児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

<盗撮防止法案>自民党が今国会中に議員立法で提出へ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050508-00000065-mai-soci
 盗撮の既遂時期はいつなんですか?
 カメラ向けた時か、撮影成功時ですか?
 カメラ向けて撮影したが、失敗したら未遂?

 軽犯罪法の窃視罪の裁判例気仙沼簡裁)なんか参考にね。
 軽犯罪法の守備範囲も意識してほしいところです。

 

軽犯罪法違反被告事件
【事件番号】気仙沼簡易裁判所判決/平成3年(ろ)第12号平成3年11月5日
(犯罪事実)
 被告人は、正当な理由がないのに、平成三年六月二八日午後一時二五分ころ、宮城県〈住所略〉所在のファミリータウンハマダ三階女子便所内において、同便所内の下
側間仕切の隙間から便所内の女性の姿態を八ミリビデオカメラで撮影録画し、便所内をひそかにのぞき見た。
(証拠関係)〈省略〉
(法令の適用)
1 犯罪事実 軽犯罪法一条二三号
2 刑罰の選択 科料刑を選択
3 換刑処分 刑法一八条
4 訴訟費用の負担 刑事訴訟法一八一条一項本文
(補足的説明)
1 被告人の本件犯行は、スーパーマーケットの来客用女子便所内に入りこみ、隣の便所との間の仕切板の下側にある約六センチメートルの隙間から便所内の女性の排泄
行為を撮影すべく、八ミリビデオカメラをセットして床に置き、その姿態を撮影録画したというものであり、被告人が直接肉眼で隣の便所内をのぞきこんだわけではない。
しかしながら、軽犯罪法一条二三号は、プライバシーの権利の保護を目的とするものであるところ、実質的に見て、肉眼による場合とビテオカメラを用いた撮影録画によ
る場合とで、プライバシーの侵害の有無に何らかわりはない。むしろ、肉眼による場合には、便所をのぞきこんだ犯人の記憶も希薄化し消滅することがあり得るのに奔し、
便所内の女性の姿態等が録画されたビテオテープは、何度でもそれを再生することが可能であるばかりか、録画したテープを多数複製することが可能であるので、それに
よる被害が広がってゆくことがあり得るのであり、ビテオカメラによる撮影録画によるプライバシー侵害の程度は、肉眼によるのぞきこみ行為よりも著しいものというべ
きである。
他方、軽犯罪法一条二三号は、犯人の行為の動機及び行為の結果としての好奇心の満足等を犯罪構成要件とはしておらず、単に、のぞきこみ行為が存在し、それによって
被害者のプライバシー侵害の結果が発生すれば、犯罪として既遂に達するものと解すべきである。ところで、本件では、被告人は、ビテオカメラで録画した内容を再生し
て見る前にスーパーマーケット従業員に犯行ヲ発見され、取り押さえられたため、その録画内容を見ないままであるが、隣の便所内の様子の録画行為それ自体によって被
害者のプライバシー侵害が発生している以上、被告人の本件犯行は、既遂に達していると判断する。
 したがって、被告人の本件犯行は、軽犯罪法一条二三号所定の便所内をひそかにのぞきこむ行為の既遂罪に該当するものと判断する。