16歳未満に対する性犯罪(176条3項・177条3項)につき、1項各号、2項も適用した事例(福岡地裁r6.7.19 佐渡支部r6.3.21 東京地裁r6.11.23)

16歳未満に対する性犯罪(176条3項・177条3項)につき、1項各号、2項も適用した事例(福岡地裁r6.7.19 佐渡支部r6.3.21 東京地裁r6.11.23)

 監護者わいせつ罪と不同意わいせつ罪との関係では、13歳未満には監護者わいせつ罪は適用されないとされてきたんですけどね。
刑法の一部を改正する法律について法曹時報69巻11号p266
 
 最判s44.7.25に従えば、176条に該当する一罪が成立するということになるんですが、今回の改正で176条3項を1項各号に分かれたので、「どの法条に該当する一罪」にするのかが決まりません。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律について法曹時報76巻01号p68
(2)客体
改正前の本条及び第177条は、前段において「13歳以上の者に対し」と規定し、後段において「13歳未満の者に対し」と規定していたが、13歳未満の者に対して暴行又は脅迫を用いて性的行為をした場合の適用関係については、客体が13歳未満の者であるにもかかわらず、前段・後段(注7)の区別なく各条を適用するものとされていた。
このような実務上の取扱いを踏まえ、本項においては、客体を「16歳以上の者」に限定せず、暴行・脅迫を用いること等により同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態でわいせつな行為をした場合には、客体の年齢を問わず、本項が適用されることが明確にされたものである。
(注7)「13歳未満の者に対し、その反抗を著しく困難にさせる程度の脅迫を用いてわいせつの行為をした場合には、刑法176条の前段と後段との区別なく右法条に該当する一罪が成立するものと解すべきである」(最判昭和44年7月25日刑集23巻8号1068頁)。

tkc
【文献番号】25620654
不同意性交等、傷害被告事件
福岡地方裁判所令和5年(わ)第1350号、令和6年(わ)第220号
令和6年7月19日第1刑事部判決
(罪となるべき事実)
第2 被告人は、別紙記載のAが13歳未満の者であることを知りながら、同年11月29日午前8時40分頃、別紙記載の福岡県内の路上において、通行中のA(当時12歳)に対し、その口を手で塞ぐ暴行を加え、性的行為が行われると予想していなかったAを驚愕・恐怖させたことにより、同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせ、Aの胸や陰部を直接手で触り、Aの唇にキスをし、Aの肛門に自己の陰茎を押し当て、さらに、Aの口腔内に自己の陰茎を入れ、口腔性交した。
(法令の適用)
罰条
判示第2の行為 刑法177条3項、1項(176条1項1号、6号)、令和5年法律第66号附則3条前段
刑種の選択
判示第1の罪 懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
令和6年7月19日
福岡地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官 今泉裕登 裁判官 志田健太郎 裁判官 星野徹

裁判年月日  令和 6年 3月21日  裁判所名  新潟地裁佐渡支部  裁判区分  判決
事件番号  令5(わ)16号・令6(わ)3号
事件名  新潟県迷惑行為等防止条例違反、不同意わいせつ、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ被告事件
文献番号  2024WLJPCA03216004
出典Westlaw Japan
第7(令和5年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 E(当時9歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和5年10月20日午前10時47分頃から同日午前10時48分頃までの間、前記公共施設のトイレ内において、Eに対し、Eが重度の知的障害を有していることにより同意しない意思を形成することが困難な状態にあることに乗じ、そのズボン及びショーツを引き下ろし、臀部を直接左手で触るなどし、もってわいせつな行為をした。
法令適用
 判示第7の行為 刑法176条3項、1項2号、令和5年法律第66号附則3条

東京地裁r6.11.23
公訴事実
被告人は、A(当時歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和年月日午前時1分頃から同日午前時3分頃までの間に、駅構内所在のエスカレーター上において、同人に対し、その後方から同人の右側を追い抜きざまに、瞬時のことで時間のゆとりがないことにより同意しない意思を形成することが困難な状態にあることに乗じ、いきなり右手で着衣の上から同人の臀部をつかむわいせつな行為をしたものである。
罪名及び罰条
不同意わいせつ刑法176条1項5号、3項

判決
3 弁護人の主張(2)について
  刑法176条1項は、その客体となり得る者を年齢により限定していないことからすれば、同項各号に該当する事由により、同意しない意思の形成等を困難な状態にあることに乗じて、同条3項所定の者に対してわいせつな行為をした場合には、同条1項及び3項が適用されて1罪になるものと解するのが相当であるところ、判示第1の被害者は、事件当時9歳で、被害に遭った際の心情について「」と思ったなどと相応に嫌悪感があった旨述べていることからすれば、およそ性的な同意・不同意の意思の形成・表明等ができない状態にはなかったと認められる。そうすると、駅構内のエスカレーター上にいる被害者に対し、その後方から、追い抜きざまに臀部をつかむ行為は、瞬時のことで、被害者が同意しない意思を形成することが困難な状態にあることに乗じて行われたものといえ、刑法176条3項のみならず、同条1項5号にも該当する。