児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害児童推知報道(長野県)

 「小口市長は女子生徒を盗撮するなどした事件の対応を振り返った際、学校名を3回挙げて「本人や親の希望によって極力、マスコミも含めた外圧がかからないことを一義的に考えた」」ということですが、そういう配慮が台無しになりました。
 市長が責任を取ると言っても、取り返しが付かないでしょう。
 法律上の責任主体は報道機関のようです。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第13条(記事等の掲載等の禁止)
第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」p117
本条は、この法律で処罰される罪に係る事件に関係のある児童については、その氏名等により当該児童が当該事件に関係のある者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならないとしています。
この趣旨は、児童買春等の犯罪の対象となった児童について、その氏名等が公表され、当該児境がだれであったかが広く知られることになると、心身に有害な影響を受けた児童に引き続き精神的な悪杉響を及ぼすことになりますので、このような児童について、当該事件に関係のある者であることを推知することができるような事項等の出版物への掲載等を禁止することにより、その権利を擁護しようとするものです。
(l)「四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童」とは、この法律で処罰される犯罪事件に関係する児童のことをいいます。
具体例としては、児童買春において性交等の相手方とされた児童、児童ポルノの被写体とされた児童、児童買春等の目的で売買された児童等が挙げられます。
(2)本条は、児童が当該事件に関係のある者であることを推知することができるような記事等の掲載等を禁止する趣旨ですから、−氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌等は例示であるとともに、これらの事項であっても児童が当該事件に関係のある者であることを推知することができないものなら、記事等の掲我等は禁止されません。例えば、「12歳の少年を撮影して児童ポルノを製造した業者が逮捕された」とか「16歳の少女を相手方として児童買春をした男が逮捕された」という記事は、被害者である児童の年齢を記載していますが、これだけの記事では、一般的にはある児童が当該事件に関係のある者であることを推知することはできませんので、本条に違反するとは考えられません。しかし、氏名は記載しなくとも住所、学校名、年齢等で児童が特定できるような記事等は、本条に違反するものです。
(3)本条に違反した場合でも、罰則はありません。これは、報道の自由を考厳したものですが、報道機関の良識ある対応が期待されます。

元教諭盗撮事件で塩尻市長 CATVで中学校名言及=長野
2013.01.31 読売新聞
 塩尻市の小口利幸市長が30日の定例記者会見で、昨年2月に同市立中学校の元男性教諭が児童買春・児童ポルノ禁止法違反事件を起こしたことに関連し、同法で公表が禁止されている中学校名に誤って言及し、地元ケーブルテレビ(CATV)局の同市専用チャンネルで生中継された。小口市長は会見後、記者団から指摘を受け、「配慮が足りなかった。すべて私の責任において処理をする」と謝罪した。
 問題の発言は、県教委が教職員のわいせつ事案の懲戒処分で、被害者側の申し出があれば処分自体の非公表も可能にしたことについて、記者団から感想を求められて答えたもの。小口市長は女子生徒を盗撮するなどした事件の対応を振り返った際、学校名を3回挙げて「本人や親の希望によって極力、マスコミも含めた外圧がかからないことを一義的に考えた」などと語り、県教委の決定は「やむを得ない」とした。

 児童買春・児童ポルノ禁止法13条では、被害児童の氏名や就学する学校名などを新聞や出版物に掲載したり放送したりすることを禁じている。生中継したCATV局の加入者は塩尻松本市などの計約3万世帯。

塩尻市長が不適切発言 児童ポルノ被害地域名 生中継で繰り返す CATV
2013.01.31 中日新聞
 【長野県】塩尻市の小口利幸市長は三十日の定例会見で、市内の中学校の元男性教諭が昨年六月、女子生徒の着替えをビデオカメラで隠し撮りしたとして児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で逮捕された事件に関し、この中学が所在する地域名を複数回にわたり発言した。
 会見はケーブルテレビの行政チャンネルで生中継されていた。児童買春・ポルノ禁止法は事件に関わる児童の氏名や年齢、学校名などを推知できるような記事、放送を禁止している。
 小口市長は、特別支援学校指導員のわいせつ事件への県教委の対応を記者から質問され、塩尻の事件を引き合いに答える中で地域名を繰り返した。終了後の取材に、市長は「配慮が足りなかったと言われればその通りで、指摘があれば私の責任において対処する」と述べた。
 市の委託で行政チャンネルを運営するテレビ松本ケーブルビジョン(松本市)によると、行政チャンネルの視聴にはデジタルチューナーの取り付けが必要で、管内(松本、塩尻市と山形、朝日村)に約四万四千台あるという。(福沢幸光)

塩尻市長の発言を一部削除 CATVの再放送で 盗撮事件の校名類推
2013.02.01 信濃毎日新聞朝刊 
 塩尻市は31日、小口利幸市長が30日の定例会見で、昨年市内の中学校で発覚した元教諭の盗撮事件があった学校名を類推させる発言をし、会見を生中継したケーブルテレビの「市行政チャンネル」の該当部分を削除して再放送したと明らかにした。
 小口市長は会見で、県教育委員会が教職員の「懲戒処分等の指針」を変更し、被害者側が求めた場合は処分を非公表にすることができるようにした点について問われた際、同市の盗撮事件に触れ、学校名を類推させる発言を複数回した。会見は市が生中継したが、市は発言が不適切だったと判断し、同日夕の再放送で該当部分を削除した。市行政チャンネルは、テレビ松本ケーブルビジョン(松本市)を通じて放送され、デジタルチューナーを設置した塩尻市松本市など約3万世帯で見られる。