2件あって、昨年11月には閲覧のみ許可の連絡を受けましたが、今日、奥村弁護士が岸和田まで行ってみると、不許可。無駄足。
申請書類に不備がある。
被告人名を特定しない限り閲覧させない。
不許可決定書は出ない。
即日、準抗告カラー12MB。
公判廷で宣告された性犯罪者の判決すら公開しないのに、住所は提供するのか?
5 事件特定について
もとより、刑事確定訴訟記録法は「刑事被告事件に係る訴訟の記録の訴訟終結後における保管、保存及び閲覧に関し必要な事項を定めることを目的と」しており事件の特定が必要であることは当然である。
しかし、同法は、事件に関して利害関係の有無を問わず、原則として閲覧を許可するのが原則(4条)であるから、厳格な事件の特定は要求されない。第4条(保管記録の閲覧)
保管検察官は、請求があつたときは、保管記録(刑事訴訟法第五十三条第一項の訴訟記録に限る。次項において同じ。)を閲覧させなければならない。ただし、同条第一項ただし書に規定する事由がある場合は、この限りでない。
2 保管検察官は、保管記録が刑事訴訟法第五十三条第三項に規定する事件のものである場合を除き、次に掲げる場合には、保管記録(第二号の場合にあつては、終局裁判の裁判書を除く。)を閲覧させないものとする。ただし、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合については、この限りでない。もとより刑事事件の確定記録は学術研究目的にも閲覧させることが予定されている。制定当時の国会答弁でもそのように説明されている。
108国会 - 衆 - 法務委員会 - 5号
昭和62年05月26日
○安藤委員 そうしますと、これは法務省が保管、保存をしておられるのですが、どういう事件、何と何の事件が保存されているのか明らかにできないとおっしゃると、あの事件が見たいなと思ってもあるのかないのかわからぬということになるでしょう。せっかく閲覧をさせる、今度は九条の二項でちゃんとこうなるわけですから、これとこれとこれはありますよということでないと、これを見たいのですというふうに言えないのじゃないかと思うのですが、その点どう考えてみえますか。
○岡村政府委員 これは、学術研究などのため閲覧が必要であるということで閲覧の申し出をされました方がありました場合には、その方にはどういう種類の記録であるかというようなお話を伺いまして、それなりの便宜は図るつもりでございます。
○安藤委員 そうしますと、閲覧希望者が具体的に件名を申し上げて、こういう事件の記録を見たいのですということでお邪魔したときに、実はそれはないのですということで門前払いですね。それでは四つか五つ持っていったら、そのうちの二つはあります、こういうことになって非常に手間がかかるわけなんですが、大体見当をつけて、これはあるだろうといって当たった、やはりあったということではどうも心もとないのですけれども、例えば私が法務省へ行って、今保存しておられるリストをちょっといただけぬか、あるいは見せてもらえぬかというふうにお願いした場合はどうなるのですか、応じてもらえそうですか。
○岡村政府委員 リスト全体をもらいたいという御要望には応じかねるものでございます。ただ、具体的にこういう関係の事件が残っておるのかというふうにある程度範囲を特定していただければ、学術研究のため必要があるような場合には、その方に対しましてはこちらも誠意を持って対応いたすつもりでございます。学術研究のためには、例えば、「××罪の判決書」「○○罪の実刑判決」という程度の限定で記録を閲覧して比較検討することも必要となるから、必ずしも被告人の氏名がなくとも特定充分となりうるというのが、法律の趣旨である。
その趣旨で、今回、申立人は最高裁事務総局から、児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反事件の裁判所名・判決日・事件番号の開示を受けた。
事件番号と判決日で特定充分であると考えている。実際にこれで開示してくださる保管検察官も多い(徳島地検、長崎地検、那覇地検本庁、石垣支部、沖縄支部等)。判例雑誌でも事件番号と判決日で特定されることが通例である。むしろ、これで特定できていないという検察官はいない。
