児童ポルノ罪に罰金が併科される趣旨は違反行為により得た不法利益を剥奪する点にある(東京高裁H19.9.19)
ところで、5項製造罪のみの起訴の場合、撮影までの事実しか起訴されていないから、撮影経費分がマイナスになっていることになり、それによる利得はない(販売による利得は、本件とは併合罪関係にある4項提供罪によるものである。要するに別件提供罪の利得である)。従って、製造犯人に利得があるとすることは、本件犯罪事実と合致しない。
また、これは起訴されていない余罪の利得であって、起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨であることが明らかであって、違法である。
最高裁判所大法廷判決
昭和41年7月13日
起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮することは許されないが、単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料としてこれを考慮することは、憲法第31条、第39条に違反しない。(意見がある。)
罰金を併科する場合にも余罪処罰の禁止が働くというのが判例である。
東京高等裁判所判決昭和58年10月24日
【参考文献】高等裁判所刑事裁判速報集昭和58年166頁
刑事裁判月報15巻10号498頁
判例タイムズ541号253頁
なお、所論は、起訴されていない法人ノ役員処罰ニ関スル法律違反の事実を取り上げ、それを主要な量刑事情に斟酌して、被告人に対し懲役刑のほか、罰金刑をも併科した点で原判決の量刑が著しく不当であると主張する。
ところで、刑事裁判において、起訴された犯罪事実のほかに、起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定したうえ、これを実質上処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し、そのため重く処罰することが許されないことは所論指摘のとおりである。