児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

A子との児童淫行罪で逮捕して、A子に対する児童ポルノ製造罪で再逮捕することは、原則禁止。

 一応判例ですから。
 勾留手続だと致命的なミスになる可能性があるので、再逮捕が例外的に許される要件を備えて下さい。

札幌高裁H19.3.8
4違法収集証拠を証拠採用したとの控訴趣意について
論旨は,要するに,本件児童淫行罪と本件児童ポルノ製造罪が一罪であるとすると,上記青少年条例違反罪と本件児童淫行罪とは一罪であるから,被告人が上記条例違反罪により逮捕・勾留された後になされた本件児童ポルノ製造罪での逮捕・勾留,は,一罪一逮捕一勾留の原則に反する違法なものであって,この違法な逮捕勾留期間に作成された被告人の供述調書(はいずれも違法収集証拠として証拠能力がないのに,これを証拠として採用した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 なるほど,第一次勾留が執行された上記条例違反罪の被疑事実は「H20.4被害児童A(当16歳)が満18歳に満たない青少年であることを知りながら,単に自己の性的欲望を満たす目的で同女と性交し,もって満18歳に満たない青少年に対し淫行したものである。」というものであり,また,その後の第二次勾留が執行された児童ポルノ製造罪の被疑事実は「別表記載のとおりH20.6ころ15回にわたり,被害児童A(当16歳)が満18歳に満たない児童であることを知りながら,デジタルビデオカメラを使用し,同児童の被疑者との性交場面,同児童をして被疑者に口淫させた場面,同児童の陰部を露出させた姿態などを撮影して,児童を相手とする性交,性交類似行為に係る児富の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激する動画を電磁的記録媒体であるミニデジタルビデオカセットに描写し,もって同児童に係る児童ポルノを製造したものである。」というものである。
 そして,関係証拠によれば,被告人と児童との交際は,平成18年10月ころから同20年8月ころまで続いていたと認められ,本件児童淫行罪は上記条例違反罪の行為の日を含む期間における同一児童一の児童淫行罪であることからすると,上記のとおり,本件児童淫行罪と後の逮捕勾留事実である本件児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあり,また,本件児童淫行罪は先の逮捕勾留事実である上記条例違反罪とも一罪となり,結局,以上は実体法上一罪と解される余地がある。
しかし,一罪一逮捕一勾留の原則といえども例外を認めないものではなく,本件においては,上記条例違反罪の被疑事実は平成20年4月の行為であり,後の児童ポルノ製造罪の被疑事実は平成18年10月から同20年8月ころまでの行為であり,その間には時間的間隔がある別個の行為であり,しかも,児童ポルノ製造罪は異なる日あるいは時刻における15回の行為であり,各行為についての証拠の収集が必要であることなどに鑑みると,上記児童ポルノ製造罪の被疑事実による再逮捕・勾留は,一罪一逮捕一勾留の原則の例外として許容されるものと解される。
したがって,この逮捕・勾留期間中に作成された被告人供述調書は,いずれも違法収集証拠に該当しないから,これらを証拠に用いた原判決に違法はなく,論旨は理由がない。