10歳と11歳の内縁の妻の娘に性行為」に監護者性交罪を適用した事例(上田支部r06.12.19)

 

こういう法文の並びなので、177条3項のみが適用されると解釈されています。

第一七七条(不同意性交等)
3十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
第一七九条(監護者わいせつ及び監護者性交等)
 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条第一項の例による。
2十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条第一項の例による。

刑法の一部を改正する法律について 法曹時報69巻11号
(5) 他罪との関係
ア強制わいせつ罪,強制性交竿罪群との関係
(5) 他罪との関係
ア 強制わいせつ罪、 強制性交等罪等との関係
監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪は, 強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪,あるいは, 強姦罪 (強制性交等罪)や準強姦罪 (準強制性交等罪) が存在することを前提に、それらの罰則では処罰できないものの,それらの罪と同等の悪質性当性が認められる事案に対応するために新設されたものである。
したがって, 強制わいせつ罪準強制わいせつ罪又は強制性交等罪準強制性交等罪が成立する場合に、 重ねて監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪が成立するものではない。
(注14) 改正前の刑法においては、わいせつな行為又は性行為によって個人の性的自由を侵害する罪として,まず, 第176条 (強制わいせつ) 及び第177条(強姦)の罪が置かれ、その補充規定として、 第178条 (準強制わいせつ及び準強姦) の罪が置かれており、例えば、反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行・脅迫によって女子を抗揮不能心神喪失の状態に陥らせた場合には,一般に、第178条の罪ではなく,第176条又は第177条の罪が成立するものと解されている(最判昭24・79集3 巻8号 1174頁参照)。
また、13歳未満の者の心神喪失又は抗拒不能に乗じた場合も、第176条又は177条の罪が成立するものと解されている。
(注15) これと同様に、13歳未満の者に対するわいせつな行為又は性交等が,外形上は、監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪に該当するように見える場合であっても、13歳未満の者に対するわいせつな行為又は性交等のみを要件として成立する刑法第176条後段の罪又は刑法第177条後段の罪のみが成立し、別に監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪は成立しないものと考えられる。
(16) もとより、ある行為が、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪又は強制性交等罪準強制性交等罪と監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪との両方に該当するように見える場合においても、訴訟法的観点から,検察官が監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪に係る事実により公訴提起し,これを主張立証した結果,同罪により被告人を処罰することは可能であると考えられる。同罪で公訴提起された場合に,被告人が強制わいせつ罪準強制わいせつ罪又は強制性交等罪準強制性交等罪が成立することを証明することによって監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪の成立を免れるという関係にあるものではない。
この点について、法制審議会刑事法 (性犯罪関係)部会第5回会議における議論は以下のとおりである。

法制審議会刑事法 (性犯罪関係)部会第5回会議
平成28年 3月25日(金)
○ 中村功一幹事
  また,罪数の点でございますけれども,こちらも御説明してきておりますとおり,要綱(骨子)第三の罪というのは要綱(骨子)第一の罪や,強制わいせつ罪を補充する趣旨で設けようとするものでございます。したがいまして,仮にある行為が外形的には強制わいせつ罪ないし要綱(骨子)第一の罪と要綱(骨子)第三の罪との双方に該当するように見られる場合には,強制わいせつ罪又は要綱(骨子)第一の罪のみが成立するものと考えております。

○佐伯委員 
  それから最後は,要綱(骨子)第三の規定が補充規定であるということの意味についてですが,先ほど事務当局から刑法第177条,第178条に当たる場合には,それのみが成立するという御説明があったのですけれども,私は第177条ないし第178条に当たり得る場合であったとしても,要綱(骨子)第三の罪で処罰することは可能であると考えます。
○加藤幹事 ただいまの佐伯委員の御指摘の中にもございましたが,要綱(骨子)第三の書き方については,これまで御説明してきたような具体的な内容を表現するものとして,「利用して」という文言を要綱に用いていたものでございます。しかし,ただいま,別の表現を検討するべきではないかという御指摘がございましたので,この点につきましては更に事務当局においても,十分に検討させていただきたいと存じます。
○委員 1点,事務当局の方から補足させていただきます。
  ただいま,佐伯委員の方から,要綱(骨子)第一の罪と要綱(骨子)第三の罪の関係について御指摘がございましたが,第一の罪のみが成立すると申し上げた趣旨は,意味としては佐伯委員のおっしゃるものと同様の意味であると考えておりまして,実体法の関係の罪数の整理としては第一の罪のみが成立するという場合があろうかと思いますが,訴訟法的な観点を加味して,この要綱(骨子)第三の罪だけで処罰できるかといいますと,それは可能であると事務当局としても考えているというところでございます。

今井猛嘉「監護者わいせつ罪及び監護者性交等の罪」法律時報

3 本罪と他罪との関係等
最後に、本罪と他罪との関係を通じて、本罪の特徴を(再)確認しておきたい。
第一に、本罪の被害者は、18歳未満の者であって行為者(たる監護者)の監護に係る者(被監護者)である。被監護者に相当する者が13歳未満であれば、当該者に対する性的行為は、「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」性的行為がなされたか否かを問わず、強制わいせつ罪(176条後段)や強制性交等の罪(177条後段)が成立する。そのため、本罪の被害者となりうるのは、13歳以上18歳未満の被監護者に相当するものだということになる。
強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪、又は強制性交等の罪や準強制性交等の罪が成立する場合には、これらに加えて本罪を成立するわけではない。本罪は、それらの罪の成立が困難な事案に着目し、事案の適正な処理のために、それらの罪と同等の罪質を有するものとして新設された類型だからである。もっとも、個々の事案の証拠関係に応じて、それらの罪又は本罪のいずれで処理するかは、検察官の訴追裁量に委ねられていると解される。

10歳と11歳の内縁の妻の娘に性行為 29歳男に懲役9年の実刑判決 裁判長「被害者2人の肉体的・精神的苦痛は極めて大きく結果も重大」 求刑は懲役12年
2024年12月19日(木) 18時35分

長野地裁上田支部

内縁の妻の娘2人に性行為をしたとして男に懲役9年の実刑判決です。

監護者性交等の罪に問われていた長野県東御市の29歳の男は、同居していた内縁の妻の長女(当時11)と次女(当時10)に対し、監護者としての影響力を利用して、性行為をしたとされています。

初公判で男は、起訴内容を認めていました。

19日の判決公判で、地裁上田支部の古賀秀雄裁判長は、「被害者2人の肉体的・精神的苦痛は極めて大きく結果も重大」などと指摘し、懲役12年の求刑に対し、懲役9年の実刑判決を言い渡しました。

弁護側は、「控訴するかは、被告と話し合って決める」としています。