児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

衆議院法務委員会での審議状況(H26.6.4)

 リンク引っ張って使おうと思って、全部ダウンロードして貼り付けておきます。

186 - 衆 - 法務委員会 - 21号 平成26年06月04日.txt 直

186-衆-法務委員会-21号 平成26年06月04日

平成二十六年六月四日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 江崎 鐵磨君
   理事 大塚  拓君 理事 土屋 正忠君
   理事 ふくだ峰之君 理事 盛山 正仁君
   理事 吉野 正芳君 理事 階   猛君
   理事 西田  譲君 理事 遠山 清彦君
      安藤  裕君    池田 道孝君
      小田原 潔君    大見  正君
      門  博文君    神山 佐市君
      菅家 一郎君    黄川田仁志
      小島 敏文君    小林 鷹之君
      古賀  篤君    今野 智博君
      末吉 光徳君    助田 重義君
      橋本  岳君    鳩山 邦夫君
      平口  洋君    三ッ林裕巳君
      宮澤 博行君    枝野 幸男君
      郡  和子君    田嶋  要君
      横路 孝弘君    高橋 みほ君
      國重  徹君    椎名  毅君
      鈴木 貴子君
    …………………………………
   法務大臣         谷垣 禎一君
   法務大臣政務官      平口  洋君
   政府参考人
   (警察庁長官官房審議官) 宮城 直樹君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     安藤 友裕君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    林  眞琴君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    西田  博君
   政府参考人
   (法務省保護局長)    齊藤 雄彦君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  萩原 秀紀君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策局生涯学習総括官)    藤野 公之君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議官)           鈴木 俊彦君
   法務委員会専門員     矢部 明宏君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月四日
 辞任         補欠選任
  門  博文君     小林 鷹之君
  神山 佐市君     助田 重義君
  田嶋  要君     枝野 幸男君
  大口 善徳君     國重  徹君
同日
 辞任         補欠選任
  小林 鷹之君     門  博文君
  助田 重義君     神山 佐市君
  枝野 幸男君     田嶋  要君
  國重  徹君     大口 善徳君
    ―――――――――――――
六月四日
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案(高市早苗君外五名提出、第百八十三回国会衆法第二二号)
は委員会の許可を得て撤回された。
五月三十日
 選択的夫婦別姓の導入など民法の改正を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第一〇四五号)
 民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を求めることに関する請願(枝野幸男君紹介)(第一〇五五号)
 同(前原誠司君紹介)(第一〇五六号)
 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(岸本周平君紹介)(第一〇七九号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇八〇号)
 同(照屋寛徳君紹介)(第一〇八一号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第一〇八九号)
 同(笠井亮君紹介)(第一〇九〇号)
 同(小宮山泰子君紹介)(第一〇九一号)
 同(後藤斎君紹介)(第一〇九二号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一〇九三号)
 同(近藤昭一君紹介)(第一〇九四号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇九五号)
 同(志位和夫君紹介)(第一〇九六号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇九七号)
 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇九八号)
 同(宮本岳志君紹介)(第一〇九九号)
 同(吉川元君紹介)(第一一〇四号)
 同(篠原孝君紹介)(第一一四一号)
 同(中川正春君紹介)(第一一四二号)
 児童買春・児童ポルノ禁止法改正問題に関して、拙速を避け、極めて慎重な取り扱いを求めることに関する請願(西村眞悟君紹介)(第一一〇三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案(高市早苗君外五名提出、第百八十三回国会衆法第二二号)の撤回許可に関する件
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件
     ――――◇―――――

○江崎委員長 これより会議に入ります。
 この際、お諮りいたします。
 第百八十三回国会、高市早苗君外五名提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○江崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――

○江崎委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官宮城直樹君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長安藤友裕君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長西田博君、法務省保護局長齊藤雄彦君、法務省人権擁護局長萩原秀紀君、文部科学省生涯学習政策局生涯学習総括官藤野公之君及び厚生労働省大臣官房審議官鈴木俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○江崎委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。
    ―――――――――――――

○江崎委員長 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
 本件につきまして、ふくだ峰之君外三名から、自由民主党民主党・無所属クラブ、日本維新の会及び公明党の四派共同提案により、お手元に配付いたしております児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案の草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。遠山清彦君。

○遠山委員 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案の起草案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び内容について御説明申し上げます。
 児童ポルノの所持、提供等の行為については、これが真に悪質な児童に対する性的虐待行為であるという基本的認識や、児童ポルノが広く流通している現状に対して有効な規制を及ぼさなければならないとの思いが、これまでも与野党の垣根を越えて共有されてきたところでありまして、平成十一年の法律制定時、また、平成十六年の改正時と、いずれも超党派議員立法により、累次、規制が強化されてまいりました。
 そして、前回、平成十六年の改正法附則に、法律の施行状況や児童の権利の擁護に関する国際的動向等を踏まえて三年を目途として検討すべき旨の見直し条項が置かれたことから、各党において、児童ポルノ等に関する規制のあり方全般について真摯な議論がなされ、平成二十年六月には自公案が、平成二十一年三月には民主党案がそれぞれ提出されました。その後の平成二十一年七月には、自民党公明党、そして民主党の議員による実務者会合において修正協議が行われ、大枠で合意を見ることとなったものの、残念ながら超党派議員立法として提出するには至りませんでした。
 その後も、自民党及び公明党の共同で、また民主党から、それぞれ単純所持罪等の処罰に係る改正案が提出されましたが、いずれも衆議院解散により廃案となり、昨年の五月に自民党公明党日本維新の会が共同で提出した改正案についても本委員会において審議がなされていないという状況でありました。
 このような経緯に加えまして、前回の改正から十年が経過をし、この間のインターネットの発達により児童ポルノ被害に遭う児童の数がふえ続けていること、児童ポルノ単純所持罪を設けるべきとの国際社会の強い要請があること等に鑑みまして、今国会において、本委員会の理事会のもとに、委員会を構成する各会派の理事会メンバーから成る児童ポルノ禁止法改正に関する実務者協議会が設置されることになりました。
 同協議会におきましては、昨年、自民党公明党日本維新の会により提出された改正案に加え、平成二十一年の実務者会合において大枠で合意を見た案を中心に、現在の目で見て真に児童の権利の保護に必要な規制を加えるとの観点から、三回にわたり真摯かつ熱心な議論が行われた結果、内容において合意に至りました。
 このような実務者協議会のメンバーの努力に加え、本委員会理事を初め、平成二十一年実務者会合メンバーを含めた各党関係議員の御協力の成果が、本日、ここに起草案として結実した次第であります。
 次に、本起草案の内容について御説明申し上げます。
 第一に、児童ポルノの定義及びその所持に係る罰則に関し、改正を行っております。
 その一は、児童ポルノの定義を改正しております。すなわち、いわゆる三号ポルノについて、その定義をより明確にするため、「殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されている」との要件を付加しながら、その「性的な部位」については「性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部」をいうものといたしました。
 その二は、児童買春、児童ポルノの所持その他児童に対する性的搾取及び性的虐待に係る行為の一般的な禁止規定を、総則において設けることといたしております。
 その三は、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持について、罰則を設けております。すなわち、「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」こととしております。
 また、所持罪の新設に当たり、施行前から所持している児童ポルノについて罰則の適用前に適切に廃棄等の措置を講じていただけるよう、所持罪は改正法施行の日から一年間は適用しないものとしております。
 その他、児童ポルノの製造の罪について盗撮の場合にも処罰範囲を拡大するほか、適用上の注意規定を明確化するとともに、その具体化を図っております。
 第二に、心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度を充実及び強化しております。すなわち、心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置を講ずる主体として、厚生労働省法務省都道府県警察、児童相談所、福祉事務所を例示し、措置を講ずる主体及び責任を明確化することとしております。これに加えて、社会保障審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は、相互に連携して、児童買春や児童ポルノに係る行為により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとすること等としております。
 第三に、インターネットの利用に係る事業者の努力規定を設けております。すなわち、インターネットの利用に係る事業者は、捜査機関への協力、管理権限に基づく情報送信防止措置その他インターネットを利用した児童ポルノの所持、提供等の行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとしております。
 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。
 何とぞ、御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
 以上です。(拍手)
    ―――――――――――――
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――

