で多数回にわたり性交を重ねていたことなど,被告人と被害者の人的関係や被害者の精神状態等を踏まえて本件に至る経緯を考察すれば,被告人は,中学校における被害者の担任教諭としての強い影響力の下に被害者と本件性交を行ったことは明らかであり,そのような行為が性道徳上非難に値するものであることも疑いがないから,被告人が児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することを助長し促進する行為をしたこと,すなわち,児童に淫行をさせる行為をしたことが優に認定できる。
これと同旨の原判断は正当として是認できる。