児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「恩赦が認められれば「復権」となり、取り消された医師免許などの国家資格を再取得できる。公民権も復活する。」という中日新聞の誤報

 未だにこんなこと書いてる。
http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2019/11/01/185446
どこからの情報でこんなデマを繰り返すのかわかりません。
 医師の場合、刑事処分で免許取消になって、罰金刑が復権になっても、行政処分には影響がないから、免許取消のままです。再免許申請は「取消後5年以降」とされていて(医師法7条3項)、復権は関係ありません。再免許の事例はほとんどありません。
 だいたい児童買春罪で罰金になった医師・看護師は業務停止数ヶ月になって、免許取消になることもなく、復権されてもされなくても、数ヶ月で復帰します。
 復権のメリットを受けるのは、医師関係では、罰金刑になった医学生の医籍登録に際して、復権していれば免許の保留がなくなるという場合です。復権しなければ罰金刑執行終了後5年経過しないと、免許の保留を受けるところ、政令恩赦や特別基準恩赦で復権すれば、免許の保留なく、医籍登録受けられるということになります。

医師法
第七条 医師が、第三条に該当するときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消す。
2 医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の医業の停止
三 免許の取消し
3 前二項の規定による取消処分を受けた者(第四条第三号若しくは第四号に該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつた者として前項の規定による取消処分を受けた者にあつては、その処分の日から起算して五年を経過しない者を除く。)であつても、その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる。この場合においては、第六条第一項及び第二項の規定を準用する。
4 厚生労働大臣は、前三項に規定する処分をなすに当つては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。

特報 性犯罪も即位恩赦 なぜ 罰金刑対象に一律復権 未治療で再犯懸念 被害者配慮 骨抜き
2019.12.06 朝刊 15頁 朝刊特報面 (全2,646字) 
 天皇陛下の即位に伴う「即位礼正殿の儀」に合わせた恩赦が、性犯罪者なども対象に含めていることを疑問視する声が出ている。条件を満たしていれば一律に資格を回復する「政令恩赦」は十月に実施されたが、本人の出願に基づく「特別基準恩赦」は来年一月二十一日までが手続き期間。あるNPO法人は「再犯率が高い性犯罪者は除くべきだ」と訴えている。(大野孝志、安藤恭子

 「子どもへの性犯罪は、初犯はだいたい罰金刑。恩赦で一律に資格が回復できるなんておかしいと思いませんか」。児童買春・ポルノ、アダルト動画の出演や売春の強要などから女性らを救う東京都内のNPO法人「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」の藤原志帆子理事は言う。

 今回の恩赦には「政令恩赦」と「特別基準恩赦」の二種類がある。いずれも対象は主に罰金刑で、「政令」は刑執行から三年以上。「特別基準」は本人の出願に基づき、個別に審査される。認められれば「復権」となり、取り消された医師免許などの国家資格を再取得できる。公民権も復活する。

 藤原理事は「児童ポルノ所持や児童買春で罰金刑を受けた者が復権すれば、医師や看護師といった、子どもに接する機会が多い資格を再び得られることになる」と恐れる。

 性犯罪は再犯率が高いとするデータもある。法務総合研究所の二〇一五年度の調査では、性犯罪の前科が二回以上ある者のうち八割が、その後に子どもへの性犯罪で摘発されていた。米国は「未治療の性犯罪者が生涯に出す被害者は三百八十人」との調査結果もある。

 ライトハウスの昨年一年間の相談者は二百四十一人。今年は既に昨年の倍以上の五百六十五人に上り、うち十八歳未満が百十四人と二割を占める。警察や弁護士、医療機関などと連携して対応し、緊急性があれば一時保護もしている。

 相談内容からは、トラウマ(心的外傷)に長く苦しむ被害者の姿が浮かぶ。ある女性は高校時代に交際相手の男に性暴力を受け、その様子を撮影された。別れた後も画像がインターネットに拡散されるのではないかとおびえ、眠れぬ夜が続き、ライトハウスに相談。男は児童ポルノ所持の疑いで逮捕されたが、藤原理事は「おそらく罰金刑だったでしょう」と語る。
 精神科医や看護師による性暴力の相談もあるという。

 ライトハウスは発起団体になり、特別基準恩赦の対象から子どもへの性犯罪者を除外するよう求める署名活動をインターネットで始めた。目標は一万人で、先月末で二千八百人が署名。年内に法相と首相に提出する方針だ。

 法務省は恩赦の目的を「慶事に当たり、罪を犯した者の改善更生の意欲を高めさせ、その社会復帰を促進する」としている。藤原理事は「更生というのなら、恩赦と並行して性犯罪者を治療したり、子どもに接する仕事に就けないようにしたりする取り組みが必要ではないでしょうか」と主張した。

 今回実施された政令恩赦の対象は約五十五万人。有罪で生じた資格制限をなくす復権が、即位礼正殿の儀があった十月二十二日に一律で認められた。特別基準恩赦は本人の出願を受け、法務省の中央更生保護審査会(中更審)が、犯情や本人の性格などを踏まえて審査する。重い病気で刑の執行が長期間停止され、今後も執行が難しい人の「刑の執行免除」も審査される。特別基準恩赦で認められるのは千人程度とみられる。

 今回は有罪判決を無効にする「大赦」、刑罰を軽くする「減刑」はなく、重大犯罪を含めて懲役刑や禁錮刑になった者も対象にしなかった。昭和天皇大喪(一九八九年)と天皇陛下(現上皇さま)即位の礼(九〇年)の際に政令恩赦が行われた前回の代替わりと比べ、対象者は大幅に減った。

 背景には、二〇〇五年の犯罪被害者等基本法施行など、被害者感情を重視するようになった社会情勢の変化がある。法務省保護局は「国民感情、特に犯罪被害者やご家族の心情に配慮した」と説明する。

中日新聞社