○江崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。土屋正忠委員。

○土屋(正)委員 ただいま御紹介いただきました土屋でございます。
 上程された委員長提案について質疑を行いたいと思いますが、けさ、新聞の各紙を見ると、極めて衝撃的なニュースが流れておりました。平成十七年十二月に吉田有希ちゃんが今市市で殺害をされ、犯人が捕まらなかったわけでありますが、昨日逮捕されたという記事が新聞各紙に載っております。
 まだ詳細は明らかではありませんが、新聞報道によれば、勝又容疑者の所有するパソコンから多数の女児のビデオ画像が見つかり、一部について、被害者有希ちゃんのものですと供述している、こういうことであります。ビデオには幼児性愛や猟奇的な画像なども含まれていたと報道されております。
 まことに痛ましいことであり、吉田有希ちゃんに心から御冥福をお祈りすると同時に、御家族にもお悔やみの言葉を申し上げたいと思います。しかし、それと同時に、このことはあたかも、きょうポルノ単純所持について議論をされているこのことが、しっかりやれよ、ちゃんとやってくださいよということを暗示しているような気がいたすわけであります。改めて、きょうの会議の重大性を感ずる次第でございます。
 私は、児童ポルノが犯罪に結びつくことについて関心を持ったのは、今から約二十年近く前でございました。詳細については記憶をしておりませんが、EUの各国において、ベルギー、オランダ、ドイツ、フランスなどにおいてマフィアが一斉に逮捕されたわけであります。児童ポルノを作成し、販売したという罪であります。そのときの記事に載っていたことで極めて衝撃を受けたのは、マフィアの逮捕された幹部は、俺たちが悪いんじゃない、買うやつがいるからだ、需要があるから供給しているんだ、こういう言葉が載っておりました。盗人たけだけしいと思いますが、しかし、ある面で真実だと思いました。
 私は、残念ながら、そのときは武蔵野市長という立場でしたので、立法府におりませんでしたが、機会があればこのことをただし、発言し、しっかりとした基準を世の中につくっていきたいと考えたことを昨日のように思い出すわけであります。
 また、今回の件に関して言えば、私は、委員長提案の前の、自民、公明、日本維新の会三党の提案した修正原案に賛成者として名前を連ねた立場であります。でありますから、しかも、自民、公明、日本維新の会三党には賛成者がいるわけでございますから、その附則にあった児童ポルノ漫画が今回の委員長提案の中には残念ながら削除されている、このことについて、改めて、修正原案に賛成した立場でお尋ねしたいと思います。
 動議提出者に、その理由を簡潔にお答えいただきたいと存じます。

○ふくだ委員 御指摘の検討規定に対しましては、関係団体を中心に、創作者の萎縮を招くおそれがあるといった反対の主張があったことも事実でございます。
 こういった意見を踏まえて、今回の実務者協議会におきましては、検討規定の内容について改めて検討を行いまして、児童ポルノの禁止法は実在の児童の保護を目的としたものであるから、単純所持については罰則化を図るけれども、漫画、アニメ、CG等に関する検討規定につきましては、関係団体等からの懸念を踏まえまして、今般の改正案から削除するという結論に至ったところであります。
 児童の将来に対する責任を私たちが果たすために、受給側への処罰、つまり単純所持を厳罰化した本改正案を早期に成立させることを優先させていただきました。

○土屋(正)委員 ありがとうございました。
 それでは、次の質問に移りたいと存じます。
 資料一をごらんいただきたいと存じます。お手元にお配りをした資料一は、平成二十二年五月四日の読売新聞の朝刊の記事であります。
 この「親は知らない PART5 女児襲う漫画手つかず」という記事をごらんいただきたいと存じます。
 この記事によると、「見ず知らずの男たちに女児が襲われ、やがて父親も暴行に加わる――。 二〇〇四年に市販された漫画のストーリーだ。描いた漫画家の男(四十二)はその二年後、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)の容疑で逮捕された。同法違反や強制わいせつなどの容疑で〇六年から〇七年にかけて四十一人が宮城・埼玉両県警に摘発された「女児愛好団」の中心人物とされる。 愛好団の中には、彼の作品の登場人物さながらの行為に及んでいたメンバーもいる。」以下省略しますが、「自分が女児を襲った際の映像をこの漫画家に提供した男もいた。 別の元メンバーは、この漫画家の作風を「構図もストーリーもリアルで群を抜いていた」と振り返る。」。
 さて、次のセンテンスに、「「日本から問題のある漫画が世界中に出回っている」。〇八年十一月にブラジルで開かれた「第三回児童の性的搾取に反対する世界会議」。日本は参加者から「児童の性的な姿態や虐待を描いたアニメや漫画を規制していない」と名指しで批判された。」以下ずっと続きますが、こういう記事でございます。
 この記事について、こういう漫画が表現の自由とか創作活動を萎縮させるとかという理由で野放しになっている、こういうことについて、野放しになっていいのかどうか、法の元締めであります谷垣法務大臣に御見解をお聞かせいただきたいと思います。

○谷垣国務大臣 法務大臣としてお答えいたしますと、今、これはコミックスですね、それを表現の自由の名のもとに放置していいのかどうかというお尋ねでございます。
 私は、こういうものの中には、子供の性をもてあそぶ極めて好ましくないものがある一方で、表現の自由ということは十分に尊重しなければならない、まことに難しい問題だと御答弁するのが法務大臣としての立場でございます。
 しかし、現行の児童ポルノ法は、これは議員立法でできておりますが、この議員立法を基本設計した人物は私でございます。これを国会に提案いたしましたときは、私は閣僚をやっておりましたので、提案者にはなっておりませんが、要するに、なぜ、実在の子供を写した写真は処罰できるけれどもコミックスが処罰できない構造になっているのかというのは、当時、日本発の児童ポルノが蔓延しているじゃないか、日本はきちっと取り締まりをすべきだという国際的な世論、強いものがございました。
 先ほどお引きになった三回目のブラジルの会議がございましたが、二回目は日本で行われたと記憶しております。私はその会議にも出席をいたしました。それから、お名前を出していいか悪いかわかりませんが、スウェーデンの女王陛下から、直接、日本はこのようなことを取り締まれないのかという御要請を受けたことが私ございます。
 そういうことを受けまして、各党派で協議をいたしました。これを本来取り締まるなら、コミックスのようなものを取り締まるのは、刑法百七十五条のわいせつ図画罪が、本来、刑法の立法者はそういうことを想定していたと思います。
 しかし、当時私が検討いたしますと、当時のリーディングケースは、いわゆるチャタレー事件の最高裁判決でございましたが、性の自由化というような風潮もあったんだと思います。表現の自由ということもそれは強く言われておりまして、刑法百七十五条では児童ポルノのようなものは取り締まるのはなかなか難しいぞという結論になりまして、そうすると、百七十五条は、善良な性風俗を守る、つまり社会の法益を守るという立場で立法されておりますが、それではなかなか難しい、それならば、実在の子供、こういうものが健全に育っていく中で、自分が写った写真のようなものが世間に出回っていたら、これは名誉毀損でもあるし、子供の健全な成長を害するということにもなるだろう。だから、実在の子供の権利を守る、つまり、社会的法益を守るという立法ではなくて個人的法益を守る罪として考えて、この立法をつくったわけでございます。
 したがいまして、コミックスは罰せられない。コミックスのようなものも、相当ある意味では弊害をまき散らすものがあると当時私どもは考えておりましたから、それについては、実在の個人の写真の方をまずこの立法でやって、後日の議論に任せようということで今日まで来たということでございます。
 私は、法務大臣としてお答えする枠を破って御答弁申し上げたのは、やはり課題としてこういうものは残っているという気持ちを、私、一政治家として強く持っている、このことは申し上げたいと思います。