「記録事務規程」(昭和62年12月14日法務省刑総訓第1018号大臣訓令)第2条(様式第1号)によれば保管記録保管簿には、
保管番号
裁判年月日
罪名
氏名
刑期・罪名等
が記載されており、この何れかを用いて、適宜保管記録を特定すれば足りる。すでに罪名は限定しており、裁判年月日も最高裁等からの情報で明らかになっており、閲覧目的からして、仮に同じ裁判年月日に同一罪名の裁判がある場合には全ての事件の閲覧を求めるから、保管記録の特定は充分である。
そもそも、事件番号・判決日は保管記録(判決書)には必ず記載されている情報であって、保管検察官が知っている情報である。これで捜せないはずがない。なお、本件については、H16.11.12とH17.1.14の2回にわたり、許可決定が伝えられており、次のような経緯により、保管検察官において、記録特定に成功したことは明かである。
今さら事件特定ができていないというのは、嘘である。
保管検察官の事情を察すると、「全国の検察庁の事務としては、申請用紙に被告人氏名の欄があるので、事務処理の都合上、被告人氏名を書いてもらわないと困る。」ということに尽きるのであろう。
しかし、それは事務処理上の問題であって、そのために「被告人氏名による特定が欠ける場合」という法律上明文のない不許可理由を設けることにほかならず、違法と言わざるを得ない。
また、被告人氏名抜きでの閲覧を許すと、同種の請求が増え、事務が混乱するという言い訳も考えられるが、本件では、裁判年月日・事件番号・罪名が特定されているのであるから、それを許しても、事務の混乱はありえない。
実際にこれで開示してくださる保管検察官も多い(徳島地検、長崎地検、那覇地検本庁、石垣支部、沖縄支部等)し、事務繁雑が理由であれば、時間を掛ければいいだけの話である。
準抗告申立補充書
事件特定の問題と、許可不許可の実務について補充する
1 事件特定について
「記録事務解説」法務総合研究所(甲7)P16によれば、保管記録の特定は「保管番号」を要としてなされている。被告人氏名ではない。
同書P37によれば、具体的に事件を特定しない場合は閲覧を許さないとされているが、「被告人氏名」の特定は求めていない。裁判所名・事件番号・罪名・判決日を特定すれば「具体的事件の特定」は充分である。
押切謙徳ほか「注釈 刑事確定訴訟記録法」(甲8)P125も同旨である。裁判所名・事件番号・罪名・判決日を特定すれば、通常、迷うことなく事件は特定されるから、「具体的事件の特定」は充分である。
押切謙徳ほか「注釈 刑事確定訴訟記録法」(甲8)P146によれば、
なお、閲覧しようとする者が常に閲覧の請求に必要な事項を承知しているとは限らないので、そのような場合にあっては、閲覧しようとする者から保管記録を特定するために必要な事項について照会があったときは、保管検察官等において速やかに回答するなどして、保管記録を閲覧しようとする者が、その権利を行使するに当たり不必要な負担を負い、その結果として権利の行使が妨げられることとなるようなことがないように配慮するのが相当であろう。
と述べられている。
本件でいえば、すでに、閲覧許可が通知されているのであるから、被告人氏名を保管検察官が補えば足りるのである。なお、押切謙徳ほか「注釈 刑事確定訴訟記録法」(甲8)は刑事確定訴訟記録法の立案担当者による解説書である。
2 許可不許可の実際について
「記録事務解説」法務総合研究所(甲7)P42によれば、許可には要式はなく、不許可には書面による通知とされている。これは、許可が原則であって、許可された場合は実際に閲覧させることによって、処分が明らかになり書面による必要がないからである。
現時点では、電話により2回にわたり閲覧許可(要式としても適法)が伝えられており、1/17に所定の書面(閲覧不許可通知書)によらずして閲覧を拒否したのであるから、閲覧不許可が違法であって、閲覧許可が適法に存在するというべきである。押切謙徳ほか「注釈 刑事確定訴訟記録法」(甲8)P126も紹介しておく。
追記
地検岸和田支部は、3/10判決書のみ閲覧許可決定を出しました。