児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

<児童ポルノ禁止法>民主も改正案 与野党協議が焦点に

 所持についての処罰範囲は事実上変わらないと思いますが、罰則は重いようです。判例では買う人はそんなに悪くないって言ってますが。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080611-00000142-mai-pol
 民主案は有償や反復して取得することを禁止し、違反者には「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」の罰則を設けている。児童買春も含めた罰則すべての厳格化なども盛り込んだ。

 法定刑の下限を上げるとてきめんです。


追記
 厚生労働大臣が児童保護を担当する点など、合目的的に直ってていいといいと思いますが、解釈として個人的法益重視を貫けるかどうかですね。
 法定刑については、下限を見直さないと、量刑相場は変わりません。ちょっと弱気ですね。重く処罰するという強い意思が裁判所に伝わらない。
 3項製造罪(姿態とらせて製造)が「みだりに製造」となったのは、これでいいでしょう。ダビングや盗撮を許す理由はないから。
 取得罪の「懲役3年」というのは、単純所持反対派にとってはショックでしょうね。しかし、「有償で又は反復して」に限定する必要もないと思います。提供の方は無償・一回性のも規制しているのだから、対向犯も押さえておく必要があると思います。高裁(那覇支部h17.3.1 大阪高裁h18.9.21)は取得者はそれほど悪くないというのだから、それも含めて「懲役1年程度」でいいと思います。

http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=13495
http://www.dpj.or.jp/news/files/080611shinkyu.pdf
第二条
3この法律において「児童性行為等姿態描写物」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二殊更に他人が児童の性器等を触り、若しくは児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態又は殊更に児童の性器等が露出され、若しくは強調されている児童の姿態
(削る)
(適用上の注意)
第三条この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。
(児童買春)
第四条児童買春をした者は、七年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

(児童性行為等姿態描写物取得、提供等)
第七条みだりに、児童性行為等姿態描写物を有償で又は反復して取得した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
みだりに、電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を有償で又は反復して取得した者も、同様とする。
2児童性行為等姿態描写物を提供した者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童性行為等姿態描写物を製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、みだりに、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童性行為等姿態描写物を製造した者も、第二項と同様とする。
5児童性行為等姿態描写物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、七年以下の懲役若しくは七百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
6前項に掲げる行為の目的で、児童性行為等姿態描写物を製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
7第五項に掲げる行為の目的で、児童性行為等姿態描写物を外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

福岡高裁那覇支部平成17年3月1日
控訴趣意中児童買春法の憲法14条違反の主張について
所論は要するに,児童ポルノ販売罪は,買主との必要的共犯・対向犯であって,買主の買い受け行為の法益侵害,違法性は可罰的,当罰的であるにもかかわらず,売主のみを処罰するのは,法の下の平等憲法14条)に違反するから,児童買春法の児童ポルノ販売罪の規定は違憲,無効であり,同規定を適用して被告人を有罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというにある。
しかし,買主の買い受け行為にも法益侵害,違法性があるとはいえるが,売主の販売行為の違法性,法益侵害性が強度の可罰性,当罰性を有するのと比較して,前者の法益侵害,違法性の可罰性,当罰性は微弱であるから,販売行為のみを処罰の対象とし,買い受け行為を処罰の対象としないことが憲法14条に定める法の下の平等に反しないことは明らかである。論旨は理由がない。

阪高裁平成18年9月21日
第4控訴趣意中,児童ポルノ提供罪に関する法令の解釈適用の誤りの主張について(控訴理由第4)
論旨は,児童ポルノ提供罪は買い主との必要的共犯又は対向犯であって,買い主の買受行為にも法益侵害があるにもかかわらず,提供者のみを処罰するのは法の下の平等憲法14条)に反するものであり,同罪にかかる規定は無効である,したがって,同規定を本件に適用した原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の解釈適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,児童ポルノを提供してこれを積極的に拡散した者と,これを購入したにすぎない者との間では,児童の権利の擁護という立法趣旨から見て,その当罰性に差があることは当然であり,児童ポルノの提供者のみを処罰する同罪の規定は合理的なものといえるから,これが法の下の平等憲法14条)に反するとは解されない。
この論旨も理由がない。

 大阪高裁のは、関西なんとかで、児童ポルノの中でも悪質な児童ポルノです。