○土屋(正)委員 過去の経緯について私もよく存じ上げませんでしたが、谷垣法務大臣が当時衆議院議員としてこの法律の骨格をおつくりになった、しかも、その骨格をおつくりになるに当たって、個々個人の写真あるいは映像という、個人の人権救済と、これがもたらす社会的害悪に対する、それを守るという法益、両方とも見据えつつ、まず前者の基本的人権を守るという方向を先へ進めた、こういうお話で、まことに情理を尽くした御答弁をありがとうございました。
 立法者にもお尋ねしようと思いましたが、谷垣大臣がああいうお答えをされましたので割愛させていただきますが、今御指摘のあった刑法第百七十五条、「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、」というこの百七十五条は、「チャタレイ夫人の恋人」の最高裁もありましたが、同時に、少なくとも、実在しなくても、創作物でも、それが社会に与える害毒が多い場合には取り締まりの対象になる、これを発動するかどうか、どこまで発動できるかどうかは別にして、こういう法の構成になっているんだろうと思います。
 でありますから、これが極端な、児童の、ひどい、いわゆるコミックというと何やらやわらかく聞こえますけれども、相当露骨な性的虐待を伴う漫画みたいなものも、創作物だからといってその罪を逃れられない、その社会的害悪を逃れることはできない、私はこのように申し上げておきますし、また谷垣大臣も内心そうお考えになっているのではなかろうか、こんなふうに拝察いたします。
 さて、三番目の質問でございますが、資料二をごらんいただきたいと存じます。
 資料二は、熊本三歳女児殺害事件であります。けさの新聞が、今のところ実在する女児の映像しか映していないのに対して、これは児童ポルノ漫画が犯罪に結びついたという案件であります。
 この案件を簡単に申し上げますと、早口で申し上げますが、平成二十三年三月三日、熊本市内のショッピングセンター内で、女児をトイレに連れ込んで強姦しようと考えていたところ、被害女児、当時三歳を見つけ、強姦は難しいもののわいせつ行為はできると考えて、同児をトイレ内に連れ込み、着衣の上から胸をなでた、同児が大声で叫び暴れるなどし、また同児を捜す声などが聞こえたために、犯行の発覚を恐れるために、同児の首を左手で絞めて殺害した。殺人並びに強制わいせつ致死に問われたものでございます。そして死体遺棄にも問われたわけでありますが、これの捜査過程の中で、この被告人宅から多数のわいせつ漫画が発見されたということになるわけであります。わかりやすく言えばシミュレーションをしていた、こんなふうにも考えられるわけであります。
 こういうことについて立法者はどのようにお考えか、簡潔にお答えいただきます。

○ふくだ委員 お答え申し上げます。
 土屋委員が、児童ポルノ漫画が犯罪を誘引し、児童に大きな被害をもたらしているというお考えは私も認識させていただきました。
 児童が犯罪に巻き込まれたり、権利を侵害された状況が長く続いたり、いつかみずからの児童ポルノが表に出てくるかもしれないという不安を持ち続けることをよしとする国会議員は多分誰もいないと思います。まさに土屋委員はその筆頭だと認識させていただきました。
 資料二及び三に関する資料を読ませていただきましたが、当然、あってはならない大変に悲惨な事件であると思います。
 ただ、今回の事件はまさに個別具体的な事件の一例でございますので、一般論として全てがどうかということはお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、一言で言うならば、土屋委員と同様に、二度と起きてほしくない犯罪でありますし、犯人に対して私も憤りを感ずるところでございます。

○土屋(正)委員 ありがとうございます。
 こういう共通の認識を持って、まず、この法律を成立させた後、さらに、いわゆる先ほど谷垣大臣がおっしゃったような個人の人権救済はもちろんのこと、そこから始まって、どのような社会に対する悪影響があり、それを法律として規制する意味があるのかということについて、今後とも、ぜひ私も一国会議員として考えていきたいと思いますし、また、立法者もぜひお願いいたしたいと思います。
 同時に、これは国家秩序の根本に関することでございますから、法務省としても、こういうことについて御議論し、研究していただくようお願いをいたしたいと思います。
 結びに、意見として申し上げたいと思います。
 私は、漫画あるいはコミック、呼び方はいろいろありますが、非常に可能性に富んだ、すばらしい創作活動だと思います。
 私たちの年齢になると、例えば「鉄腕アトム」、手塚治虫手塚治虫のシリーズは全部読みました、最後の「火の鳥」まで、復活の問題まで。それから、非常に温かい感じでは「サザエさん」。「ドラえもん」もありましたね。それから「ゴルゴ13」などは麻生副総理も愛読者ですが、私はその次ぐらいじゃなかろうかと思っております。それから、「まことちゃん」、「漂流教室」。ちばてつやさんが描いた「あしたのジョー」、最後に白くなって燃え尽きるというシーンは今でも覚えていますよ、全力を尽くした後。そのほか、「課長島耕作」、「沈黙の艦隊」、これは私の友人が描いた本であります。「ワンピース」。最近読んだ本の中には、「テルマエ・ロマエ」という、ローマ時代と現代とを行ったり来たりするとても楽しいあれがあります。
 私は、創作物というのは、まさに言論の自由とか表現の自由の中で出てくるものというのは、人々に勇気を与えたり希望を与えたり、それから失意の底に陥っている人を励ましたり、こういうことこそ創作活動の意味であって、先ほどの資料一に出てくるような、気持ち悪くて読む気にもならないような劣悪な表現をもってやっているものを保護する必要はない。
 よく自粛するという話がありますけれども、こういうのは自粛してもらわなければ困るんです。創作活動が萎縮するというけれども、豊かなところでどんどん創作活動をやってもらうと同時に、こういうことについては萎縮してもらいたい。
 心ある漫画家なら必ずこのことはわかってくれるはずだということを申し上げ、頑張って、これからも国会議員としてお互いに責任を果たしていくことをお誓いして、私の質問を終わります。
 きょうは、どうもありがとうございました。

○江崎委員長 次に、橋本岳委員。

○橋本(岳)委員 おはようございます。自由民主党橋本岳でございます。
 土屋委員に続きまして、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして質疑をさせていただきます。
 まず、この法案は、今回、提案者の皆様方が大変な御苦労をされて取りまとめていただきました。また、先ほど谷垣大臣から、その骨格をつくったのは私だという話がございましたけれども、ここに至るまで、さまざまな議員の方、もちろん、議員に限りません、いろいろな方々が力を合わせて、ここまでこの法律をつくってきていただいた、そしてまた、きょうこういう機会が持たれたということは、本当にそのいろいろな方々の協力があっての、努力があってのことでございます。
 まずもって、ここまでつくっていただいた御提案者の皆様方に心から敬意と感謝を申し上げたい、このように思っております。お疲れさまでございました。まだ終わっていませんから、成立するまで頑張りましょうということであります。
 ついては、せっかく御提案をいただきましたので、その改正点について幾つか、クリアにするという観点で質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 私からは、いわゆる三号ポルノと呼ばれているところについて、今回の改正で詳しくなりました。改正前は、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」、こういうことになっておりましたが、今回の案では、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」、こうなっております。ここら辺の言葉遣い、ちょっと一つ一つ尋ねていきたいと思います。
 まず、「殊更に」という言葉がございます。単に写っているじゃだめよ、殊さらに写っていないとだめよということなんだと思いますが、どういう意味でこの言葉が入っているか、教えてください。

○ふくだ委員 橋本議員にお答え申し上げます。
 「殊更に」とは、一般的には、合理的な理由なく、わざわざとか、わざととかという意味と解されるところでございますが、これは、当該画像の内容が性欲の興奮または刺激に向けられていると評価されるものかどうか判断するために加えさせていただきました。
 その判断は、性的な部位が描写されているのか、あるいは児童の性的な部位の描写が画像全体に占める割合、例えば時間だったり枚数だったりですね、そうしたものの客観的要素に基づいてなされるというものと考えております。

○橋本(岳)委員 そういうことで、多少制限をかけたということなんだろうなというふうに理解をいたします。
 続けまして、「児童の性的な部位」というふうな表現になっております。その後、括弧書きで少し具体的に書いておりますが、改めて、どのような意味でこの文言があるか、教えてください。

○ふくだ委員 具体的には、まず、衣服の全部または一部を着けない児童の姿態のうち、児童の性器等、例えば性器あるいは肛門または乳首が露出をしているというものを真に可罰的なコアの要素と捉えつつ、性器等のみでは処罰範囲が狭過ぎて、例えば裸の児童を後方から撮影して性器等が写っていない場合まで対象外となってしまうことから、性器の周辺、例えば臀部だとか胸部などを含む児童の性的な部位にまで対象を今回広げさせていただいたということで御理解いただきたいと思います。

