受け取るようですね。
福岡高等裁判所宮崎支部判決平成21年3月31日
被告人は,成長途上の女児の陰部を見たいなどとの性的欲求を抑えきれず,被
害女児両名に与える被害の大きさなどを何ら考えることなく,その身勝手極ま
りない自己の性的欲求を充たすために本件各犯行に及んでいるのであり,それ
ぞれの犯行の経緯,動機に酌量の余地は全くない。原判示第1の犯行では,共
犯者が下校途中の被害女児に声を掛ける役割を担っているが,誘い込んだ人目
に付かないアパート2階通路で,共犯者が見張りをしている間に,被告人にお
いて,被害女児の下着等を脱がし,陰部を手指でもてあそび,自己の陰茎を被
害女児の陰部に接触させて射精する行為にも及んでおり,強制わいせつの犯行
は,他人が通行する場所で比較的短時間に行われたものではあるものの,その
犯行態様は誠に劣悪であり,また,原判示第2の犯行では,被告人において,
下校途中の被害女児を見掛け,先回りをして声を掛け,被害女児が小学2年生
であることも聞き出し,その年齢であれば自己の思いどおりになるなどと考
え,被害女児を執拗に誘って,人目に付きにくい公民館便所前で被害女児の陰
部を露出させるなどの犯行に及んでおり,それ以上の行為に出なかったのは,
不審を抱いた近隣住民に声を掛けられて被告人がその場から逃げ出したことに
よる結果であって,その犯行態様が比較的軽微であるとすることはできず,や
はり卑劣で悪質というべき犯行である。しかも,これらの犯行は2年5か月余
の間に繰り返されており,それぞれの犯行が偶発的犯行とすることはできず,
被告人のこの種犯罪性向が根深いものであることも否定することができない。
そして,原判示第1の犯行の被害女児は,被害に遭ったことから,1人になる
のを嫌がり,友達とも遊ばなくなり,男性教諭を怖がって担任を女性教諭にす
る措置がとられるなどもしており,なお,診断書(意見書及び資料添付,当審
検1)によれば,犯行から約3年3か月が経過した時点の被害女児は,トラウ
マによる後遺症に苦しみ,心理治療を要する状態であることが認められ,ま
た,原判示第2の犯行の被害女児も,被害に遭った後,1人での登下校を嫌が
り,夜1人で眠れないでいるなど,被害女児両名の被った精神的被害はいずれ
も甚大であり,いずれの犯行にあっても,帰宅した被害女児からおおよその被
害状況を聞き取った両親の驚き,不安,衝撃は計り知れず,おぼろげながらも
自身の被った被害を理解した被害女児両名,さらには,その両親がこぞって被
告人に対する厳しい処罰を求めているのは当然であり,本件各犯行が地域住民
に与えた不安も大きいと考えられ,以上からすると,被告人の刑事責任は重
く,年少の被害者に対する性犯罪を抑止すべき一般予防の見地からしても,被
告人に対して実刑をもって臨む必要があるというべきである。 そうすると,
他方で,原判示第2の犯行について,慰謝料として30万円を支払うなどし
て,被害女児の親権者父との間で示談が成立していること,被告人の父におい
て,被告人の指導,監督を約していること,被告人において,被害女児及びそ
の両親に与えた精神的苦痛に思いを致し,各犯行の責任が重大であることも自
覚し,反省を深めていること,反省及び償いの証として,原審の勾留段階か
ら,家族の援助も得てユニセフへの寄附を毎月続けるなどしていること,ま
た,被告人の父において,日本弁護士連合会及び宮崎県弁護士会に50万円の
贖罪寄附をしていること,被告人に交通事犯を除いて前科,前歴がないこと,
さらには,原判決後,被告人において,反省を更に深め,更生の意欲も強めて
いることなど,被告人のために酌むべき事情ないし量刑上有利に考慮すべき事
情もあるが,これらの事情を十分に考慮しても,原判決の上記量刑は,保護観
察に付したとはいえ,その刑の執行を猶予した点において,軽きに過ぎると認
められる。 論旨は理由がある。