児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

長野県子どもを性被害から守るための条例違反で起訴猶予となり、東御市青少年健全育成条例違反で罰金となった事例(上田区検R01.10.10)

 公文書開示請求で略式命令の存在は確認しました。
 長野県条例ができても東御市条例(処罰範囲広い)は生きているようです。
 被疑事実がわかりませんが、仮に青少年との性行為だとすると、「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)という判例があるので、「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為」だったんでしょうね。

 なお、長野県条例が長野県内一律処理しようという趣旨であれば、県条例に抵触する恐れがあります。

地方自治
第二条[地方公共団体の法人格、事務、自治行政の基本原則]
地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない。
⑰前項の規定に違反して行つた地方公共団体の行為は、これを無効とする。

長野県子どもを性被害から守るための条例
第3条
1 この条例において「子ども」とは、18歳未満の者をいう。
(威迫等による性行為等の禁止)
第17条 何人も、子どもに対し、威迫し、欺き若しくは困惑させ、又はその困惑に乗じて、性行為又はわいせつな行為を行ってはならない。
2 何人も、子どもに対し、威迫し、欺き若しくは困惑させ、又はその困惑に乗じてわいせつな行為を行わせてはならない。
3 何人も、子どもに対し、自己の性的好奇心を満たす目的で、性行為又はわいせつな行為を見せ、又は教えてはならない。
第19条
1第17条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
解説
l 「何人も」とは、県民はもとより、旅行者、滞在者を含み、年齢、性別、国籍等を問わず長野県内にいる全ての者をいう。また、行為者が子どもの場合でも本条違反に該当するが、第20条(適用除外)の規定により罰則は適用しない。
2 「子ども」とは、18歳未満の者をいう。なお、婚姻の有無は問わない。
3 「威迫」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により、心理的威圧を加え、相手方に不安の念を抱かせることをいう。
4 「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らせ、又は真実を隠して錯誤に陥らせる行為をいう。
5 「困惑」とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう。
6 「困惑に乗じて」とは、困惑状態を作為的に作り出した場合だけではなく、既に子どもが何らかの理由により困惑状態に陥っており、それにつけ込んで(乗じて)性行為等を行う状況をいう。
7 「性行為」とは、「性交及び性交類似行為」と同義である(昭和40年7月12日新潟家裁長岡支部決定)。『性交類似行為』とは、実質的にみて、性交と同視し得る態様における性的な行為をいい、例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下におけるあるいは性交を模して行われる手淫・口淫行為・同性愛行為などであり、児童買春・児童ポルノ禁止法における性交類似行為の解釈と同義である。
8 「わいせつな行為」とは、「いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的差恥心及び嫌悪の情をおこさせる行為」をいう(昭和39年4月22日東京高裁判決)。
具体的には、陰部に対する弄び・押し当て、乳房に対する弄び等がこれにあたる。

東御市青少年健全育成条例
http://www.city.tomi.nagano.jp/dbps_data/_material_/localhost/data/shogaigakusyu/seisyounen_jorei.pdf
(みだらな性行為等の禁止)
第24条
1何人も、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対して前項の行為を教え、又は見せてはならない。
第30条
1 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
【解説】
本条は、青少年が、その心身の未成熟や発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していないため、性行為等によって精神的な痛手を受け易く、また、その痛手からの回復が困難となりがちな事情をかんがみ、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をし、又はそれらの行為を教えたり、見せたりすることを禁止し、青少年の健全な育成を図ろうとするものである。
1 第1項は、青少年に対するみだらな性行為又はわいせつな行為を禁止したものである。
(1) 「みだらな」 とは、広く青少年に対する性行為一般を指すものではなく、青少年を、言葉巧みに誘惑し、威迫し(人を恐れさせて従わせ)、欺岡し(あざむき)、困惑させる等、その心身の未成熟に乗じた不当な手段又は結婚を前提としない青少年を単に自己の性欲望を満足させるためのものであるなど、健全な常識を有する一般社会人から見て、反倫理的で非難を受けるべきものをいう。
(2) 「性行為」とは性交及び性交類似行為をいう。
「性交類似行為」とは、男女間の性交に限らず、青少年の心身に与える有害性が認められ、実質的にみて性交と問視し得る程度の行為、すなわち男女間の性交を模した、あるいは性交を連想させるような姿態での手淫・口淫行為や向性愛行為等をいう。
(3) 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって、健全な常識を有する社会人に対し、差恥嫌悪の情を起こさせる行為をいう。

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191012/KT191011FTI090024000.php
県警、性被害条例巡り異例説明 東御の不起訴男性 別の2容
疑で書類送検
 「県子どもを性被害から守るための条例」違反(深夜外出の制限)の疑いで書類送検され、3日に不起訴処分となった東御市の20代男性について、県警は11日、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)と東御市青少年健全育成条例違反(みだらな性行為などの禁止)の疑いでも書類送検していたと明らかにした。上田区検は3日、両罪で男性を上田簡裁に略式起訴し、上田簡裁は10日に罰金の略式命令を出していた。
 県警はこれまで、男性の県条例違反容疑での書類送検について発生日時や場所、容疑者や被害者の性別、年齢などを公表していなかった。11日は「(条例が)正常かつ確実に機能していることを県民に公表することは、公益に資すると考えた」(少年課)として、別の2件の容疑を含めて詳細を初めて説明した。

 県警の説明によると、当時21歳の無職男性の県条例違反での送検容疑は、昨年7月中旬の深夜、SNS(会員制交流サイト)で知り合った県外在住の10代半ばの女性を保護者の同意などがな
いのに、性行為をする目的で自宅に滞在させた疑い。東御市条例違反での送検容疑は、この女性を自宅に滞在させた際、18歳未満と知りながらみだらな性行為をした疑い。
 児童買春・ポルノ禁止法違反での送検容疑は、この女性とSNSでやりとりしていた昨年6月下旬、女性に下半身を撮影させ、画像を送信させた疑い。男性はいずれの容疑も認めているという。

 県警少年課によると、2人がSNSを通じて知り合ったのは昨年4月ごろ。その後もSNSでやりとりし、保護者に注意された女性が、家出することを決意して「男性の自宅に行きたい」と連絡を取り、男性は応じたという。保護者が女性に電話して所在が分かり、県警の警察官が男性宅で女性を保護したという。

 同課は2人のSNSでのやり取りや供述、女性が家出するまで2人は直接会っていなかったことなどから「恋愛関係にない」と断定。18歳未満と知りながら性行為をする目的で宿泊させたと判断したとしている。