児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

婚姻による刑事免責への道

 18歳未満の者と婚姻した場合には、
慎重に
 (1)真剣でない交際関係・真剣交際関係(性行為なし)
  ↓
 (2)真剣交際関係での青少年との性行為
  ↓
 (3)婚姻関係での青少年との性行為
とか、やや慎重とは言えないものの
 (1)真剣でない交際関係での青少年との性行為
  ↓
 (2)真剣交際関係での青少年との性行為
  ↓
 (3)婚姻関係での青少年との性行為
という経緯を辿るものと思われます。


これに青少年条例違反を適用すると、

  真剣でない交際関係・真剣交際関係(性行為なし)
は、青少年条例違反(淫行)罪は不成立。

  真剣でない交際関係での青少年との性行為
は、青少年条例違反(淫行)罪が成立する。

  真剣交際関係での青少年との性行為
については、判例が「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為」と限定解釈するので、無罪になる。

  婚姻関係での青少年との性行為
については多くの条例では成年擬制で18歳未満であっても婚姻すると「青少年」の定義から外れるので、婚姻以後は青少年条例違反は不成立。

という結論になるでしょう。

 しかし、最終的に婚姻しているのに
  真剣でない交際関係での青少年との性行為で有罪
というのが残りますよね。婚姻で免責されないので、新婦は有罪。公訴時効までは起訴される危険がある。結論としておかしいよね。刑法229条但書のような規定を設けてクリアにしてあげたい

第229条(親告罪
第二百二十四条の罪、第二百二十五条の罪及びこれらの罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びに同条第三項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、営利又は生命若しくは身体に対する加害の目的による場合を除き、告訴がなければ公訴を提起することができない。ただし、略取され、誘拐され、又は売買された者が犯人と婚姻をしたときは、婚姻の無効又は取消しの裁判が確定した後でなければ、告訴の効力がない。

福岡県青少年健全育成条例
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 青少年 18 歳未満の者(他の法令により成年者と同一の能力を有するとされる者を除く。)をいう。
(いん行又はわいせつな行為の禁止)
第 31 条 何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。

福岡県青少年保護育成条例違反被告事件最高裁判所大法廷判決昭和60年10月23日
一 被告人本人の上告趣意第一部の二ないし四及び第二部の一ないし四は、福岡県青少年保護育成条例(以下、「本条例」という。)一〇条一項、一六条一項の規定は、一三歳以上、特に婚姻適齢以上の青少年とその自由意思に基づいて行う性行為についても、それが結婚を前提とする真摯な合意に基づくものであるような場合を含め、すべて一律に規制しようとするものであるから、処罰の範囲が不当に広汎に過ぎるものというべきであり、また、本条例一〇条一項にいう「淫行」の範囲が不明確であるから、広く青少年に対する性行為一般そ検挙、処罰するに至らせる危険を有するものというべきであつて、憲法一一条、一三条、一九条、二一条の規定に違反すると主張し、弁護人立田廣成は、当審弁論において、被告人の右主張は憲法三一条違反をも併せ主張する趣旨である旨陳述するとともに、その上告趣意第一において、右の「淫行」の範囲に関し、青少年を相手とする結婚を前提としない性行為のすべてを包含するのでは広きに過ぎるから、「淫行」とは、青少年の精神的未成熟や情緒不安定に乗ずること、すなわち、誘惑、威迫、立場利用、欺罔、困惑、自棄につけ込む等の手段を用いたり、対価の授受を伴つたり、第三者の観覧に供することを目的としたり、あるいは不特定・多数人を相手とする乱交の一環としてなされる性行為等、反論理性の顕著なもののみを指すと解すべきであると主張する。
 そこで検討するのに、本条例は、青少年の健全な育成を図るため青少年を保護することを目的として定められ(一条一項)、他の法令により成年者と同一の能力を有する者を除き、小学校就学の始期から満一八歳に達するまでの者を青少年と定義した(三条一項)上で、「何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつの行為をしてはならない。」(一〇条一項)と規定し、その違反者に対しては二年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金を科し(一六条一項)、違反者が青少年であるときは、これに対して罰則を適用しない(一七条)こととしている。これらの条項の規定するところを総合すると、本条例一〇条一項、一六条一項の規定(以下、両者を併せて「本件各規定」という。)の趣旨は、一般に青少年が、その心身の未成熟や発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していないため、性行為等によつて精神的な痛手を受け易く、また、その痛手からの回復が困難となりがちである等の事情にかんがみ、青少年の健全な育成を図るため、青少年を対象としてなされる性行為等のうち、その育成を阻害するおそれのあるものとして社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止することとしたものであることが明らかであつて、右のような本件各規定の趣旨及びその文理等に徴すると、本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、
青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、
青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為をいうものと解するのが相当である。
けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目して単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。このような解訳は通常の判断能力を有する一般人の理解にも適うものであり、「淫行」の意義を右のように解釈するときは、同規定につき処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるともいえないから、本件各規定が憲法三一条の規定に違反するものとはいえず、憲法一一条、一三条、一九条、二一条違反をいう所論も前提を欠くに帰し、すべて採用することができない。
 なお、本件につき原判決認定の事実関係に基づいて検討するのに、被告人と少女との間には本件行為までに相当期間にわたつて一応付合いと見られるような関係があつたようであるが、当時における両者のそれぞれの年齢、性交渉に至る経緯、その他両者間の付合いの態様等の諸事情に照らすと、本件は、被告人において当該少女を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性行為をした場合に該当するものというほかないから、本件行為が本条例一〇条一項にいう「淫行」に当たるとした原判断は正当である。