検察官側のコメントです。
判決はwestlawに収録されています
2本件起訴及び争点
検察官は、?平成21年12月13日頃の、児童ポルノに該当するCG16点を含む「聖少女伝説2」の製造、?平成24年4月20日から平成25年3月27日までの間の不特定の客である3名に対する、上記「聖少女伝説2」及び児童ポルノに該当するCG18点を含む「聖少女伝説」の提供(販売)につき被告人を起訴した。
被告人が「聖少女伝説」及び「聖少女伝説2」を作成したことや、インターネット通信販売サイトにこれらの販売を委託したこと、起訴状に特定された客3名が同通信販売サイトを閲覧して「聖少女伝説」及び「聖少女伝説2」を購入し、同人らが使用するパソコンにこれらをダウンロードしたことについては争いがなかった。
一方で、弁護人は、本件CGの児童ポルノ該当性(写真を素材として児童ポルノCGを作成しうるか、被写体の実在性、児童性、被写体と本件CG女性との同一性、児童ポルノ法2条3項3号該当性)、被告人による客への提供事実、故意等を激しく争った。
?本判決
本判決は、CGを記録した媒体が児童ポルノたり得ることを肯定した上で、検察官が本件CGの基となったと主張する写真の被写体の実在性、当該人物が児童と認められるか、被写体とCG女性との間の同一性を詳細に検討して、検察官が児童ポルノであると主張した34点のCGのうち、「聖少女伝説2」に収録された3点について児童ポルノ該当性を肯定し、これら3点のCGに関し、不特定多数の者に対する提供目的での児童ポルノ製造罪及び不特定多数の者に対する児童ポルノ提供罪を認め、被告人を懲役1年及び罰金30万円(懲役刑につき3年間執行猶予)に処した。V終わりに
本判決は、実在の児童の姿態の描写ではあるものの、複数の素材の合成や被告人自身の創作による補完がなされたCGについて児童ポルノ性を認めた点で重要な意義を有する。
同時に、本判決は、起訴された34点の画像のうち3点を除いて児童ポルノ性を否定したもので、この種事案の立証の困難性を改めて浮き彫りにした(13)。紙幅の関係から詳細には立ち入らないが、少なくとも、この種事案の捜査においては、実在の児童とCG女性との同一性の判断を容易かつ確実にすべ<、素材として使われた資料の特定、CGの作成経過の解明、さらに、モデルとされた児童に関する情報その他児童の年齢の特定に資する資料の収集を徹底することが重要と思われる。・・・
9)ただし、抽象化が進めばそれだけ別人の可能性も高まることになる。また、児童ポルノ法2条3項3号の「性欲を興奮させ又は刺激する」との要件を充足しないものが増えるように思われる。
10)例えば乳房の大きさを極端に変えるような改変は、もはや実在児童を描写したものとは言いがたいであろう。これに対し、例えば実在児童の写真を基礎としつつ、CG女性の姿勢の変更に合わせて乳房の形状を修正したような場合には、同一性を肯定し得る場合が多いであろう。
11)前掲衆議院法務委員会議録6頁、28頁。
12)なお、1人の実在する児童を撮影した複数の異なる写真からパーツを抽出し、これを組み合わせて1つのCGを作成した、という場合、完成したCGはあくまで合成の結果であり直ちに実在の児童の姿態を描写したものにはならないが、重要な部位の特徴と他のパーツの特徴とが相まって、当該児童との結びつきを認識することが格段に容易になるため、重要な部位の一部に改変が加えられていたとしても、実在の児童の姿態を描写したものと認定し得る余地が大きくなるように思われる。
13)児童ポルノ性が否定されたCGの大半は、検察官レイヤーの被写体が児童であることの立証が不十分と判断されたものである。