児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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栃木県青少年健全育成条例と性犯罪

 刑法等との競合について比較的説明を尽くしていますが、競合したとしてどちらが適用されるのかがわかりません。
 12歳未満に性交類似行為をすると、強制わいせつ罪の関係では「わいせつ行為」ですが、条例の関係では「わいせつ行為」ではなく「いん行」になるということになるわけですが、観念的競合でいいですかね。

栃木県青少年健全育成条例の解説
【要旨】
本条は、青少年に対していん行又はわいせつ行為をし、又はそれらの行為を故意に教えたり見せたりするなど直接的に青少年の福祉を阻害する背徳行為を禁止し、青少年の健全育成を図ろうとするものである。
【解説】
1 第1項の「いん行」とは、一般的には、「健全な常識ある一般社会人からみて社会常識を大きく逸脱した不純とされる性交行為」ということができるが、本条のいん行は、これらの行為であって青少年の健全な育成を図ることを目的とするこの条例の趣旨からして、青少年の福祉を著しく阻害し、かつ現在の社会通念に照らし、倫理的に容認することのできない反社会的な行為に限定されるものである。「みだらな性行為」「不純な性行為」等の表現も「いん行」と同義語である。

(2) 「性交類似行為」とは、手淫、口淫(尺八)、肛淫、触淫(素股)等の各行為をも含む。
2 「青少年」とは、男女を問わない。
3 「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し、性的な羞恥、嫌悪の情を起こさせ、善良な性的道義観念に反する行為をいう。
具体的には「陰部に対する弄び、押し当て」「乳房に対する弄び」「接吻」「裸にしての写真撮影やビデオ撮影」等その部位態様はかなり狭く解する。
4 「してはならない」とは、青少年を相手方として、いん行又はわいせつ行為を行うことを一切禁止しているのであり、相手方の同意、承諾の有無及び対価の授受の有無は問わない。
5 本項の規定は、13歳以上の女子(男女)に対する暴行脅迫を伴わない姦淫(いん行)わいせつ行為について現行法上なんらの規制もなく、青少年の保護育成上の盲点となっているので、この条例で規制しようとするものである。
したがって、
? 13歳以上の女子を暴行又は脅迫をもって姦淫(いん行)し、又は13歳以上の男女に対し暴行又は脅迫をもってわいせつ行為をした場合
? 13歳未満の女子を姦淫又は13歳未満の男女にわいせつ行為をした場合(暴行、脅迫を伴わない、いわば同意によるもの)
については、刑法第177条(強姦)又は第176条(強制わいせつ)の条項と競合することとなる。

6 「教え」とは、いん行又はわいせつ行為の相手方とはならないが、当該行為の方法等を直接青少年に具体的に教示することであり、単なるわい談等はこれに該当しない。
7 「見せ」とは、自己又は他人のいん行又はわいせつ行為を直接青少年に見せることをいい、図書、ビデオ等の媒体を通じて見せることはこれに該当しない。
児童福祉法第34条第1項第6号(10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金)では、「児童に淫行をさせる行為」を対象としているが、「児童にいん行をさせる行為とは、行為者が児童をして第3者といん行させる行為のみならず、行為者が児童をして行為者自身といん行させる行為も含むと解する。」との最高裁決定がなされたことにより、行為者も児童福祉法の処罰の対象となり、本条の行為者自らが青少年を相手方としていん行をすることを禁止した内容と競合することになるが、「いん行させる行為」の内容が個々の場合で判断されることから、適用に当たっては個々の内容により判断される。
なお、児童福祉法にいう「児童」とは、18歳未満の者をいう。
9 「何人も」の意味は、第22条第6項の解説と同様であり、青少年も含まれ、青少年が行為者である場合も形式的には本条違反が成立するが、本条例第58条の免責規定によって訴訟条件を欠くこととなり、その行為が、他の法令により犯罪とされる場合を除いては、非行少年としての処遇は行われず、この条例の目的に照らして指導助言の対象としての補導がなされることとなる。