児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪と強制わいせつ罪(176条後段)を観念的競合で起訴した訴因について、訴因変更を経ずに併合罪とした事例(某地裁)

 東京高裁が併合罪だというと、なんでそんなに無理して併合罪にするかなあ。

 公訴事実で
「Aに対し、その衣服を脱がせて陰部を露出する姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影し、その画像データ5点を同携帯電話機に内蔵された記録装置に記録させ」
と一体的に記載されていたのを、
「第1 Aに対し,その衣服を脱がせて陰部を露出する姿態をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,
第2 前記のとおり陰部を露出する姿態をとらせ,これを前記のとおり撮影し,その画像データ5点を同携帯電話機に内蔵された記録装置に記録させ,」
と分けて、媒体記録の点が重なってないようにしてあたかも2個の行為に見せていいるわけですが、そもそも撮影=媒体への記録であって撮影して媒体に記録しないということはありえないので(記録されてなければ「撮影失敗」という)、行為としては1個です。それは仙台高裁の判例がある。
 

仙台高裁H21.3.3
上記のとおり被害児童の陰部を撮影する行為は,刑法176条のわいせつな行為に該当するというべきところ,撮影の際に電磁的記録であるその画像データが携帯電話機やSDカードに同時に記録されるような場合には,このような記録行為も撮影行為と不可分なその一部と評価できるのであるから,原判示第2から第4までの各事実における各記録行為も撮影行為の一部としてわいせつな行為に該当するということができる。したがって,この点においても原判決に法令適用の誤りはない

公訴事実
 被告人は、A(当時5歳)が13歳未満であることを知りながら、平成26年6月12日午後1時5分ころから同日午後1時7分ころまでの間、大阪市北区所在の公園の公衆トイレにある多目的トイレ内において前記Aに対し、その衣服を脱がせて陰部を露出する姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影し、その画像データ5点を同携帯電話機に内蔵された記録装置に記録させ、もって13歳未満の女子にわいせつな行為をするとともに、衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、前記児童に係る児童ポルノを製造したものである。

某地裁h26
第1 A(当時5歳)が13歳未満であることを知りながら,同年6月12日午後1時5分ころから同日午後1時7分ころまでの間,大阪市北区所在公園トイレ内において,Aに対し,その衣服を脱がせて陰部を露出する姿態をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,

第2 同日時,前記トイレ内において,Aに対し,同人が13歳未満であることを知りながら,前記のとおり陰部を露出する姿態をとらせ,これを前記のとおり撮影し,その画像データ5点を同携帯電話機に内蔵された記録装置に記録させ,
もって13歳未満の女子にわいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,前記各児童に係る児童ポルノを製造したものである。
(法令の適用)
罰条
第1の所為 刑法176条
第2の所為 包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項,2条3項3号
刑種の選択懲役刑(児童ポルノ製造につき)
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(刑の重い判示第1の罪の刑に法定の加重)