児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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元警官、淫行の無罪主張「恋愛感情に基づいていた」(長野地裁)

 最決h28.6.21に「行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断する」という基準が示されているというのですが、考慮要素だし、総合考慮なので、はっきりしないです。
 少年補導担当の警察官と、対象の少女の関係の場合は、影響関係を払拭するのは難しいでしょう。
 実刑危険がある。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85960
児童福祉法違反被告事件
裁判年月日  平成28年6月21日
法廷名  最高裁判所第一小法廷

判例番号】 L07110035
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集70巻5号369頁
       裁判所時報1654号174頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 警察学論集69巻10号162頁
       警察公論71巻10号87頁
       研修820号15頁
       論究ジュリスト22号229頁
       法学セミナー61巻10号115頁
       刑事法ジャーナル51号125頁
 弁護人竹永光太郎の上告趣意のうち,憲法31条違反をいう点は,児童福祉法34条1項6号の構成要件が所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論に鑑み,職権で判断する。
 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,同法の趣旨(同法1条1項)に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,同号にいう「淫行」に含まれる。
 そして,同号にいう「させる行為」とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが(最高裁昭和39年(あ)第2816号同40年4月30日第二小法廷決定・裁判集刑事155号595頁参照),そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。
 これを本件についてみると,原判決が是認する第1審判決が認定した事実によれば,同判示第1及び第2の各性交は,被害児童(当時16歳)を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり,同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んでいることが認められる。このような事実関係の下では,被告人は,単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず,同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められる。したがって,被告人の行為は,同号にいう「児童に淫行をさせる行為」に当たり,同号違反の罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小池 裕 裁判官 櫻井龍子 裁判官 山浦善樹 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人)

 この判例によると師弟関係がベースにあると、「させる」は認められやすく払拭するのは難しいと思います。

最高裁第一小法廷平28.6.21決定児童淫行罪_判タ_1452号_72頁
(3) 「させる行為」について
本決定が示した判断方法以上のとおり,「させる行為」の解釈が次第に変遷していく中で,「させる行為」の本質部分をどのように捉えるべきかや,その類型化をめぐる議論は,未だ十分に熟しているとはいい難い状況にあるように思われる。
そのような中,本決定は,「同号にいう『させる行為』とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいう」と判示し,昭和40年判例で示されていたとおり,「させる行為」該当性について,①「事実上の影響力」を児童に及ぼしているか,②児童が淫行をすることを助長し促進する行為であるか,の二つの観点から判断する解釈を踏襲する判示をし,その上で,「させる行為」に該当するかどうかについては,「行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である」と判示して,その判断方法を明らかにした。
本決定は,「淫行をさせる行為」が,立法当初の解釈に比べて相当に広範囲なものを含む解釈が定着している中で,本号による重い処罰にふさわしい行為に限定されていなければならないとの要請も満たしつつ,児童保護の観点からも適切な処罰範囲を画するため,本罪に該当するとされた裁判例の集積を踏まえ,「させる行為」を判断する際の具体的考慮要素を明示して判断方法を明らかにすることにより,処罰範囲の明確化を図ろうとしたものと思われる。
本決定によれば,「させる行為」に当たるかどうかを評価するに際しては,当該児童に及んでいる「事実上の影響力」の程度を踏まえた上で,「させる行為」と評価できるような「助長・促進行為」があるかどうかを,当該児童が淫行に及んだ具体的状況に照らして個別に検討していくことになろう。
4 本決定は,①本件各性交が,被害児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であること,②被告人と同児童との関係について,被告人が同児童(当時16歳)の通う高等学校の常勤講師であったこと,③被告人の具体的行為として,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んだことを簡潔に指摘しており,本件においては,強力といえるような助長・促進行為はないものの,高校講師である被告人が被害児童に及ぼした「事実上の影響力」を踏まえれば,本件各性交をした行為が,「児童に淫行をさせる行為」に当たると判断されたものと考えられる。
ただし,この判断は,第1審判決が詳細に認定した具体的事実関係が前提とされている点にも留意すべきであろう。

元警官、淫行の無罪主張「恋愛感情に基づいていた」
[2018年10月24日18時18分]
https://www.nikkansports.com/general/news/201810240000626.html
18歳未満の少女にみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反の罪に問われた元巡査部長、被告の初公判が24日、長野地裁(室橋雅仁裁判長)で開かれ、起訴内容を一部否認した。
被告は少女との行為を認めた上で「双方の恋愛感情に基づいていた」などと述べた。弁護側は、被告が警察官としての立場を利用したわけではないとし、無罪を主張した。
起訴状などによると、被告は県内の警察署の生活安全課に勤務していた2016年11月~17年3月に計4回、県内のホテルで、当時18歳未満だった少女にみだらな行為をしたとしている。
県警監察課によると、被告は16年8月、業務を通じて少女と知り合い、非番や休みの日に会っていた。17年3月に松本署に異動し少年非行防止などに当たっていたが、今年5月に逮捕され、懲戒免職となった。(共同)