○橋本(岳)委員 もう一点御確認をします。
 「露出され又は強調されている」ということになっております。「強調され」という言葉の意味を教えてください。

○ふくだ委員 露出のみでは、性的な部位が隠れてはいるけれども強調、誇張されている場合などが含まれないということになってしまいますので、性的な部位の強調も対象とすることにさせていただきました。
 具体的にどのような場合が強調に当たるかについては、描写の方法を含めた写真及び映像等の全体からこれは判断されるものであると思っております。例えば、着衣の上から撮影した場合や、ぼかしが入っている場合や、児童が意識的に股や胸を強調するポーズをとっていない場合であっても、性器等やその周辺部を大きく描写したり長時間描写しているかどうか、着衣の一部をめくって該当する部分を描写しているかどうかなどの諸要素を総合的に勘案しまして、性的な部位を強調していると判断されることはあり得るというふうに考えております。

○橋本(岳)委員 ありがとうございました。
 要は、こういう文言を追加するということで、単に、性欲を興奮させ刺激をするものというのは余り客観的とは言えないような条文にもともとなっていたわけですけれども、もう少し判断基準を追加して、わかりやすく、判断しやすくしたということなんだろうというふうに理解をしておりますが、そういう理解でいいか、確認してください。

○ふくだ委員 今回の二条三項三号の改正は、当該画像の内容が性欲の興奮または刺激に向けられているかを、性的な部位が描写されているか、児童の性的な部位の描写が画像全体に占める割合の客観的要素に基づいて判断をするために加えさせていただいたものでございます。このような判断は、従前、性欲を興奮させまたは刺激するものの該当性判断の一要素として行われてきたところでございますけれども、今回の改正は、このような判断を行うことを明記することにおきまして、三号ポルノの定義の明確化を図るという趣旨でございました。
 これによりまして、例えば、水浴びをしている裸の幼児の自然な姿を親が成長記録のために撮影をしたようなケースとか、あるいは、その画像の客観的な状況から内容が性欲の興奮または刺激に向けられていると評価されるものではない限り、殊さらに露出されまたは強調されているものとは言えずに、処罰の対象外になるということでございます。
 このように、「殊更に」との文言を追加することにより、画像の客観的な状況から三号ポルノの該当性判断を行うとの趣旨が明確になり、処罰の範囲をより明確にすることができるというふうに考えておるところでございます。

○橋本(岳)委員 ありがとうございました。
 まさにおっしゃるとおりで、処罰を加えるからには、きちんとその基準というのは明確でなければならないという原則的なことがあるわけでございまして、そういう意味で、今回の改正の中でそうしたことができたということはいいことだと思いますし、逆に言うと、では、子供の肌が写ったものは一切いけないのかというと、別にそんなことでもないよということもあるということで、ある意味で、子供の健全育成に害のある、まさに児童ポルノと呼ばれるような類いのものをいかにしてクリアに定義をするかということで、今回の提案者の皆様方、御議論された方々の御苦労があるんだろうなということを拝察する次第であります。
 では、続きまして、これは先ほど土屋議員も御発言になりましたけれども、漫画、アニメ、CG等について私なりの思いを申し上げさせていただきたいと思います。
 さっき土屋先生が挙げられたような事例が決して繰り返されるべきではない、私もそのように思います。私も子供の親、娘を持つ親でございますから、当然、自分の子供たちがそんな目に遭ったらどうなるか、どう思うかということは痛いほどわかるつもりでありますし、また、世の中には、目を背けたくなるような写真にとどまらず漫画、アニメ、CG等がある、あるいはインターネット等を検索すればそんなものは幾らでも出てくるということも承知をしておりますので、これをそのままにするのはどうなのかという問題意識自身、私も共有をするものであります。
 ただ、これは法律をつくる立法者の私なりの矜持の一つとして、やはり、きちんと検証されない仮説によって法律、規制をつくるべきではないと私個人としては思っております。
 さきに撤回された改正案の附則ではこのように書いてありました。「政府は、漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するものと児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、」云々、こういうことになっておりました。
 したがいまして、条文上、いいのか悪いのかという価値判断はしないのだ、ただ、関係性があるのかないのか調べるのだ、調査研究をするのだ、それは政府がやるのだ、こういう規定になっておりました。
 だということは、土屋議員がおっしゃりたかったことも僕はよくわかります。そうした犯罪をした人の家宅捜索をしてみたら、そうした児童ポルノの類いの映像、漫画等がいっぱいあった。あることでしょう、きっと。だから、そういうことがケースとして当然あったということは十分に承知をしております。そして、もしかしたら犯人の人がそういうものを見て犯行をしたいと思ったということもあり得ることだろうと十分に思います。
 その上で、しかしながら、では、その漫画、アニメ等を規制すれば児童に対する権利の侵害は減るのか。これが減るということが立証されれば、それは規制されるべきだという話になるわけですけれども、その因果関係を立証するというのは実はそんな容易なことではないと個人的に思っております。
 私も議員になる前は調査屋さんでしたので、社会調査屋さんの一人として、仮に私が調査研究をしろと言われたときにどうするのかということを考えてみますと、まず、児童の権利を侵害する行為をすること、あるいはそうしたことをした人、する人と、児童ポルノ等の漫画等が相関関係があるということがまず前提として必要です。
 そこの調査というのはまずすごく難しいですね。なぜか。要するに、犯罪をした人は家宅捜索されますから、そこに何冊漫画があったとか、こういうポルノがあったとかいうことがわかります。だけれども、それを幾ら積み重ねても相関関係の立証はできません。というのは、要するに、犯罪をしない人、ごく一般の健全な方がどのぐらいそういう類いのポルノ、漫画を持っているのかということと比較をして差がないと相関関係の立証になりません。
 要するに、犯罪をする人のことに、当然、それが新聞報道になりますから、こういうことがあった、ああいうことがあった、みんなそういう印象を持ちます。それは間違いなくそういう人もいると思います。だけれども、もしかしたら、もしかしたらというか、僕は十分に蓋然性のあることだと思いますが、別段犯罪を犯さない健全な社会人として生活をしている人だって、もしかしたらそういう本を個人で楽しんでいる人というのはいるかもしれません。別に、本屋で売っているものです、成人であれば買えます。それを個人で自分の部屋で眺めて楽しんでいる分には、何ら法規制をする社会的な害悪のある行為ではないということでありますから。
 では、その人たちに対してどうやって、あなたは何冊ポルノの類いの漫画を持っているんですかと。これは家宅捜索するわけにいきません。アンケートして、調査票にそんな質問を書いたって、真面目に答えるかどうかわからない。センシティブクエスチョンという言い方をしますけれども、その回答が信頼性がどのぐらいあるかということが疑われる。
 仮にここで、ふくだ峰之先生、何冊持っていますかといって、もしかしたら、正直にお答えになるかどうか、それはわかりませんけれども、いや、ふくだ先生はきっと正直にお答えになると思いますが、ただ、それが本当に正しいかどうか検証するすべが誰にもない。
 したがいまして、相関関係があるかどうかの調査そのものがまず非常に困難だということがあります。
 そして、仮に相関関係があった、犯罪を犯した人の方が例えば児童ポルノの漫画をたくさん持っているということが立証されたとします。だけれども、今度は、これが因果関係なのか相関関係か、そこの鑑別がまた一苦労があります。
 要は、単に、相関があるね、だけれども、実は別の原因があって、その原因によって漫画も好きだったし犯罪もしてしまうことになったということであれば、児童ポルノの類いの漫画を仮に規制して世の中からなくしましたということをしても、犯罪は減らないということになります。そうかもしれません。わかりません。
 ですから、そうしたことをどうやって排除するのかということは、では、時系列的に見ていこうとか、いろいろ社会科学のさまざまな方法論の中で検討をしていかなければなりませんけれども、なかなか容易なことではございません。きちんと慎重な手続に沿って結論を出していかなければならない、まさにセンシティブな問題だというふうに思っております。
 したがって、私は、自民党内の議論のときに、どういう調査を考えているんですかということを質問しました。そのときには、ちょっと正確ではないかもしれませんけれども、まだ具体的な想定はしていませんとか、その類いの返事が返ってきました。だから、私は、この項目は削除すべきだということを党内で申し上げました。
 自然科学において、あるものが存在をするかどうか立証するというのは、一例存在すれば、STAP細胞はあると言っていることが、今のところ、本当かどうか立証されていませんが、誰かが一例実験に成功すれば、あるということになる。それが自然科学です。
 だけれども、社会科学は実験ができない。その中でどうやってやるか。そのために、調査とか観察とかいろいろな手段があるのであって、そうしたことの厳密な手順を踏まないと、統計というものは容易に、統計はうそをつくという、まさにそういったタイトルの本がありますけれども、つくる人も読む人も、きちんと、もっともらしい統計だとかそういうものは疑って考えないといけないと私は経験的に思っていますし、それをつくるという立場になったとしても、非常に慎重なことが必要なのであって、それで初めて結論が出せることだと思っています。
 結論が出て、それで規制をしようというんだったら、僕は、すごく、もうもろ手を挙げて賛成をします。だけれども、現行では、そういう調査をしようということを法律に書くというのが最初の提案でございましたから。
 日本の社会というのは、パトカーがうちの前にとまっているだけでも、あのうち、何かあったの、こう言われるようなところがございます。法律そのものにいい悪いということの価値判断は書いていないとしても、法律に書いてあるということで、創作者が萎縮するかどうかはそれは創作者の問題ですけれども、少なくとも周りの人はそう思うということになるわけであって、私は、規制というものをするのであれば、きちんと社会科学的に裏づけのある有効な規制をしなければならない、そうではない規制というのは、国会として、立法府として、そうした規制というのはつくるべきではないと思っておりますので、今回、そういうことは外すべきだということを申し上げました。今申し上げた点についてどう思うか。
 それからもう一つ、あわせて質問をします。
 ただ、今までるるこの規制を外すべきだという話をしましたが、そうかといって、では、ずっと放置しておいていいのかと言われると、私も、必ずしもそれについて、全く、もう放置したままでいいんだと断言をする自信もございません、正直言って。本当に目を覆うようなものもあるということも認識をしております。土屋委員のおっしゃりたかったこともよくわかります。
 だとすれば、それは今後、別に法律に書かなくたって調査検討はすればいいんだから、されるべきかもしれませんし、自主規制という言葉が出ましたけれども、そうしたこともあるべきかもしれません。その辺もあわせて、提案者から一言いただきたいと思います。

