児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被告人方における児童ポルノ画像複製行為を、姿態をとらせて製造罪として有罪とした事例(A地裁H28.9.27)

 「姿態をとらせて」は構成要件ですので、それを欠く罪となるべき事実は、理由不備になります。
 A地裁H支部h27.2.6でも、当初起訴がそんな記載で、裁判所が気付いて訴因変更させられて有罪になっています。その経緯は控訴審(s高裁a支部H270630)で問題になり、「姿態をとらせて身分犯説」「複製行為が姿態とらせて製造罪だ」などと変な理屈で正当化されています。
 地検のなかで、同種事案の記録を貸し借りして、処理しているので、ケアレスミスが伝染するようです。法文見ないで起訴状起案するからですよ。
 静岡地裁浜松支部h17.7.15が「姿態をとらせ」を欠いた姿態をとらせて製造罪の有罪判決を書いたことがあって、東京高裁h17.12.26が理由不備で破棄しています。

A地裁H28.9.27
第1 ホテルにおけるd子との淫行(青少年条例違反罪)
第2 d子(11)が児童であることを知りながら 某日、被告人方において、デジカメでで撮影保存していた同児童を相手方とする性交に係る姿態、同児童に口淫させる姿態 被告人が児童の陰部を触る姿態の静止画像データ10点を、パーソナルコンビュータに接続された電磁的記録媒体である外付けHDDに記録して保存して、もって、1号 2号 3号に該当する姿態を、視覚により認識することができる方法により、電磁的記録にかかる記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
法令適用
第2の所為 包括して児童ポルノ法7条4項(2項)

A地裁H支部h27.2.6
平成26年11月25日起訴
A地検H支部検察官事務取扱検事 y
公訴事実
被告人は,c子(当時11歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら某日,被告人方において,撮影機能付携帯電話機で撮影,保存していた同児童を相手方とする性交に係る姿態,同児童に被告人の陰茎を口淫させる姿態及び同児童にその陰部等を露出させた姿態の動画データ16点を,パーソナルコンビュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造したものである。
罪名及び罰条
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反
平成26年法律第79号による改正前の同法律7条3項,2条3項1号,3号

