児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「インターネットなどを通じて児童ポルノ事件の被害者が急増している」?

 これを改正の動機にするんなら、提供罪の被害児童をもう一回数えませんか?
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080222/1203671544
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080305/1204683082
の数字はあてにならない。
 ほんとは何万人もいるのに、そのうち数百まで数えて、あとは「たくさん」という感じでカウント停止。
 氏名不詳にしてるから、人数もわからない→罪数処理や量刑に反映しない。
 ある日突然、氏名不詳も全部カウントし始めて、一気に「被害者数万人前年比100倍」なんかとすれば、何でも出来ますね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080308-00000060-yom-pol
児童ポルノ、所持だけでも「処罰」…与党が法改正方針
3月9日3時5分配信 読売新聞
 自民、公明両党は、児童ポルノの画像などのはんらんに歯止めをかけるため、児童ポルノを販売目的でなく、「単純所持」するだけでも禁じることとし、罰則の対象とする方向で児童買春・児童ポルノ禁止法を改正する方針を固めた。
 改正案は議員立法で、今国会中にも提出する方針だ。インターネットなどを通じて児童ポルノ事件の被害者が急増していることや、国際的に日本の対応が出遅れていることが背景にある。


 この条文からみれば、4項の提供罪・公然陳列罪が児童ポルノ罪の頂点(一番悪い)で、それ以外は、その準備段階ですよね。上から下まで保護法益は同じ。頂点にある提供罪が個人的法益(社会的法益)であるなら、全部個人的法益(社会的法益)。
 だから、児童ポルノ罪が個人的法益だというのなら、提供罪・公然陳列罪についても、それ以外についても、個人的法益の侵害(被害児童1人1罪・1回1罪)というのを徹底しておかないと、筋が通らないんですよ。
 物にたとえれば、薄い厚いの不均衡があって、弱いところがほころびるような法律です。

 現状の裁判例では
  製造罪は個人的法益
  提供罪は社会的法益
  製造罪には個人的法益はない。
なんてバラバラになっていて、まさに、立法者の迷い・考えが浅いところを反映していると思います。

第7条(児童ポルノ提供等)
1 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6 第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。


 なお、H16改正前から、目的所持罪はありましたので、読売の報道は不正確ですね。

〈解〉児童買春・児童ポルノ禁止法
2008.03.09 読売新聞社
 18歳未満の児童の買春や買春のあっせん、児童ポルノの販売、インターネットなどへの掲示を懲役や罰金付きで禁止する法律。2004年の法改正で児童ポルノの提供目的で製造や所持、保管することにも3年以下の懲役か300万円以下の罰金が科せられることになった。

 旧法(法務省はいまだに旧法を周知しているわけで、やる気ないようです)
 「販売・頒布・業として貸与・公然陳列目的所持罪」があります。

http://www.moj.go.jp/KEIJI/h01.html
児童ポルノ頒布等)
第七条  児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
3  第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

 
 現行法では2項所持罪(特定少数向け)が新設され、5項製造罪(不特定多数向け)が加重されています。
 製造目的所持罪が抜けています。編集前の素材はこれがないと処罰できません。