○ふくだ委員 橋本委員の御指摘は、まさに実務者協議における基本的な考え方と同じ方向を向いておると思います。
 本改正案は、あくまで実在する児童の権利保護のためのものであって、仮説に基づく判断による立法は、似つかわしいとは思っておりません。一つの個別事件を一般論として判断するのではなくて、科学的に検証された際には、本改正案の対象である実在する児童の権利保護とは別の問題として取り扱う必要があるのではないかというふうに考えております。
 また、漫画、アニメ、CGを今回検討事項から外したからといって、何をやってもよいということでは決してないんだと思います。表現の自由は、民主主義国家の運営において最も大切な国民の権利であることは間違いありません。だからといって、何を表現してもよいということとは異なるんだろうと思います。
 児童ポルノに類する創作物は、創作者あるいは関係団体等のまずは自主的な取り組みによって対応すべきものであるということを認識しておるところでございます。

○橋本(岳)委員 ありがとうございました。
 この法律によって児童の権利の侵害の被害が一件でも減ることを願って、質問を終わります。

○江崎委員長 次に、國重徹君。

○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。
 本日は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。
 まず冒頭、本日の委員会には、児童ポルノの被害児童を初め子供の人権を守るために活動されてきて、また、我が党も何度も意見交換をさせていただき大変お世話になっております、日本ユニセフ協会アグネス・チャン大使にもお越しいただいております。アグネス・チャン大使、御多用の中、本当にありがとうございます。
 それでは、質問に入らせていただきたいと思いますけれども、警察庁によりますと、二〇一三年の国内の児童ポルノ事件の検挙件数は千六百四十四件、被害児童は前年比二一・七%増の六百四十六人で、いずれも過去最高であります。
 私には五歳の娘がおりますけれども、その娘と同じ五歳のときから十一歳のころまで六年間、親戚のおじから性的虐待を受け、その様子を写真撮影されていた女性の証言がございます。日本ユニセフ協会のホームページに全文が公開されておりますけれども、その一部を抜粋し、読み上げさせていただきます。
 虐待が始まったころ、自分が何をされているのかわからず、おじの要求に笑顔で応えていました。おじの行為は年々エスカレートし、小学校に上がり性的な行為の意味がわかるようになったこともあり、私は虐待を拒否しようとしましたが、このことが明るみに出ればおまえは警察に捕まる、両親に捨てられると言われました。
 あの写真がどうなったのかを考えると恐ろしくて、中学生に上がってから、私はリストカットや自殺未遂を何度も繰り返しました。その後、インターネットの使い方を覚えてからは、ネット上に自分の写真がばらまかれていないかと、何かに取りつかれたようになって毎日探しました。そこで、日本人だけではなく、外国の子供たちが写っている児童ポルノを目にして、背筋が寒くなり、何度も嘔吐して泣きました。でも、自分の写真を探すことがやめられないのです。
 好きな人ができても、あの写真がある限りは、自分には絶対に結婚もできないし、子供を産むこともできないと考えています。今のように児童ポルノが簡単に手に入る世の中では、私はとても過去を忘れることはできません。自分の人生は終わってしまったように感じます。もし世の中を変える力のある人がいるのなら、どうか私を助けてください。
 この女性のように、子供のときに性的な虐待を受けて、しかも、その虐待の記録がインターネット等を通していつ世界じゅうにばらまかれるかもしれない恐怖にさいなまれている人たちがいます。この不安、恐怖は半永久的であります。地獄の苦しみを感じている人たちに、また傷ついた子供たちに寄り添えない政治であってはならない、私はそう思います。
 OECD加盟国三十四カ国の中で、児童ポルノの単純所持を処罰していないのは日本だけです。本改正案では、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持した者、同様の目的でこれに係る電磁的記録を保管した者についての処罰が定められており、一日も早く成立させるべきだと考えます。
 他方で、捜査権限の濫用によって国民生活が脅かされるようなことがあってもなりません。しっかりとした法整備、運用のチェックが必要であります。
 そこで、以下、法文に基づきまして、具体的に質問をさせていただきます。
 先ほど橋本岳委員の方からも、児童ポルノの定義、触れられておりましたけれども、私も若干触れさせていただきます。
 本改正案の二条三項で、児童ポルノの定義が規定されております。二条三項の二号、三号には、これは現行法上も規定されておりますけれども、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とありますけれども、この性欲を興奮させまたは刺激するものかどうかの判断は、誰を基準とするのでしょうか。刑事局長にお伺いいたします。

○林政府参考人 現行法の二条三項二号及び三号にいいます「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といいますのは、これは一般人を基準に判断すべきものと解されていると承知しております。

○國重委員 ありがとうございます。
 今、性欲を興奮させまたは刺激するものかどうかは、一般人を基準に判断すると答弁をいただきましたけれども、なぜ一般人を基準に判断するのか、その理由について刑事局長にお伺いいたします。

○林政府参考人 一般人を基準に判断する理由でございますけれども、その理由を明らかにした裁判例の集積はまだ十分ではございません。そのため、法務当局として確たることは申し上げられないのでございますけれども、児童ポルノ禁止法の制定時には、提案者からその理由として、通常、構成要件に規定してあることは、一般通常人というものを基準としている旨の御答弁がございました。また、地裁レベルではありますけれども、その理由につきましては、法の一般原則からして、その名宛て人としての普通人または一般人を基準として判断するのが相当である、このような言及をする裁判例もあるものと承知しております。

○國重委員 ありがとうございました。法の一般原則等から理由を述べていただきました。
 では次に、児童ポルノの所持罪について、動議提出者にお伺いしたいと思います。
 児童ポルノの所持罪、七条一項について、「自己の性的好奇心を満たす目的」が要件とされておりますけれども、この目的を要件とした趣旨についてお伺いいたします。

