児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制性交・児童ポルノ製造被告事件の罪となるべき事実で、3号ポルノの摘示が不足で、理由不備と思われるもの(津地裁r02.5.29)


性交をしている姿態をとらせ,

もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノ
になってるでしょ。
3号ポルノに該当する具体的事実の記載がありません
量刑にばっかり気を採られているからでしょう。

【文献番号】25566261

津地方裁判所令和2年(わ)第53号
令和2年5月29日刑事部判決

       判   決
 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官田村崇之,私選弁護人小林達雄各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 別紙の1記載の被害児童(当時11歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,令和2年1月3日午後11時35分頃,別紙の2記載の同児童方において,同児童に被告人と性交をしている姿態をとらせ,これを自己が使用する動画撮影機能付き携帯電話機(スマートフォン)で動画として撮影し,その動画データ1点を同機の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,
第2 前記被害児童が13歳未満の者であることを知りながら,同児童と性交しようと考え,令和2年1月12日,千葉市α区β×丁目×番××号b×××号室の当時の被告人方において,前記被害児童と性交した。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
罰条
判示第1の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号,3号
判示第2の行為 刑法177条後段
刑種の選択
判示第1の罪 懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第2の罪の刑に47条ただし書の制限内で法定の加重)
酌量減軽 刑法66条,71条,68条3号
刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 被告人は,被害児童と通信アプリケーションソフト(LINE)を通じて知合い,交際開始後の被害児童とのやり取りを通じて13歳と思って児童ポルノ製造の犯行(判示第1)に及び,その後被害児童が13歳未満であることを知るに至ったものの,被害児童が自宅を訪ねてきた際に強制性交等の犯行(判示第2)に及んだ。 
 量刑の中心となる強制性交等の犯行は,同意を得て性交に及んだものであっても,判断能力等の未熟な13歳未満の被害児童(当時11歳の小学生)と性交したものであり,被害児童の健全な成長に悪影響を及ぼすおそれがある悪質な行為である。強制性交等の犯行前の別の機会に,被害児童と性交した状況を撮影して児童ポルノを製造した犯行の悪質性も軽視できない。被告人は,被害児童の心身への悪影響を顧みずに本件各犯行に及んだところ,経緯として被害児童が13歳未満であることを明確に認識せざるを得ない出来事を経ながらも思いとどまることなく強制性交等の犯行を重ねており,一連の意思決定は非難を免れない。
 もっとも,強制性交等の犯行において暴行や脅迫を手段として用いておらず,利益誘導をしていない本件犯行に至るまでの経緯等も踏まえれば,その悪質性の程度は,13歳未満の者に対する強制性交等の事案の中で軽い部類に属するといえる。
 そして,本件各犯行について示談が成立しており,被告人が父親の協力を得て示談金400万円を支払い,被害児童とその親権者が被告人を許していること,被告人が各犯行を素直に認めて反省しつつ,二度と罪を犯さない旨を述べて更生を誓い,そのための方策(精神科病院への通院等)を考えて取り組み始めていること,証人出廷した被告人の父親が今後の監督を誓約していることなどの被告人に有利に酌むべき事情が認められ,前科もない。
 以上の事情を踏まえると,被告人に対しては,酌量減軽の上,主文の刑に処するとともに,最長の猶予期間を定めてその刑の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当と判断した。
(求刑 懲役5年)
令和2年6月1日
津地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 四宮知彦 裁判官 濱口紗織 裁判官 山本健太