後も大変ですねえ。
さいたま地裁秩父支部H24.3.30
第3 争点に対する判断
2 争点(3)について
(1) 上記1によれば、原告の主張する時間外労働は認められないことになるが、その反面、原告が当直に従事した事実をすべて否定することはできないと認められるので、進んで、争点(3)について、当裁判所の判断を加えておくこととする。
前記前提事実、前記1で認定した事実、証拠(甲9の1ないし6、10の5、11、乙1ないし3、4の1・2、6、9、10の1ないし12、11ないし13、14の1ないし7、15、24ないし30、証人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これに反する甲15(原告の陳述書)、甲16(の陳述書)及び原告本人尋問の結果は採用しない。
ア 平成18年11月、被告の理事長で、Aクリニックの院長である理事長が、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反で逮捕されるという事態になり、こうした緊急事態を受け、Aクリニック副院長であった原告は、同年12月ころ、Aクリニックの院長に就任し、医療法が規定する管理者になるとともに、被告の理事となった。なお、Aクリニックには、原告のほかに常勤医はいなかった。
イ 原告の給与は、Aクリニック院長就任前までは午前(午前9時から午後2時まで)勤務5万円、午後(午後4時から午後6時まで)勤務3万円、当直(午後6時から午前9時まで)勤務5万円のいわゆる日給月給であったが(ちなみに、平成18年1月分から同年11月分の原告の総支給額〔交通費を含む。保険及び所得税控除前の額〕は、合計3103万5000円であった。)、被告は、原告に院長に就任してもらうに際し、原告の責任が格段に重くなることから、これまでの日給月給制ではなく、待遇を上げる必要があると考え、内部で検討した。1年間を通じてパート医師が午前勤務、午後勤務、当直勤務を行った場合(週休2日、当直勤務週4回で計算)に支払う金額より多くしなければならないと考えていたところ、午前勤務5万円、午後勤務3万円、当直勤務5万円として計算した結果、合計で年3000万円ないし3500万円になり、これに院長手当、理事手当等を含めて更に500万円ないし1000万円を増額することとし、4000万円を原告の年俸の基本給とすることにした。
理事長の妻で、被告の理事の一人でもある理事は、被告内部で検討した上記の内容を原告に伝えたところ、原告から分娩手当等はどうなるのかとの質問があったため、年俸のほかに前年度の実績給として支給する旨を話し、原告の了解を取り付けた。また、後日、原告から別に交通費を支給してほしい旨が要望されたため、被告は、交通費としてと月10万円ずつ年間120万円を別途支給することにした。その結果、実績給はその年により若干の変動があったものの、原告に対する年間支給額は、年俸、分娩手当(実績給)及び交通費を合計して約4500万円(平成19年分は4334万6672円、平成20年分は4550万円であった。)となった。原告のこの年俸は、理事長の年俸4557万6000円(平成20年分)にほぼ匹敵する金額であった。