○遠山委員 國重徹議員の御質問にお答えする前に、一言、私からも、本日傍聴をされておりますアグネス・チャン日本ユニセフ協会大使初め関係者の皆様が、六年前、それ以上前から、児童ポルノの規制、処罰について、国際社会の中で、児童を守ることについて不十分ではないかということで、さまざまな啓蒙活動をされてまいりました。我が党も大変な示唆を受けたわけでございますし、今回まとめさせていただいた起草案の中にも、皆様の努力が大きく反映をされております。そういう意味で心から敬意を表したいと思います。
 その上で、ただいま御質問をいただきました七条一項、「自己の性的好奇心を満たす目的」を要件とした趣旨でございますが、いわゆる単純所持と申しましても、さまざまなケースがあると想定されます。例えば、嫌がらせなどによりメールでそういったものを送りつけられた場合、あるいは、本人がネットサーフィンをしている間に、意図しないアクセスで児童ポルノが自分のコンピューターに入ってしまう場合、あるいは、パソコンがウイルスに感染をして勝手に児童ポルノをダウンロードした場合、また、インターネット上の掲示板に児童ポルノが掲載された場合における、掲示板の管理者やサーバーの管理者が、自分がつくったサイトにそれが投稿されてしまうことによって事実上持ってしまうという場合がございます。
 そういった場合、それらを処罰するというのは合理的ではないということでございますので、処罰範囲を合理的に限定するために、「自己の性的好奇心を満たす目的で、」というものをつけて、所持の対象を明確化したわけでございます。
 なお、この「自己の性的好奇心を満たす目的」という文言は、現行法でも、第二条第二項の児童買春の定義において用いられておりますので、解釈上確立をされております。
 また、所持の目的につきましては、所持の態様あるいは分量、それから所持している対象の内容等の客観的事情からの推認によって立証される必要がある、こういうことになっております。
 以上です。

○國重委員 詳しい答弁、ありがとうございました。
 ちょっと私の後の質問にもかぶってくるかと思いますけれども、一応、念のため質問をさせていただきます。
 先ほどの御答弁によりますと、自己の性的好奇心を満たす目的を児童ポルノ所持罪の要件にした趣旨は、処罰範囲を合理的に限定する点にあるという答弁でありましたけれども、先ほど冒頭聞きました児童ポルノの定義、これは、一般人の性欲を興奮させまたは刺激する児童ポルノをポルノということでした。
 そうしますと、一般人の性欲を興奮させまたは刺激する児童ポルノを、自己の性的好奇心を満たす目的を持たないで所持するケースは想定し得るのか、想定し得るとして、具体的にどのようなものが考えられるのか、これについて質問したいと思います。恐らく、先ほどの答弁の中にもいろいろな、嫌がらせメールとかが出てきましたけれども、そのようなケースでいいのかどうか、改めて確認をいたします。

○遠山委員 自己の性的好奇心を満たす目的を持たずに児童ポルノを所持するケースはあるかということですが、端的に答えれば、これはあり得ると思います。
 例えば、大学の研究者が研究目的で児童ポルノを、残念ながら、今回の改正案が成立しないと、児童ポルノを持っていること自体は違法化がまだされておりません。ですから、残念ながら、いろいろな形で流通をしているわけでございますから、今は所持することはさほど難しい状況にないわけでございます。そういう中で、例えば、研究目的でそれを所持するに至った場合。あるいは、マスコミの報道記者さんが取材の過程で、取材上の必要性から児童ポルノを所持するに至ったような場合ということもあり得るかと思いますので、それらは、自己の性的好奇心を満たす目的での所持ではないと認められた場合には、第七条一項の処罰規定は適用されないということでございます。
 もちろん、個別具体的なケースはいろいろあります。もしかしたらうそをついている可能性もあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、先ほどの答弁でも申し上げましたように、所持の態様とか分量とか所持しているものの内容等から、客観的に、そういった目的を持って所持しているのか、していないのかということを判断するということになろうかと思います。

○國重委員 よくわかりました。
 次の質問に行きます。
 具体的な想定ケースはわかりましたけれども、ただ、自己の性的好奇心を満たす目的のような、個人の内心に踏み込むような主観的要件を課すことになれば、捜査機関による自白強要を誘発させることにならないかというような危惧の声もございます。
 これについて、今、遠山議員の方からも答弁がございました。さまざまな客観的な事情によってまた判断していくんだというようなことがありましたけれども、改めまして、自白強要を誘発することにならないか、これについて質問をいたします。

○遠山委員 お答え申し上げます。
 ただいまの点は大変重要な点だと思っております。自己の性的好奇心を満たす目的を持っていたのかどうかということは、これは主観的要素が大変強いということもございますし、個人の内心に踏み込むような要素があると、これは捜査機関による自白強要につながるのではないかという懸念が一部で示されていることは、私ども立案者の中でも認識をいたしております。
 結論を申し上げますと、先ほど来申し上げておりますとおり、客観的事情からの推認によって立証されないと、性的好奇心を満たす目的を持っているとは判ぜられないわけでございます。よって、捜査当局による自白の強要を誘発することはあってはならないということでございます。
 実は、これは平成十一年からの現行法におきましても、先ほど申し上げましたように、第二条第二項の児童買春の定義において用いられておりますので、解釈上も、また運用上もある程度確立をされていると考えておりますところ、捜査当局による恣意的な運用を招く規定ではないということを提案者として申し上げておきたいと思います。

○國重委員 ありがとうございます。
 では、念のため、政府参考人にもお伺いいたします。
 所持している対象の内容だけで自己の性的好奇心を満たす目的があるかどうか、これを推認するのであれば、いわゆる三号ポルノの定義に該当するものは全て自己の性的好奇心を満たす目的があると評価されるおそれがあると考えます。しかし、そうではなくて、今、遠山議員の方も答弁がありました、所持している対象の内容のほかに、所持に至った経緯、また態様、分量等の客観的事情も踏まえて、自己の性的好奇心を満たす目的があるかどうかを慎重に判断するという理解でいいかどうか、お尋ねいたします。

○林政府参考人 まず、一般論として申し上げますと、目的犯におけるその目的の立証というものは、まずは、基本は、当該具体的事案におけるさまざまな客観的な事情というものを基本としつつ、被疑者、被告人を含む関係者の供述をも踏まえて行うものと考えております。
 したがいまして、自己の性的好奇心を満たす目的についても、御指摘のとおり、所持に係る児童ポルノの内容だけで判断するのではなく、当該児童ポルノを所持するに至った経緯でありますとか、その内容とか、あるいはその分量、その所持の態様など、さまざまな事情を踏まえて慎重に判断することになるものと理解しております。

○國重委員 では、少し細かくお伺いします。動議提出者に伺います。
 改正案七条一項の「自己の意思に基づいて所持」「保管するに至った者」とはどのような意味でしょうか、伺います。

○遠山委員 お答え申し上げます。
 これは、端的に申し上げると、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持、保管した者を限定する、明確化する趣旨で付加されたものでございます。
 これは、所持あるいは保管開始の時点において、自己の意思に基づいて所持、保管するに至ったことが必要である、よって、この点を証拠により立証することを要するという趣旨でございます。

○國重委員 では、同じく改正案七条一項の「当該者であることが明らかに認められる」とはどのような意味か、これも動議提出者に伺います。

○遠山委員 先ほど申し上げた「自己の意思に基づいて所持」「保管するに至った」の後に、さらに今回の改正案では、「当該者であることが明らかに認められる」ということをあえてつけさせていただいております。これは、取得の時期などを含めて、自己の意思に基づいて所持するに至った時期とか経緯などについて、できる限り客観的、外形的な証拠によって確定するべきであるという趣旨を明確にするために加えたものでございます。
 よって、現在でも、提供目的の所持罪について、実際の捜査、訴追の実務におきましては、取得の時期、経緯について、仮に自白が得られた場合でも、必ず起訴前にその裏づけ捜査をする取り扱いになっているわけでございまして、自己の意思に基づいて所持するに至ったと思われる者についても、本当に当該者であるかどうか、しっかりとした捜査に基づいて客観的な証拠が集められ、それに基づいて立証されなければいけない、こういう趣旨でございます。

○國重委員 ありがとうございます。
 では、次に、本改正案の附則について、経過規定についてお伺いいたします。
 附則一条二項には、「この法律による改正後の第七条第一項の規定は、この法律の施行の日から一年間は、適用しない。」という経過措置が設けられておりますけれども、この趣旨について動議提出者に伺います。

○遠山委員 お答え申し上げます。
 附則第一条二項の趣旨でございますが、これは、先ほども申し上げましたように、現在は、児童ポルノの単純所持は犯罪化されておりません。所持できるということでございます。今回の改正案が成立をして施行されると、これが処罰の対象に、もちろん性的好奇心を満たす目的を持って所持した場合でございますけれども、処罰の対象になるわけでございますが、施行前から所持している児童ポルノを罰則の適用対象となる前に適切に廃棄等の措置を講じていただけるようにする猶予期間として、一年罰則を適用しないという規定を設けたわけでございます。経過措置と理解していただいても結構かと思います。

