児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

刑事損害賠償命令制度について「同制度で賠償命令が出た19件中、履行は1件だけ。それも4千万円の賠償命令で約800万円しか払われていなかった」(神戸新聞)

 性犯罪事件で5000万円の申立を受けて、一部認諾して、損害認容額400万円のうちの遅延損害金のみ(数万円)の刑事損害賠償命令を受けた例がありました。それは履行したけど、それは統計に入ってないのか。上手く使えば、被害弁償のきっかけになります。
 一般の民事訴訟で認容判決を受けても払えない人からは取れませんので、不満はそこに集約されるんでしょう。

民事訴訟せず、被告に請求可能 賠償命令制度 利用は低調 兵庫県内年10件前後 制約多く「期待外れ」
2014.07.04
民事訴訟せず、被告に請求可能
賠償命令制度 利用は低調
県内年10件前後 制約多く「期待外れ」
 犯罪被害者の訴訟負担軽減を目指し、〓簡易・迅速〓を掲げて2008年に導入された「損害賠償命令制度」。民事訴訟を起こさなくても刑事事件の被告に賠償請求できる手続きだが、利用は低調だ。審理が終わらず民事訴訟に移行してしまったり、加害者が賠償に応じなかったり、被害者側にとって「期待外れ」に終わるケースが目立つことが背景にある。
 同制度は、刑事裁判を担当した裁判官が有罪を言い渡した後、引き続き賠償請求の審理を行う手続き。訴訟記録をそのまま使える▽手数料が2千円▽審理が原則4回まで−などのメリットから、被害者の負担軽減に役立つと期待された。
 だが、知名度の低さもあってか兵庫県内の利用は導入以来、年10件前後と少ない。全国では年約200〜300件で推移しているが、対象となる事件のうち殺人、傷害、強姦(ごうかん)、強制わいせつ罪だけで起訴件数(略式起訴を除く)は年6千件以上あり、利用率は低い。
 理由の一つは、大半の加害者に金銭的余裕がなく、申し立てても賠償金を回収できる見込みが少ないことだ。内閣府の10年の調査では、同制度で賠償命令が出た19件中、履行は1件だけ。それも4千万円の賠償命令で約800万円しか払われていなかった。

 「制約が多い」との批判も。加害者が決定に異議を申し立てただけで、手続きは費用のかかる民事裁判に移行する。裁判所が「4回で審理が終わらない」と判断した場合も同様だ。司法統計によると、毎年、審理全体の2〜3割が民事裁判への移行や被害者側の取り下げで終結している。

 常磐大学の諸沢英道教授(被害者学)は、300万円を上限に賠償金を市が立て替え、未払い分を加害者に請求する明石市の犯罪被害者支援条例を例に挙げ「このような条例が広まらない限り、制度の利用者は増えないだろうし、被害者救済にもつながらない」と話している。
損害賠償命令制度〉 殺人・傷害など故意による一定の犯罪で、刑事事件の有罪判決後、同じ裁判所で損害賠償請求の審理を行う制度。被害者側は刑事裁判の結審までに申し立てる。刑事裁判の訴訟記録を証拠として調べ、原則4回以内の審理で決定が下される。犯罪被害者保護制度の一つで、2008年12月に導入された。