児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

加害少年推知記事の扱い(提供)について

 少年法61条違反については、原則公開、あとは各図書館判断。
 児童ポルノについては議論無し。
 

http://www.jla.or.jp/jiyu/syonenhou.html
 加害少年推知記事の扱い(提供)について(自由委員会検討素案 2006.10.27)
 2006年10月の常務理事会で、表記のことについて、自由委の検討内容を広く会員に知らせ、協会としての共通認識を形成するとされた。また、1997年の『フォーカス』に当たっての見解(1998年の『文藝春秋』に当たっての参考意見も)は協会名で出したものであり、自由委だけでなく常務理事会も論議し関与するとされた。
自由委の考え方(骨子・素案)
 図書館は一般に資料・情報を提供することで図書館が処罰されたり損害賠償を命じられる場合以外は提供する。加害少年の推知報道については提供することを原則とする。「原則」と言う理由は、各図書館の自主的判断を尊重するからである。
【説明1 少年法表現の自由の関係】
(1) 少年法61条が禁じる加害少年の推知報道について、1997年の神戸児童連続殺傷事件の「フォーカス」報道を契機に議論が深められてきた。「少年の保護」は「表現の自由」に優越するかどうか、関係法令の解釈、少年保護法制のあり方、報道倫理などが多角的に論議されてきている。諸外国の状況レポートも蓄積されてきた。
(2) 61条が倫理規定にとどまるのか、損害賠償請求権の根拠になるのか。従前、「刑事責任は生じないが、プライバシーの権利侵害として民事上の責任を負う」(竹田稔「名誉・プライバシーに関する民事責任の研究」1982)との見解に反論はなかった。
堺少年事件報道損害賠償請求事件の大阪高裁判決(2000.2.29・確定「判例時報」№1710) は、61条が少年に実名報道されない権利を与えているかについて、否定的に判示した。
長良川リンチ殺人事件報道損害賠償請求事件の最高裁判決(2003.3.14「判時」№1825)は本人推知報道の範囲を限定し、表現の自由への配慮を示した。(分科会資料あり)
(3) 61条は報道機関に関する規制であり、出版物の流通・頒布主体を規制・処罰する法ではない。図書館の提供制限については表現の自由さらに知る自由を狭める萎縮との批判がある。(分科会資料あり)
(4) 少年法22条(少年審判の非公開)に関して、日図協は『文藝春秋』1998年1月号掲載の検事調書記事の扱いについての「参考意見」で、記事に関わる法的問題は開示した者の責任に帰せられるべきで、報道を提供する側に法的規制はなく、提供制限の理由を見出せないとし、その上で3要件(頒布禁止の司法判断があり、②それが図書館へ提示され、③被害者からの提供制限要求がある場合のみ、一定の提供制限があり得る」)を提示した。
【説明2 図書館が提供することの意義】−図書館は司法判断とは独自に提供について判断する(宣言解説26-27)としたことの具体的理由−
(1) 図書館は、法に基づき職務として資料を収集提供し、もって知る自由(表現の自由) を保障する機関である。(宣言前文)
(2) 重大な犯罪事件は「公共の利害」であることに加え、報道を契機として多くの議論が立ち上がる社会的関心事であり、図書館は「考えるために読みたい」市民へ関連資料を積極的に提供する機関である。(宣言第1-1、2-(1)〜(4))
(3) 資料・情報はいろいろな観点や考え方で読まれるもの。図書館は資料・情報を支持や批判するものでなく、提供する機関である。(宣言第1-2後文)
(文責: 山家)

上記素案は平成18年度第92回全国図書館大会岡山大会第7分科会において提起し、このあと図書館雑誌2006年12月にも掲載の予定です。会員のみなさまの意見をお寄せください。