○國重委員 ありがとうございました。よくわかりました。
 一年後、法を法律の施行の日から一年間は適用しないということですけれども、それまでに、児童ポルノを所持していた人も今回の処罰の対象にしなければ、児童ポルノがいつばらまかれるかわからない、この不安、恐怖にさいなまれている人たちを救うことはできない。適切な今回の経過規定であると思います。
 次に、児童ポルノの加害者というのは、処罰を受けて何年かたてば、刑務所に入ったとしても出所する。ただ一方で、被害児童というのは、その肉体的、精神的な傷というのはそうそう癒えるものではありません。この被害児童の保護というのも極めて重要なことになってくると思います。
 現行法における被害児童の保護のあり方について、動議提出者としてどのような問題点があると考えているのか、お伺いします。

○遠山委員 お答え申し上げます。
 先ほど来、土屋議員の御質問の中でもたびたび言及がありました、児童ポルノやその延長線上にあったかもしれない犯罪等の被害を受けた児童の保護に関してどのような問題があるかということでございますが、現行の被害児童の保護に関する問題点としては、大きく二つあるんだろうと考えております。
 一つは、保護のための措置をどのような機関が実施し、そして責任を負うのか、これが法律の規定上不明確であることでございます。二つ目の問題点は、保護の制度についての専門家による継続的な検証及び評価というフォローアップ体制の制度的な手当てがなされていないということが挙げられると思っておりまして、それらについて、対応を今回の改正案の中で書かせていただいたということでございます。

○國重委員 今、遠山議員の答弁で、二つ大きく問題点があることがわかりました。
 では、現行法における被害児童の保護に関する問題点の一つが、被害児童の保護のための措置をどのような機関が実施し責任を負うのかが不明であったとのことですが、この問題点を受けて本改正案ではいかなる改正をするのか、その趣旨とともにお伺いいたします。

○遠山委員 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、規定上、どの団体、機関が責任を持って児童の保護を実施するのか不明確であるということで、今回の改正案では、実施主体と責任の所在を明確化するため、被害児童の保護のための措置を講ずる主体の例示を置くこととしております。
 具体的には、第十五条の措置につきまして、主として、児童福祉法に基づく相談、指導、一時保護、施設への入所等の措置の実施が想定されておりますことから、同法で保護に関する権能が与えられている児童相談所及び福祉事務所などが実施することが考えられます。
 このため、法文の中で、児童相談所、福祉事務所及び児童福祉法を所管する厚生労働省を例示として挙げたところでございます。
 加えまして、法務省は、児童ポルノ禁止法を所管しているだけでなく、人権擁護に関する業務を所管し、法務局職員及び人権擁護委員が相談業務を通じて被害児童の権利擁護を図る役割があるということにも鑑みまして、法務省も関係行政機関として列挙することとしたところでございます。
 また、都道府県警察については、犯罪被害に遭った児童を最初に保護することが多いということでございますので、これも例示の中に含めたところでございます。
 以上です。

○國重委員 ありがとうございました。
 では、問題点の二点目、被害児童の保護のための施策の専門家による検証、またフォローアップ体制の制度的な手当てが現行法ではなされていないということも問題点の一つに挙げられましたけれども、それを受けて本改正案ではいかなる改正をするのか、趣旨とともにお伺いいたします。

○遠山委員 お答え申し上げます。
 被害児童に対する保護に関する施策の充実には、これは専門的な知識経験を有する者による継続的な検討及び検証が不可欠であると思っております。先ほど来申し上げておりますとおり、現行法にはその旨の規定がない、制度的な手当てがなされていないという問題があるわけでございます。
 そこで、被害児童に対する保護の措置としては、主として、先ほども申し上げましたように、児童福祉法に基づく措置が想定されておりますので、同法を所管する厚生労働省に設置をされております社会保障審議会におきまして、被害児童の保護の措置に関する施策について専門家による継続的な検証及び評価を行わせ、フォローアップの体制を制度化することにいたしております。
 また、この被害児童は犯罪被害者でございます、児童ポルノの被害児童は犯罪被害者という面もあるわけでございますので、この犯罪被害者の保護の観点からも、総合的に施策の検証、評価が必要であると考えております。そこで、内閣府に設置をされております犯罪被害者等施策推進会議にも、社会保障審議会と同様の役割を負わせるという規定をつけさせていただきました。
 ですから、今後は、この法律が成立した後は、社会保障審議会、これは厚生労働省所管です、それから、内閣府にございます犯罪被害者等施策推進会議におきまして、適時適切に施策の実施状況の検証等が行われ、そして、厚生労働省等におきまして、同審議会の意見を踏まえて、被害児童の保護に関する施策の充実が図られることになることを期待しているところでございます。
 なお、私個人的には、國重議員が本日の冒頭引用されました、小さいころに意識なく児童ポルノの被害に遭って、大人になってから、成人してから自分がどういうことをされたのかということに気づき、そして、今インターネットがこれだけ普及をしている時代でございますので、自分の写真がばらまかれているのではないかという精神的苦痛から自殺未遂に至るというような方の例があるわけでございまして、こういう方々は今成人でございますが、私は、幅広く考えれば、犯罪被害者という概念の中に含まれるのではないかというふうに思っておりまして、内閣府の犯罪被害者等の協議の場において、そういう方々に対してもどのような対応あるいは支援を政府機関がすべきか、関係機関がすべきかということについてもぜひ協議をしていただきたいと思っているところでございます。
 以上です。

○國重委員 ありがとうございました。大変重要な指摘も答弁の中でいただいたと思います。
 私も、きのう、さまざま役所の皆さんともお話をしていましたけれども、やはりそこで感じたのが、よく言われる縦割り行政の弊害というか、連携というのが、連携は一応やってはいるんだけれども、統括して被害児童の保護のためにしっかりと適切なコーディネートをするようなところが余りないなということを実感しました。
 これは、私は国民の代表として、率直に違和感というか、そういうものを感じましたので、今回のこの十五条、また十六条の二、非常に重要な法文だと思います、これをしっかり実効あらしめるために、私もしっかり今後チェックしてまいりたいと思います。
 では次に、厚生労働省にお尋ねいたします。
 性被害を受けた被害児童の保護、支援のための具体的な施策が諸外国に比べておくれているというふうに聞くこともございますけれども、この支援の取り組みの現状、これが一点目。
 二点目として、保護者や身近な人が加害者である場合、出所すれば再び接触するかもしれないという不安に児童がさいなまれ続けることになります。再被害のおそれのない安全な場所で継続的、専門的なケアを受けられること、被害をきっかけに崩壊した被害家族の機能を再構築するために、被害児童を支えるべき家族も含めた支援に取り組んでいく必要があると考えますけれども、現状の課題を踏まえた今後の取り組みについて伺います。

○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 性被害を受けた児童に対する支援でございますけれども、まず、児童相談所におきまして、児童心理司によるカウンセリング、それから児童福祉司によります指導援助を行うとともに、緊急の保護を必要とする場合には一時保護を行っております。また、医療的なケアが必要な場合、病院などの専門機関をあっせんしておりますし、さらに、子供の生活の立て直しが必要な場合、こうした場合には児童福祉施設に入所させる、こういったような支援を実施しているところでございます。
 また、今先生御指摘ありましたように、保護者の一方が加害者である場合といったことが多いわけでございます。そうした場合に、児童との関係構築、しっかりした受けとめをつくるという観点から、加害を行っていない保護者に対する相談支援といったような総合的な取り組みも行っているところでございます。
 こうした児童相談所の取り組みを支援いたしますために、厚生労働省におきましては、児童相談所性的虐待対応ガイドライン、これを策定いたしますとともに、児童相談所におきます性暴力被害事案への対応に関する実態調査、これを実施しております。こうしたものの成果を児童相談所に提供して、また活用していただいているところでございます。
 それから、あわせまして、性被害を受けました児童への支援に関する調査研究を実施いたしておりまして、そうした中で、取り組みを進めるに当たっての課題といたしまして、児童相談所の体制の強化、あるいは、今般の法案でも指摘されております関係機関との連携体制の構築、こういったものが必要であるという御指摘を受けております。
 そこで、こうした課題への対応といたしまして、一つは、児童相談所の職員の対応能力向上を図るための研修の実施、それから、医療機関や弁護士等との連携によります児童相談所の医療的あるいは法的対応力の強化、それから、児童相談所NPOなど民間団体との連携によります相談対応や保護者への指導の実施、こういった取り組みを進めているところでございます。
 今般の法案も踏まえまして、また、性被害を受けた児童の保護に関する取り組み、この充実に努めてまいりたいと考えております。

