児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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京都府青少年の健全な育成に関する条例の自画撮り規制についての検察協議

京都府青少年の健全な育成に関する条例の自画撮り規制についての検察協議
 h29.6議会に提出する前に協議されていました。
 検事からも、安易に送ってしまうから事前規制は意味無いだろうという指摘があります。

青少年の健全な育成に関する条例
http://www.pref.kyoto.jp/seisho/documents/kaiseigojourei.pdf
(青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第 21 条の2 何人も、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成 11 年法律第 52 号)第2条第3項に規定する児童ポルノ及び同項各号のいずれかに掲げる姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録をいう。以下同じ。)の提供を求めてはならない。
(平 30 条例 25・追加)
(罰則)
第 31 条
3 次の各号のいずれかに該当する者は、30 万円以下の罰金に処する。
(3) 第 21 条の2の規定に違反して、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた者であつて、次のいずれかに該当するもの
ア 当該青少年に拒まれたにもかかわらず、当該提供を行うように求めた者
イ 当該青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は当該青少年に対し、対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該提供を行うように求めた者

1日時平成30年3月2日(金) 9 : 30~10 :40
2場所京都地方検察庁
3 出席~
京都地検s検事、企画調査課m事務官
京都府警生活安全部少年課少年対策担当n課長補佐
生活安全部少年課少年事件特別捜査隊i隊長補佐
京都府府民生活部青少年課y副課長、k主査
府民生活部府民総務課me主査
4 内容
(1)条例改正の目的について
○s検事
児童ポルノ等の提供を求める行為が規制されていない」とのことであるが、相手方の求めに応じ、撮影した画像が児童の携帯電話等に保存された段階でも、児童ポルノ規制法違反の既遂行為に該当し、処罰した例はある。自画撮り画像が児童から送付され、相手方の携帯電話等に保存された状態は、起訴する価値が高くなり、公判請求しやすくなることは事実であるが、送付される前でも処罰した例はある。
○y
・今回の条例は、提供を求める行為そのものを規制しようとするものである。青少年にとって、大人から裸の画像を撮って送って欲しいといわれること自体、ショッキングであって、健全な成育に好ましくないと考えるからである。
(2)処罰対象について
○s検事
・提供を求めた時点で条例違反になるとしても、実際に把握されるのは、写真を送った後、脅されるなどして不安になり警察に相談したときではないか。
・今の児童は、「裸の写真を送って」と言われれば気軽に送っしまうし、言われなくてもネットにあげたりしているのが実情である。条例案は、欺き、威迫云々と対象が限定されているので、本条例適用で処罰されるのはごく少数ではないか。
○y
・把握が難しい点については先に開催した京都府青少年健全育成審議会でも指摘がされた事項。この点については、広報や教育、相談等の行政施策を講じたいと考えている。
・対象を限定したのは、ふざけて冗談で要求したりするような行為まで処罰対象とするのは適当でないと考えたからである。~ ‘

○i隊長補佐
・提供を求める行為が青少年にとってショッキングであって、その行為自体を規制対象としようとするのであれば、欺き、威迫といった限定は不要であると考える。
・ふざけて要求する行為についても、育成条例には、青少年に適用しない、という規定があるので、京都府の心配は無用である。
.逆に限定されることにより、条例の適用が難しくなり、処罰される可能性が少くなる。~
○s検事
・要件のうち、「困惑」とは何か。どのような場合であっても「困惑」すると思うので、要件としてはよくわからない。神戸地検兵庫県にこの点を指摘したという。
○y~
・送ってくれないと別れる、死ぬ、などというような場合を想定している。
.また、東京都は、拒まれたにもかかわらず求める、行為を処罰対象としている。兵庫県は県庁内検討において、困惑と同視できる、との判断でこの規定をおいていない。東京都によると、「困惑」は青少年の内面に働きかける方法を指し、「拒まれた」は状態を指していることから条文を分けている、とのこと。
○i隊長補佐
.そうなると、メールやLINE等で一回求めたことが明らかであるだけでは検挙できないことになり、悪いことを考える者は条例に触れない形で求めるようになると思う。
○s検事
・~京都地検内では、育成条例21条の淫行規制について財産供与や精神的未熟に乗じて、といった条件が付されていることの必要性を疑問視する声があがっている。~
本件協議においても同様の指摘がある可能性がある。
・とはいえ、逆に、何も条件が示されないとどのような態様の行為が処罰対象であるのか疑義が生じる可能性もあるし、議会を通過させる際に難しくなることから、まずは限定した規制から始めようとされることは理解できる。また、東京都、兵庫県といった先進例と外れることが難しいということも理解する。
(3)他府県からの要求行為について
○s検事
~ ・提供を求める行為を京都府からした場合、条例が適用されず、実効性が伴わないのではないか。
・条例が適用される、と考える場合多くの府県に自画撮り要求をした場合、京都府だけ処罰されること、自らが知らない条例が適用されることから不適当ではないか。
○y
・東京都、兵庫県とも県外からの要求行為であっても条例適用される、と解している。S61. 12. 2高松高裁判決をその根拠とされている。
(4) 日程
○y
・今後3月6日に府議会の常任委員会に条例改正の骨子を報告し、3月中にパブリックコメント実施。その後パブコメで出された意見も踏まえながら府庁内の法令審査委員会による審査等を経て4月中くらいを目途に条例案を固めていきたいと考えている。
○s検事~
京都地検も検事正が交代し、庁内体制が固まっていないため、まだ上司の意見は聞けていない。今後庁内調整を進めていく。意見が出されたらその都度連絡させていただく。
(5)その他
○s検事
・その他審議会で出された意見等があれば聞かせていただきたい。
○y
・自画撮り画像提供要求行為の規制は大人を対象としたものであって、青少年には適用されないが、青少年同士でもいじめで裸の写真を撮らせたりするので、適用するべき、との意見があった。
これに対しては、育成条例は青少年を保護し、健全な育成を図れる環境を作り出すことを目的としていることから、対象が大人になっており、青少年の矯正は条例の目的ではない。青少年の行為が強要等法に触れる場合は、家裁での審判を経て処分が用意されており、そちらで対処されるべきと考えている。

○s検事
・同意見