s高裁a支部H270630
第2 訴訟手続の法令違反の主張(控訴理由第2ないし第6)について
 1 論旨は,平成26年11月25日付け起訴状記載の公訴事実(以下「当初訴因」という。)には3項製造罪の構成要件である「姿態をとらせ」た事実の記載がなく,訴因が特定されていないから,これによる公訴提起は刑事訴訟法256条3項に違反し,また,当初訴因として記載された事実が真実であっても,何らの罪となるべき事実を包含していないから,公訴を棄却すべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 そこで検討すると,3項製造罪においては児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録する行為のみならず,このような行為をした者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを複製する行為も同罪に当たると解される(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁参照)。後者の行為類型の場合,3項製造罪は身分犯的な犯罪と解されるから,実行行為(製造行為)は,自ら記録媒体に記録した電磁的記録を別の記録媒体に複製して児童ポルノを作成する行為,すなわち,複製行為であり,先行する「姿態をとらせる行為」は,製造行為とは別の行為であって,3項製造罪の実行行為には該当しない。しかし,「姿態をとらせる行為」は後者の行為類型の主体であることを基礎付けるものであることからすれば,これをできる限り特定して記載する必要があるというべきである。これを前提に弁護人の主張を検討すると,記録によれば,確かに当初訴因には「姿態をとらせ」た事実は明記されていないが,被告人が被害児童を相手方とする性交に係る姿態等を撮影,保存していた旨の記載があり,その罰条に児童ポルノ法7条3項,2条3項1号,3号と記載されていることからすれば,当初訴因が特定を欠くものとはいえない。また,当初訴因は,その記載内容に照らすと,3項製造罪における後者の行為類型である複製行為を起訴したものと解されるから,それが3項製造罪を構成する犯罪事実を包含していない(刑事訴訟法339条1項2号)ものともいえない。論旨は理由がない。
2 論旨は,当初訴因は,3項製造罪について,平成26年4月30日から同年5月11日までの6回の撮影行為は被告人の犯意に照らすと3罪であり,これらは併合罪と評価され,同月24日の製造行為(複製行為)とは併合罪の関係に立つのに,これらを1個の訴因として記載しており,しかも平成27年2月4日付け訴因変更請求書に基づき変更が許可された訴因(以下「変更後訴因」という。)においても,撮影行為については「秋田県内」で「6回」とされるのみで,それぞれの撮影行為の日時,場所が特定されておらず,訴因が特定されているとはいえないから,本件公訴提起は刑事訴訟法256条3項に違反し,公訴を棄却するべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,本件3項製造罪は,同一の被害児童に対して平成26年4月30日から同年5月11日までの12日間,前後6回にわたり被告人を相手方とする性交その他の姿態をとらせ,これらを撮影,保存していた動画データ6点を,同月24日に本件ハードディスクに複製して児童ポルノを製造したというものであるところ,前述のとおり,当初訴因及び変更後訴因とも,上記のように撮影,保存していた動画データ6点を本件ハードディスクに複製した行為のみを3項製造罪の実行行為として起訴したものであり,それは一罪となると解される(原判決は,これを包括一罪と評価しているが,実行行為である複製行為は,被告人が複製の対象である動画データ6点を短時間に連続して複製しており,社会通念上一個の行為とみられるから,原判決の評価は相当ではない。)。そして,変更後訴因において,その複製行為は日時,場所,方法をもって特定されており,行為類型の主体であることを基礎付ける事実である動画データ6点の撮影,保存行為についても,当初訴因よりも,期間,場所,回数,姿態の内容等がより具体的なものになっているから,全体として訴因の明示に欠けるところはない。よって,本件3項製造罪の起訴は刑事訴訟法256条3項に違反するものとはいえない。論旨は理由がない。
3 論旨は,変更後訴因について,製造された6点の動画データにつき,それぞれの動画データが児童ポルノ法2条3項1号又は3号のいずれに該当するのかを明示しておらず,刑事訴訟法256条3項に違反するから,公訴を棄却するべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,変更後訴因において,3項製造罪の実行行為である複製行為の対象である6点の動画データそれぞれについて,児童ポルノ法2条3項各号所定のどの姿態に該当するのかを明示してはいないが,それらがどのような姿態に関する動画データであるのかを概括的に特定しており,その適用すべき罰条として児童ポルノ法7条3項のほか,2条3項1号,3号を掲げていることからすれば,訴因が特定されていないとはいえない。そうすると,本件3項製造罪の起訴が刑事訴訟法256条3項に違反するものとはいえない。論旨は理由がない。
4 論旨は,変更後訴因には日時が幅のある記載がなされ,児童ポルノの内容が主張されていないのに,その点について訴因変更手続を経ないまま,原判決は,その別表において6回の撮影行為についてそれぞれの日時と児童ポルノの内容を判示しており,公訴事実に記載のない犯行日時及び内容を認定した原判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたものであって,原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,前述のとおり,原判決が認定した6回の撮影行為は,被告人が製造行為(複製行為)の主体であることを基礎づける事実ではあるものの,3項製造罪の実行行為とはいえない上,原判決は,検察官が変更後訴因において包括的に記載した6回の撮影行為それぞれについて,関係証拠から各撮影行為の日時及び内容を特定して認定したものであるから,検察官が変更後訴因に記載していない別の犯罪事実を認定したものではなく,審判の請求を受けない事件について判決をした(刑事訴訟法378条3号参照)ものとはいえない。論旨は理由がない。
5 論旨は,複製行為単独では罪とならないから,これを本件3項製造罪の実行行為と評価できず,撮影行為ごとに犯罪が成立し,複数の3項製造罪の罪数は原則として併合罪であると解するべきであり,本件3項製造罪に係る当初訴因と変更後訴因は公訴事実の同一性を欠くから,訴因変更を許可した原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,前述のとおり,本件3項製造罪の実行行為は複製行為であるというべきであり,当初訴因と変更後訴因との間で基本的事実関係は同一である上,上記2のとおり本件3項製造罪は一罪であると解され,罪数評価においても両訴因に異なるところはないから,当初訴因と変更後訴因とが公訴事実の同一性を欠くものとは認められない。したがって,その訴因変更を許可した原審の措置に訴訟手続の法令違反はない。論旨は理由がない。