○國重委員 ありがとうございました。
 では次に、法務省に伺います。
 被害を受けた子供たちを早急に見つけ出し、子供たち一人一人に応じた人権の擁護をしていくことも重要であると考えますけれども、人権擁護に関する現在の取り組み、また、現状の課題を踏まえた今後の取り組みについて伺います。

○萩原政府参考人 お答え申し上げます。
 法務省の人権擁護機関では、性被害を含む子供の人権問題につきまして、全国の法務局の窓口、電話、メールなどで人権相談を行っております。
 特に、子供の人権問題につきましては、フリーダイヤルの電話相談窓口の子どもの人権一一〇番、そして、メール相談窓口のSOS―eメール、これらを設けているほか、全国の小中学生に相談用の便箋兼封筒を配付し、児童生徒に悩み事を書いて郵送してもらい、それに返信して相談に応じるという子どもの人権SOSミニレターの取り組みを行っております。
 こういった人権相談などにより、児童に対する性的虐待など人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として関係者の聴取等の調査を行い、児童相談所などの関係機関と連携協力して、被害児童の保護を図るなどの措置を講じているところでございます。
 今後の課題といたしましては、これらの相談窓口についてより一層適切な周知に努めるとともに、先ほど委員が言われましたとおり、人権侵犯事件について関係機関との連携を強化し、被害者の救済に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。

○國重委員 ありがとうございました。
 今、一層の周知にも努めていきたいという答弁がありましたけれども、私も弁護士として、子どもの権利委員会というところに所属して、子どもの人権一一〇番、こういったことも数年担当してまいりました。
 そして、感じたことが、一回、それでデータを出したんですけれども、そこにかかってくる電話というのが、ほぼ、九割五分ぐらい、保護者、また、おじいちゃん、おばあちゃんとかいうような成人の方からかかってくる電話で、ターゲットにしている子供からかかってくるのはごくわずかということで、我々も、その相談の時間帯とか曜日とかを変えたり、また、どうやってそれを周知していくのか、それぞれの学校に法教育で入っていくときにペーパーを配ったり、それを継続して持ってもらえるようなものをつくったり、いろいろ考えてまいりましたけれども、また現場の声を聞いてより一層のこの周知、特に性的被害というのは言いにくいものだと思いますので、そういうことも踏まえた適切な措置をしっかりと進めていっていただきたいと思います。
 時間の関係で、最後、一問だけにします。
 文科省にお尋ねいたします。
 先ほど、冒頭申し上げましたとおり、警察庁によりますと、二〇一三年の国内の児童ポルノ事件の検挙件数は過去最高になっております。その大半の事件、八三・六%にインターネットが関連していると報告されております。
 子供が自分の裸を自分で撮影して交際相手や知人にメールで送るなど、子供自身が児童ポルノを作成、提供するケースも頻発しております。元交際相手らの画像を別れた後にインターネット上で流出させる、いわゆるリベンジポルノもあります。また、LINEが援助交際の巣窟になっているとも聞きます。
 児童が安全にインターネットを利用し、危険から身を守れるようにする必要があると思いますけれども、児童を性犯罪から守るための情報モラルに関する教育の現状と課題、今後の取り組みについて伺います。

○藤野政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、児童生徒がインターネットを利用した犯罪に巻き込まれないようにするためには、情報モラルの育成というのは大変重要だと認識しておるわけでございます。
 そのため、文部科学省では、学習指導要領におきまして、情報モラルを身につけさせることを明記しております。これに基づきまして、各学校において、インターネット上の犯罪や違法・有害情報の問題を踏まえた指導を行うこと、違法な行為をもたらす問題について考えさせる学習活動を行うことなどの具体的な指導を行うこととしているところでございます。
 また、SNSなどによりますトラブルなど新たな課題に対しましては、昨年度、教員が指導する際に役立つ動画教材、あるいは教員向けの指導手引書を作成いたしまして、全国の教育委員会に配付し、普及を図っているところでございます。
 さらに、スマートフォンなどのトラブル、犯罪被害の事例、その対処方法などを盛り込んだ児童生徒向けのリーフレットを作成し、全国の小中高等学校に配付するとともに、関係省庁、関係団体が連携した啓発講座でございますe―ネットキャラバンを実施するなど、情報モラルの育成に関しますさまざまな取り組みを推進しております。
 文部科学省といたしましては、引き続き関係省庁でございますとか関係団体等と連携しながら、学校における児童生徒の情報モラルの育成に係る取り組みを推進してまいりたいと存じます。

○國重委員 ありがとうございました。
 被害児童の苦しみ、また児童ポルノの被害者の苦しみが少しでも和らぐよう私もこれからも一層尽力してまいることをお誓いして、本日の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○江崎委員長 次に、枝野幸男君。

○枝野委員 動議提出者の皆さんには、お疲れさまでございます。
 基本的に提出者の皆さんにお尋ねをしますので、その上で、政府の側は基本的にはそれで間違いないですねという確認をとりたいと思っています。そうであるならば、長々と答弁しないでいただいて、結論だけ端的にお答えください。でないと、ちょっと時間が足りないかと思っております。
 まず、起草案の七条一項で新設をされますいわゆる所持罪について、これには、「自己の性的好奇心を満たす目的」という規定と、「自己の意思に基づいて所持」「保管するに至った」という規定が入っております。この両者の関係について、まず起草案提出者の方に御説明をいただきたいと思います。

○階委員 まずもって、枝野委員におかれましては、この間、平成二十一年の実務者会合の中心メンバーとして、この児童ポルノ禁止法の改正作業に携わっていただいて、その御努力があったればこそ、今こうしてここに成案が出される運びになったものと理解しております。本当に御努力に感謝を申し上げます。
 その上で、御質問の件でございますけれども、まず、この規定は、実務者協議の結果、自己の性的好奇心を満たす目的での所持罪との骨格を維持しつつ、その所持について、自己の意思に基づいて所持、保管するに至ったという文言を追加することとされたものです。
 「自己の性的好奇心を満たす目的」は、立件対象となる所持の時点での目的についての要件でありますが、「自己の意思に基づいて所持するに至った」とは、当該所持を開始した経緯及びその時点での認識についての要件であります。
 そして、両者の関係につきましては、自己の性的好奇心を満たす目的というものが、いわゆる目的犯としての構成要件を意味するものであるのに対しまして、自己の意思に基づいて所持、保管するに至ったということは、処罰範囲に限定をかけるもので、自己の意思に基づいて所持するに至った時期やそのような所持に至った経緯などを証拠により立証することを要請する趣旨であることを明らかにするものであります。

○枝野委員 まず、法務省の政府参考人に、今の理解でよろしいですね。

○林政府参考人 両者の関係につきましてただいま提案者から御答弁ありましたが、基本的に、その内容、同様の理解をしております。

○枝野委員 次に、この七条一項の適用の対象ですが、いわゆる児童ポルノを例えば第三者から勝手にメールで送りつけられたであるとか、それから勝手にかばんの中に放り込まれたとか、自分のロッカーの中に入れられてしまったとかいうような場合は、自己の意思に基づいて所持するに至った者に該当しない、したがって、今件の処罰対象にはならない、こういう理解でよろしいですね。

○階委員 おっしゃるとおりでありまして、基本的には、今挙げられた事例については自己の意思に基づいて所持するに至った者には該当しません。
 もっとも、送りつけられた時点では自己の意思に基づくというものでなかったとしても、その後、メールに添付された児童ポルノ画像を開き、当該ファイルが児童ポルノであることを認識した上で、性的好奇心を満たす目的を持って、これを積極的な利用の意思に基づいて自己のパソコンの個人用フォルダに保存し直すなどしたときは、その時点で新たに自己の意思に基づいて所持するに至ったということが認められると考えております。

○枝野委員 今の後者の点は大事なところだと思いますが、これは他の質問者が確認をしていただけると聞いておりますので、そこは