児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

判例DBにおけるCG児童ポルノ事件(東京高裁h29.1.24)

 まだ上告中ですが
 ちょっと解説を書けと言われまして。

評釈として
上田正基・立命館法学372号157頁
実在の児童の写真を素材として作成されたコンピュータグラフィックスにつき児童ポルノ製造罪及び提供罪の成立を認めた事例〈刑事判例研究19〉
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/17-2/006ueda.pdf


が出てますね。

東京高等裁判所
平成29年1月24日第10刑事部判決

       判   決
 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成28年3月15日東京地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官和久本圭介並びに弁護人山口貴士(主任),同壇俊光,同奥村徹,同野田隼人,同北周士,同北村岳士,同歌門彩及び同吉峯耕平(いずれも私選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
原判決を破棄する。
被告人を罰金30万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。
原審における訴訟費用のうち,2分の1を被告人の負担とする。
本件公訴事実第2(平成25年9月3日付け訴因変更請求書による訴因変更後のもの)のうち,児童ポルノである画像データを含むコンピュータグラフィックス集「△△△△△」を提供したとする点について,被告人は無罪。


       理   由
論旨は理由がある。
 よって,量刑不当の論旨について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。
4 結論
 そこで,刑訴法397条1項,380条により原判決を破棄し,同法400条ただし書に従い,被告事件について更に判決する。
 原判決が認定した事実に法令を適用すると,被告人の判示第1の行為は,平成26年法律第79号附則2条により同法による改正前の児童ポルノ法7条5項,同条4項,2条3項3号に,判示第2の行為は,同法7条4項後段,2条3項3号に該当する。そこで,量刑について検討すると,起訴された34点の本件CGのうち,「△△△△△」に含まれる18点全てと「□□□□□□」に含まれる13点については児童ポルノに該当せず,本件3画像のみがこれに該当すると認められるにとどまること,本件3画像の素材画像となる写真が撮影されたのは,前記のとおり,昭和57年ないし昭和59年頃であり,本件3画像は,その当時児童であった女性の裸体を,その約25年ないし27年後にCGにより児童ポルノとして製造されたものであって,本件各行為による児童の具体的な権利侵害は想定されず,本件は,専ら児童を性欲の対象とする風潮を助長し,将来にわたり児童の性的搾取及び性的虐待につながるという点において,違法と評価されるにとどまることなどを考慮すると,違法性の高い悪質な行為とみることはできず,体刑を選択すべき事案には当たらないというべきである。そこで,各所定刑中,いずれも罰金刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法48条2項により,判示第1及び第2の各罪の罰金の多額を合計した金額の範囲内で,被告人を罰金30万円に処し,刑法18条により,その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置することとし,原審における訴訟費用のうち2分の1については,刑訴法181条1項本文を適用して被告人に負担させることとする。本件各公訴事実中,公訴事実第2のうち,「△△△△△」を提供したとの点については,前記のとおり,犯罪の証明がないから,同法336条により,無罪を言い渡すこととする。
 よって,主文のとおり判決する。
平成29年1月24日
東京高等裁判所第10刑事部
裁判長裁判官 朝山芳史 裁判官 杉山愼治 裁判官 市原志都

提供 TKC
【事案の概要】 被告人が、不特定又は多数の者に提供する目的で、児童の姿態が撮影された写真の画像データを素材として、画像編集ソフト等を使用して描写したコンピュータグラフィックスを作成し、このCG集をインターネットを通じて不特定又は多数の者に販売したとして起訴されたのに対し、原審が児童ポルノの製造及び提供の各罪を認めたことより、被告人が控訴した事案において、実在する児童の姿態を描いた画像等が、児童ポルノとしていったん成立した以上、その製造の時点で被写体等となった者が18歳以上になっていたとしても、児童の権利侵害が行われた記録として、児童ポルノとしての性質が失われることはないと解すべきであるとした上で、懲役1年(3年間執行猶予)及び罰金30万円を言い渡した原判決を破棄し、罰金30万円を言い渡し、児童ポルノである画像データを含むコンピュータグラフィック集を提供したとする点について、無罪を言い渡した事例。
【判示事項】 〔高等裁判所刑事判例集〕
1. 児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当するか
2. 児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において,18歳以上になっていた場合の児童ポルノ製造罪の成否(積極)
【要旨】 〔高等裁判所刑事判例集〕
1. 児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,写真の被写体である児童を描写したといえる程度に,被写体と同一であると認められるときは,全く同一の姿態,ポーズがとられなくても,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当する。
2. 児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において,18歳以上になっていたとしても,児童ポルノ製造罪は成立する。
【裁判結果】 破棄
【裁判官】 朝山芳史 杉山愼治 市原志都
【掲載文献】 裁判所ウェブサイト
【評釈等所在情報】 〔日本評論社
上田正基・立命館法学372号157頁
実在の児童の写真を素材として作成されたコンピュータグラフィックスにつき児童ポルノ製造罪及び提供罪の成立を認めた事例〈刑事判例研究19〉

westlaw
〔判示事項〕
◆児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が、平成26年法律第79号による改正前の児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当するか
◆児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が、CG画像等の製造の時点及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において、18歳以上になっていた場合の児童ポルノ製造罪の成否(積極)
〔裁判要旨〕
◆児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が、写真の被写体である児童を描写したといえる程度に、被写体と同一であると認められるときは、全く同一の姿態、ポーズがとられなくても、平成26年法律第79号による改正前の児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当するとされた事例
◆児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が、CG画像等の製造の時点及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において、18歳以上になっていたとしても、児童ポルノ製造罪は成立するとされた事例

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【事案概要】
被告人が、不特定多数の者に提供する目的で、衣服をつけない実在する自動の姿態が撮影された画像データを素材として編集した画像データである児童ポルノを製造し、同一のファイルを訴外会社に送信して記憶・蔵置させるとともに、その販売を同社に委託し、不特定の者に販売することで児童ポルノを提供したという件で起訴された件につき、被告人が控訴した控訴審において、原判決が破棄され、被告人が罰金30万円に処せられた事例。
【裁判所ウェブサイト判示事項】
(1)児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が、平成26年法律第79号による改正前の児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当するか。
(2)児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が、CG画像等の製造の時点及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において、18歳以上になっていた場合の児童ポルノ製造罪の成否(積極)。

判例秘書
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】
東京高等裁判所判決/平成28年(う)第872号
【判決日付】
平成29年1月24日
【判示事項】
1 児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当するか
      
2 児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において,18歳以上になっていた場合の児童ポルノ製造罪の成否(積極)
【判決要旨】
1 児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,写真の被写体である児童を描写したといえる程度に,被写体と同一であると認められるときは,全く同一の姿態,ポーズがとられなくても,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当する。
      
2 児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において,18歳以上になっていたとしても,児童ポルノ製造罪は成立する。
【掲載誌】 
高等裁判所刑事判例集70巻1号1頁
LLI/DB 判例秘書登載