児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

不起訴なのか?起訴されたのか?

 児童淫行罪って複数回を包括評価するので、起訴されているのがどの範囲の行為かをはっきりさせることが必要です。

 こういう場合がある。被害者はいずれも共通。
 とっかかりとしては、直近の性行為を条例違反で逮捕して、遡って捜査して、まとめて児童淫行罪で起訴したのだが、直近のが抜けている。

逮捕の被疑事実(検番:X号)
 H19.12.1 淫行(青少年条例) 

再逮捕の被疑事実(検番:Y号)
 H19.6.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.7.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.8.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.9.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.10.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.11.1 淫行(児童福祉法違反)

起訴状の公訴事実(検番:X号+Y号)
 H19.6.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.7.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.8.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.9.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.10.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.11.1 淫行(児童福祉法違反)

判決の罪となるべき事実
 H19.6.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.7.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.8.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.9.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.10.1 淫行(児童福祉法違反)
 H19.11.1 淫行(児童福祉法違反)

 10/1、11/1の淫行が児童淫行罪なら、12/1の淫行も児童淫行罪でいい。起訴できそうなものだ。
 証拠上は「H19.12.1 淫行」は明か。当初はそれで捜査しているから。
 起訴状に「検番:X号」とあるから、「H19.12.1 淫行」も起訴されているといえそうです。
 しかし、公訴事実には12/1の淫行は記載されていない。不起訴の告知もない。
 控訴審で 「検番:X号」を消去する訴因変更があると思いきや、それもない。

 処理としては、
① 2/1の淫行は起訴されていない 「検番:X号」が誤記。
② 2/1の淫行は起訴しているけれど、内容不特定ということになって、訴因不特定
しかない。
 あと、「それを気づいたのなら、原審で指摘すべきであって、控訴審で主張するのは、ずるい。」と言われそうだ。
 弁護人は、保釈や起訴後の勾留の関係で12/1がないことに気づいて指摘した。「数回の児童淫行は包括一罪だがら12/1の淫行が児童淫行罪なら、再逮捕は同一公訴事実について2回目だから違法になる。」って。訴因不特定までは思いつかなかった。

 こんなのは、地裁刑事なら気づきそうなものですよ。家裁でやるから見落とすんですよ。