児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

橋爪隆「非接触型のわいせつ行為について」研修860号

 脅迫して裸画像を送らせる行為について、奥村は、昔から強制わいせつ罪説を唱えていましたが、独自の見解とされ、各高裁は強要罪説でしたよね。付いてきてよ。

I .はじめに
周知のとおり,最大判平成29. 11. 29 (刑集71巻9号467頁)は,強制わいせつ罪の成立要件として一律に性的意図を要求することは妥当ではないとした上で, わいせつ行為の判断基準について具体的な検討を加えている。すなわち,①行為そのものが持つ性的性質が明確な場合には,その他の事情を考慮するまでもなく, 直ちにわいせつな行為と評価できるが,②行為そのものが持つ性的性質やその程度が明確ではない場合には,行為者の主観的事情を含めた具体的状況を考慮した上で, わいせつ行為に該当するか否かを判断する必要がある。

上記①②の限界は必ずしも明確ではないが(注' ) ,本決定の理解を前提とした場合,被害者の身体に対する接触を伴う行為については,対象となった身体の部位や接触の態様(直接性執勧性など)によって行為それ自体の有する性的性質を判断した上で, さらに必要に応じて,行為者と被害者の関係性,当該行為に至る経緯行為者の性的意図・目的などの事情を考慮して, 強制わいせつ罪の成否が判断されることになろう(注2)。

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これらの事情をすべて踏まえて,本罪のわいせつ行為性を定義しようとすると,結局のところ, 「性的性質を有する一定の重大な侵襲」(注'2)という抽象的な内容になってしまう。もちろん,本罪を重大な性的侵害として把握する方向性自体は適切な方向にあると思われるが,論者も認めるとおり, この定義から解釈論を導くためには,具体的な適用基準を示すことが不可欠となる。そして, 「性的性質」, 「重大な侵襲」という概念だけからは,非接触型の類型について明確な指針を導くことができず,非接触型の類型に固有の侵害性を明らかにする必要がある, というのが,本稿の問題意識である。まずは議論の前提として,本罪のわいせつ行為の理解において重要な視点を示すことにしたい。